顧問先に喜ばれる!経営者保証を外してもらうための金融機関交渉術

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こんにちは。株式会社ネクストフェイズのヒガシカワです。
私は、勤務していた金融機関が破綻した結果、苦境に陥っている中小企業の経営者をたくさん見てきました。
そのほとんどは、「金融機関との上手なつきあい方」を知らなかったためでした。
そんな不幸な中小企業を1社でも減らすため、「金融機関との上手なつきあい方を、できる限り多くの中小企業に伝える」ということを自らのミッションとして、「融資に強い士業・コンサルタント・FP」を育成という仕事や、融資に関する情報発信を積極的に行っています。

その一環として、今回は、士業・コンサルタントの方々向けに、「経営者保証を外してもらうための金融機関交渉術」というテーマで、いろいろとおつたえさせていただきます。

経営者保証なしで借入が可能

今回のコロナ融資において、経営者保証なしで借りることができている中小企業が増えています。

日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」にしても、また民間金融機関の「実質無利子・無担保融資」においても、一定の要件に該当すれば経営者保証を外せる仕組みがあります。

公庫の場合、「経営者保証免除特例制度」の要件に該当すれば、先方から「保証人を外しておきましょうか?」と聞いてくれることが多いようです。

一方、民間金融機関の場合は、債務者側から申請しないと、経営者保証を外す提案はほとんどしてくれません。

経営者保証を外す交渉術とは?

経営者保証を外したいときに満たしておくべき要件、交渉術をお話ししましょう。

経営者保証ガイドラインの内容を把握しておく

経営者保証を外したいとき真っ先にしておかなければならないことは、「経営者保証に関するガイドラインの内容をしっかりと把握しておくこと」です。

経営者保証に関するガイドラインサイト

経営者保証に関するガイドラインとは、中小企業庁と金融庁の後押しで、日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会が事務局となり、経営者保証を提供せず融資を受ける際や保証債務の整理の際の「中小企業・経営者・金融機関共通の自主的なルール」として策定・公表されたガイドラインです。

このガイドラインには法的な強制力はなく、金融庁は各金融機関の自主的な対応を促す方策を探っていました。
が、最近はこのガイドラインに従って、経営者保証を外す金融機関がだんだん増えてきました。

なぜなら、経営者保証に関するガイドラインの対象となる企業は優良企業であることが多く、そういった優良企業を囲い込むために、経営者保証を外すケースが増えてきたからです。

経営者保証に関するガイドラインの対象者

経営者保証に関するガイドラインの対象者は、以下の通りです。

1) 主債務者が中小企業であること。
2) 保証人が個人であり、主債務者である中小企業の経営者等であること。
3) 主債務者である中小企業と保証人であるその経営者等が、弁済に誠実で、債権者の請求に応じて負債の状況を含む財産状況等を適切に開示していること。
4) 主債務者と保証人が反社会勢力でなく、そのおそれもないこと。

経営者保証を外す交渉が可能になる経営状況

経営者保証に関するガイドラインには、「経営者保証を外すべき中小企業に求められる経営状況」が記載されています。

(1) 法人と個人の分離
融資を受けたい企業は、役員報酬・賞与・配当、オーナーへの貸付など、法人と経営者の間の資金のやりとりを、「社会通念上適切な範囲」を超えないようにする体制を整備し、適切な運用を図る。

(2) 財務基盤の強化
融資を受けたい企業は、財務状況や業績の改善を通じた返済能力の向上に取り組み、信用力を強化する。

(3) 積極的な情報開示
融資を受けたい企業は、自社の財務状況を正確に把握し、金融機関などからの情報開示要請に応じて、資産負債の状況や事業計画、業績見通し及びその進捗状況などの情報を正確かつ丁寧に説明することで、経営の透明性を確保する。

情報開示は、公認会計士・税理士など外部専門家による検証結果と合わせた開示が望ましい。

 

「経営者保証に関するガイドラインの活用に係る参考事例集」を上手く使う

金融庁では、経営者保証に関するガイドラインの活用に関して、金融機関等により広く実践されることが望ましい取組みを事例集として取りまとめ、公表しています。
まず、この活用事例集に目を通してください。

経営者保証に関するガイドラインの活用に係る参考事例集

事業者なら自社、また士業・コンサルタントなら自分のクライアント先に似たような事例があれば、その事例を持って取引金融機関に赴き、以下のように尋ねましょう。

「経営者保証に関するガイドラインの活用に係る参考事例集」には弊社と同様の内容の企業事例が載っているのですが弊社も経営者保証を外してもらうことはできませんか?」

そのうえで、やはり経営者保証を外してもらえない場合、理由を尋ねてみましょう。

「弊社が外してもらえない理由を教えてくださいますか。外してもらうために、何が必要でしょうか」

金融機関の見解を尋ねることで、その後、経営者保証を外すための交渉がしやすくなります。

 

経営者保証の解除に積極的な金融機関と消極的な金融機関

これからの時代、金融機関によって融資方針や取組方針に大きな差が出てきます。

(上記の「融資方針や取組方針」とは、事業性評価融資・保証協会の保証付き融資・担保徴求の有無・保証人徴求の有無・創業融資に対する取組・本業支援に関する取組・リスケ先に対する取組等のことです)

経営者保証を外したいときは、上述した経営者保証ガイドラインの把握に加え、「経営者保証解除に対して、積極的に取り組もうとしている金融機関とつきあうこと」が重要になってきます。

<積極的な金融機関の特徴>
・経営者保証に関するガイドラインについての説明を積極的に行おうとしている
・担当者・貸付担当役席・支店長が「経営者保証に関するガイドライン」を熟知している
・コミュニケーションを十分にとり、良好なリレーションシップを構築しようとしている
・事業性評価融資に積極的に取り組んでいる
・自行庫の利益だけではなく、取引先企業の利益も真剣に考えてくれている

<消極的な金融機関の特徴>
・積極的なのは保証協会の保証付き融資
・担当者も支店長も訪問してこない
・担当者が、取引先企業の事業内容を把握していない
・カード入会などお願いばかりしてくる
・事業性評価融資に積極的に取り組んでいない

 

経営者保証を外してもらうための7項目

経営者保証を外したい事業者は、下記の7項目を押さえておくことが必要です。

あなたがサポートしている経営者にこの7項目を伝え、「経営者保証を外すためのお手伝いをしますよ」と話してみませんか。
経営者保証を外したい経営者はとても多いので、興味を持ってあなたの話を聞いてくれるでしょう。

1)会社のお金と、個人のお金を一緒くたにしない
2)決算書を大幅に黒字化する
3)自己資本比率を高める
4)事業計画書を作成する
5)定期的に金融機関に業績報告を行う
6)積極的にサポートしてくれる専門家を味方につける
7)経営者保証の解除に積極的な金融機関と取引を始めておく

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「経営者保証を外すためのお手伝いをします」と言われて、興味を覚えない経営者はほとんどいません。

これまで経営者保証を外すのは至難の業だと思われていましたが、金融検査マニュアルが廃止となった今、経営者保証を外せるチャンスはどんどん増えています。

経営者保証を外すために超えなければいけないハードルはいくつかありますが、そのための知識さえ持っていれば、思ったより容易に経営者保証を外すことが可能です。

そのために、是非、「金融機関との上手なつきあい方」の知識を身につけられることをお勧めします。

出典:顧問先に喜ばれる! 経営者保証を外してもらうための金融機関交渉術
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

東川 仁さんの過去記事はこちら

東川 仁
株式会社ネクストフェイズ代表取締役
一般社団法人融資コンサルタント協会代表理事

投稿者プロフィール
2002年、渉外・融資担当として13年勤めた地域系金融機関を退職後、資金調達コンサルタント・経営コンサルタントとして独立。
以来、30年以上、延べ3000人以上の経営者に対して資金調達コンサルティングを行ってきた。

独立後、職員に対するセミナー・研修・講演を行った金融機関は全国50以上。
「近代セールス」で、2010年より銀行職員向けの記事を連載中。
2016年に一般社団法人融資コンサルタント協会を設立。
融資に役立つ研修、業界の最新情報、顧客獲得に有用なツールを提供するなど、融資に強い専門家の育成に励んでいる。
中小企業への直接サポートや士業・コンサルタントを通した融資指導は年間500件以上。
うち「創業」関連は年間350件以上のアドバイスを行っている。

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