AIとビッグデータの力で人が全機現できる世の中を作る!(前編)
- 2021/2/1
- インタビュー

「テクノロジーを通じて人と企業が全機現できる社会の創出に貢献する」というビジョンのもと、株式会社ZENKIGENを2017年10月に創業した、野澤比日樹 代表取締役CEO。従来のアナログな採用活動をオンライン化し、AI (人工知能)とHR(ヒューマンリソース)を融合した採用DXサービス「harutaka(ハルタカ)」を提供。日本ではまだ耳に新しい「アフェクティブ・コンピューティング」技術を用い、HR分野にイノベーションを起こすプロダクトを進化し続ける野澤社長に、これからの人材採用とビジョンについて伺いました。

株式会社ZENKIGEN 代表取締役 CEO 野澤 比日樹さん(Z-EN編集部撮影)
目次
起業するまでの道のり
空手とビジネス実務の共通項
-野澤社長は空手をやっていらっしゃるんですね!Z-ENとの結びつきを感じます。
そこからですか(笑)はい。極真空手で黒帯となり、現在は征武道という流派にて黒帯です。空手を息子が始める時に、将来息子に馬鹿にされないようにと一緒に始めたんですが、黒帯まで平均10年程度かかると言われているところたまたま3年半で黒帯になる事が出来ました。やりきった感がありますね。経営者になって、空手をやっていて良かったと思うことが結構多いんです。ビジネスにおいて相手と殴り合いなんてあり得ないですが、しょせん動物と動物。社長の立場でいろいろな方とお会いしますが、動物としてビビらないですね。
ソフトバンクの孫さんを除いてですけど(笑)
サラリーマンとしての学び
-野澤社長はソフトバンクアカデミアご出身でしたね。孫さんにはなぜ緊張するのですか?
アカデミアの中では、孫さんがその時一番重視し考えていることがテーマとして課されます。例えば、英国の半導体設計大手ARMを買収したときには、それに関連する戦略がテーマとなるのですが、それをアカデミアのメンバー300人とソフトバンクの役員がずらっと並び、孫さんが目の前にポツンと座っている中、一人壇上に立って5分間プレゼンするんです。
孫さんは、あらゆる領域でトップレベル。世界中のネットワークを駆使し情報を吸い上げており、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを作るときにも、あっという間に立ち上げてしまいました。誰よりも思慮深いうえ、実際に世界中の人に会いに行ってしまうフットワークの軽い方です。能力と知識量あらゆる面で自分と乖離している孫さんの前で5分間話すのはやっぱり緊張しますね。
僕はサイバーエージェントを経て、ソフトバンクに7年ほどいましたけど、そのうち孫さんの社長室で1年弱働けたことは、僕のサラリーマン人生のハイライトです。あのときに学んだことが今の経営にずっと活きています。
ビジネスの基礎を知る
-孫さんから教えが今のビジネスの素地になっているのですね。何が一番大きな影響ですか?
ビジョンの大切さですね。孫さんの経営理念は「情報革命で人々を幸せにする」。それを、ポーズでもなんでもなく本気で実現して300年続く会社を作ろうと思っているんです。そのビジョンや志の強烈さに人が集まってくるのを見ていました。
もう一つは、テクノロジーです。テクノロジーの進化がどれほどのものか、そしてテクノロジーを使うことによってビジネスの先端を走っていくことを教わりました。僕は、サイバーエージェント時代には新規事業開発にずっと携わってきたので技術的に詳しいと思われていたんですが、実は全くテクノロジーに興味がなくて、事業は作れるけれど、技術には疎かったんです。それが、ソフトバンクでは孫さんから最新の情報とテーマを与えられてめちゃくちゃ勉強しました。お陰で、専門家とAIについて話しても筋違いじゃない会話ができるようになった。経営者は技術に対しても造詣が深くなければいけないと思い知らされましたね。
2017年 ㈱ZENKIGENの始まり
起業は社会をよくするための挑戦
-㈱ZENKIGENを立ち上げたきっかけを教えてください
ソフトバンク時代は起業は考えていなかったんです。遡れば、大学生の時に、起業してIPOして10億円作ってから国政に出て政治家として国を変えるというイメージを思い描いていたんですが、政治で世の中は変えられないなと思うようになって。起業ではなく、サイバーエージェントやソフトバンクのような変革を繰り返す組織にいて、その影響力を使って社会を変えていく方が自分に合っていると考えが変わりました。
ソフトバンク退職後、一瞬転職も考えたんですが、転職先として、ユニクロの柳井さんや日本電産の永守さんのお顔が浮かんできて…サラリーマン時代の今までと同じじゃないか、もう転職はない!と起業を決意しました。当時は42歳。エネルギーも有り余っている感覚だったので、自分の創造性を試し大好きな仲間たちと事業を通じて社会を良くすることに挑戦できる、真にこれが最後の勝負だ!と思いましたね。
全機現できる社会を目指して
-ZENKIGENという会社名は、禅の言葉「全機現」から来ているのですね。
「全機現」とは、人が本来持っている「全ての機能を現す」という禅の言葉です。
要はフルパワーということです。この言葉を最初に教えてくれたのは、バドワイザー・ジャパン初代社長・会長を務められた、近藤隆雄さん。近藤さんは僕の人生の師匠です。会うたびに「お前全機現してんのか?」と言われて(笑)。疲れ切ったサラリーマンを見て、若者たちがサラリーマンはやりたくない!と思うような社会にしてはいけない。みんなが「全機現」できる社会を目指して、そのまま社名にしてしまおう!と思ったわけです。
また、「禅」の思想は日本からアメリカに渡って、マインドフルネスとして逆にアメリカから日本に戻ってきました。世界のど真ん中で禅の言葉を社名にしてグローバルなステージに立ったらクールなんじゃないかと思いました。
採用DXサービスharutaka(ハルタカ)
採用現場の課題
-採用DXサービスharutaka(ハルタカ)を作られたきっかけを教えてください。
創業メンバーの水野との会話がきっかけです。アメリカでは国土が広く移動が大変なためWeb面接サービスは昔からありました。でも、日本でのプレイヤーは当時外資から入ってきた1社しかなかった。これからスタンダードになるだろうと思いました。
サイバーエージェント時代、何千人もの応募者に対して採用面接をしていました。大体、会って2・3分でカルチャーフィットするかどうかは分かるので、遠方から出向いてくれる求職者には、時間も交通費も無駄になり申し訳ないと思っていました。その後、2011年にサイバーエージェントを辞めソフトバンク時代の約7年を経たのち、採用現場の現状を再度知ることになりますが、8年経ってもなお面接のやり方は何も変わっていなかったんです!
なぜWeb面接が普及しないかというと、日本の企業の人事部には、ITリテラシーが低くて保守的な傾向があるからだと思いました。一方で、働き方改革で人事部が一番忙しい。求人倍率が上がって労働人口が減ってきている背景の中で、上手く人を採用できていないのが現状です。
人事採用オンライン化の肝はビッグデータにあり!
そんな中、僕が起業した2017年当時には、wi-fiや4Gが普及し、みんなスマホを持っていました。若い子が自撮りをしてSNSにあげるというライフスタイルも定着しつつあった。そして、新規ビジネスをサイバーエージェントで作ってきた経験の中で、一番大事なのはタイミングだと分かっていました。時代の変化すべてを含めて、人事採用のオンライン化はこれから数年で必ずティッピングポイントを迎えると確信しました。
そして忘れてはならない、孫さんに学んだ、とにかくビッグデータを持つことという教えがありました。Web面接の動画がまさにこのビックデータです。1分の動画がWebページで3,600ページ分と言われています。そして、これは日本になかったデータ。後発ながら、採用に関するビックデータが日本で最も集まる会社になれる。そして、データが集まりさえすれば、あとはエンジニアを集結させればAIのビジネスができると思いました。
ここまでを20秒で考えて起業を決めました!
※この続きは「アフェクティブ・コンピューティングで誰もが活躍できる場の創出を!」でお届けします。