荀子から考える①~変革の先、未来を築くための学び

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好評連載の東洋哲学コラム。2022年4月からは、新たに2500年前の超現実的哲学者、荀子じゅんしの教えから解を導くコラムをお届けします。荀子は、世界からその動向が注目される中国の習近平総書記が深く傾倒しているとされることから、ビジネスへの活用にも注目が集まっています。

人類の永遠の命題、人はそもそも「善」なのか「悪」なのか――

荀子コラム第1回目は、荀子思考による「人」の捉え方と働きかけ方。そして、世界全体が急速な変革の渦にいるなか、経営者や投資家はその思考をどう課題解決に結びつけていけばいいのかを分析します。
解説をしてくださるのは、東洋哲理をビジネスメソッドとして提唱している 一般社団法人数理暦学協会の代表理事 山脇史瑞氏です。

性悪説に立つ社会的秩序

君子いはく、
学はむべからず。
青はこれを藍より取れども藍よりも青く、
氷は水これ為せども水よりもつめたし。

荀子巻第一 勧学篇かんがくへん第一 (岩波文庫「荀子」金谷治訳より)

しっかり学べば、弟子は師匠より優れたものになる。
みてごらん、
青い色は藍草からとるが、元の藍草より青いではないか。
氷は水から生じているのに、水より冷たく硬いではないか。


思想家であり儒学者である荀子の思想を、後に唐の楊倞ようりょうが改訂を加え「荀子」として20巻32篇にまとめ直した。その第一篇が「勧学篇」


とにかく色々な事を学べ。
ひろく学び、元の姿より優れたものになれ、
師匠より優れた人物になれ。

荀子の名を聞いたことがない人も、
出藍しゅつらんの誉れ」の語源となった
この言葉は聞いたことがあるだろう。

中国の能力主義に見る

人は誰もが、「自分は善人」だと思いたい。
故に、性善説の孟子は人気だが、
性悪説を唱えた荀子は歴史的にも排斥され続けてきた。

しかし、習近平総書記の深い傾倒により、
最近荀子が注目されている。

芝麻信用※1に代表されるような、
ITテクノロジーを活用したメリトクラシー※2的な社会信用システムなどは、
極めて荀子的発想だ。
人民など信じていない。
だから、ITで格付けする。
それにより、社会の秩序を保とうとしているのが、
現在の中国事情だ。

※1 アリババグループ「アント・フィナンシャルサービス」傘下の独立した信用サービス機構。2015年1月に中国人民銀行が個人信用スコアサービスの開業準備を認めた8社のうちの1社である。(総務省「芝麻信用の概要」より)
※2 メリット(merit、「業績、功績」)とクラシー(cracy、ギリシャ語で「支配、統治」を意味するクラトス)を組み合わせた造語。能力で地位は変えられるという考え方を指す。

性善説の孟子vs性悪説の荀子

習主席が心酔する荀子とはどのような人物なのか。

荀子は、性善説を唱えた孟子もうしと同じく、
孔子こうしの弟子で、儒家である。

時代的には、
しんの始皇帝の補佐をした李斯りしが、
荀子の弟子であったことからも、
荀子は、戦国時代の最末期に登壇した思想家になる。

平和社会のための「善悪の哲学」

孟子と荀子は、
真逆の存在のように思われているが、
孔子の教えで、
乱世を収束させることを
目的としていたことに変わりはない。
違いは、アプローチが正反対だったことである。

孟子式:人の善に期待!

孟子は、人間は元々善人だという考えに立つ。
故に、トップに立つ人間が人格をあげれば、
その結果、周囲の人にも好影響を及ぼし善人になる。
その正しい個人の集合体として、
社会平和を実現しようとする考え方だ。

荀子式:縛りを強め、人の悪を正す

一方荀子は、人間は生まれつき
楽な方に行きたがる性質があり、
放っておくと怠けてしまう。
それこそが、
「生まれ持った人間の本質だ」と言う。

社員は、給料が貰えるなら、楽な方を好む。
そのため、放っておくと怠けてしまう。
これは人間なら当たり前のさがである。
このまま放置しておけば、事業は滞り、
事業理念も達成できず、社員個人も成長せず、
会社は傾いてしまう。
そのため、
会社に厳格な就業規定ルールを作り、
それに社員を準じさせる。
準じなければ左遷する。

このようにして、
社会平和を実現させようとするアプローチが
荀子方式だ。

荀子式学問のすすめ

つまり、両者とも、
目的は平和社会の創出だが、
それに至るアプローチが真逆なのだ。

このようにみると、
結構我々のやっていることは、
荀子方式であることの方が多い。
荀子の名前こそ知られていないが、
結構私たちの考えは、
荀子式であることが多いのだ。

平和社会をどう築けばよいのか。
その最初のアプローチが「勧学」
いわゆる「学問のすすめ」だ。

人間は生まれ持って愚かな生き物だが、
学問によって矯正できる、
だから学問をやらなければならない。

青は藍から取るが、藍よりも青いのである。

学ぶことで、
生まれ持った姿より優れたものになる。
乱世を乗り越えるには、勧学
とにかく博く学び続けることしかないようだ。

出典:Wikipedia

荀子は、中国戦国時代末の思想家・儒学者。紀元前4世紀末ごろに趙に生まれ、50歳で初めて斉に遊学したといわれています。尊称して荀卿とも呼ばれ、漢代には孫卿とも呼ばれました。礼を重んじ正しい礼を身に着けることを徹底した思想家で知られています。

一般社団法人 数理暦学協会では、
週2回のZOOMオンライン東洋思想勉強会(無料)を開催しています。
詳しくは
コチラをご覧ください。

出典:荀子思考が創り出す、未来社会① 学問のすすめ
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

山脇史端
一般社団法人数理暦学協会 代表理事
算命学カウンセラー協会主催

投稿者プロフィール
13代算命学宗家・故高尾義政氏・清水南穂氏直門下生として、清水氏に20年師事。当協会の学理部門を総括する。
一般社団法人数理暦学協会代表。
担当講座は、干支暦学入門講座・干支暦学1級講座・講師養成講座・数理暦学講座など。
IT事業、企業研修、オンラインシステムの運営を担当

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