企業理念の継承こそが未来を繋ぐ架け橋となる(前編)

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グループ総売上350億円、従業員600名の株式会社カクイチは、明治より135年続く老舗企業。5代目となる代表取締役社長の田中離有氏は、農業用資材製造・卸からスタートした会社を継承して太陽光発電やホテル経営といった新分野への多角的な事業展開を行い、高い業績と評価をあげていらっしゃいます。創業時からの企業理念「日本を農業で元気にする」を貫く信条が、経営のさまざまな局面で生き、イノベーションの根幹となっていることについて熱く語ってくださいます。インタビュアーは、経営コンサルタントで税理士でもあり、Z-ENにもご寄稿いただいている一般社団法人数理暦学協会理事長の鈴木道也氏です。

「日本を農業で元気にする」を理念に

鈴木道也氏(以下、鈴木氏)――老舗企業である株式会社カクイチ(以下、カクイチ)の創業とこれまでの経緯について教えていただけますか。

田中離有氏(以下、田中氏)――弊社、カクイチは、明治19年に長野県にて創業した銅鉄金物商「田中商店」がルーツになります。
終戦後、3代目の社長である父、田中健一が、小売業を鉄の問屋業に、更に1963年にガレージや農業用物置事業を興し、製造業へと会社を転身させました。
また、農業支援の一環として、農業・土木用の樹脂ホース製造も開始。
40年前に樹脂ホース事業を米国に進出させたことで、現在、日米生産量ナンバー1の樹脂ホースメーカーとして成長しています。

カクイチ公式サイトより

東日本大震災を機に発電事業をスタート

鈴木氏――長い歴史を持つ企業の転機となったのはどのようなきっかけでしょうか。

田中氏――創業から現在まで、弊社には「日本を農業で元気にする」という一貫した理念があります。
その理念が試されたのが、東日本大震災です。
未曽有の大災害時に弊社が提供できるものは何か、どうすれば日本に役立つことが出来るかという視点で、原点に立ち戻り考えた結果、災害時だからこそ気づけたのは、安心できる空間と再生可能で環境に優しいエネルギーの大切さだという結論に至りました。

そこで創案したのが、弊社が製造していたガレージの屋根に太陽光パネルをつけることです。
非常用電源の確保と同時に、発電した電気を弊社がまとめて電力会社に販売することで、ガレージのオーナーは弊社の無料メインテナンスサービスを受けながら電気発電の賃料が得られます。
これは弊社にしか出来ないことだという使命感を抱き、発電事業をスタートしました。

大災害時に求められるもの

カクイチ公式サイトより

鈴木氏――震災をきっかけに新たな事業を起したのですね。

田中氏――更に、私たちは考えました。
これからの日本に必要なものは何か、
私たちにしか出来ないことは何か。

弊社が提供したカクイチの倉庫は一軒も倒壊例がなかったことから、災害時の安心安全な空間の提供と同時に、屋根にソーラーをつけることで非常時でも稼働する電気の供給を可能にします。
また、もう一つ大切なことは、安全な水と食の提供です。

滋賀県岩間山の花崗岩を採掘していた鉱山から、超軟水の地下深層水が湧き出すことを知り、全国に通信販売する事業を始めました。
たった1か所の源泉から、毎分80リットルしか採取できない貴重な水なので、経済的事業メリットはありません。
しかし、利益よりも日本の大切な水源を守り次世代に継承せねばという想いで始めました。

▶震災を機に発電事業を始められた田中さん。太陽と水という自然エネルギーを地域創生に繋げるビジョンについて次のページで語っていただきます!

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田中離有
株式会社カクイチ 代表取締役社長

投稿者プロフィール
1962年、長野県生まれ。慶応義塾大学商学部卒。1990年、米国ジョージタウン大学でMBA取得。
株式会社カクイチに入社。2001年、同社代表取締役副社長、2014年、同社5代目として代表取締役社長に就任。カクイチ建材工業(株)・(株)カクイチ製作所・(株)岩深水・(株)シリカライム・アンシェントホテル浅間軽井沢・(株)アクアソリューション・稲栄総業(株)・SGDsファイナンス㈱の代表取締役も務める。
カクイチは、1886年(明治19年)創業の老舗企業。ハウスガレージ・樹脂ホース・鉄鋼資材卸業・太陽光発電事業・ミネラルウォーター事業・ホテル事業・内装材事業・農業改善事業の8事業で、11のグループ会社を運営する。

鈴木道也
鈴木道也会計事務所 一般社団法人数理暦学協会 協会理事長

投稿者プロフィール
経営コンサルタント、税理士(国内、国際税務)。
1956年生まれ早稲田大学卒、米アリゾナ州立大学サンダーバード経営大学院にてMBA取得。
世界最大化粧品会社AVONニューヨークのPACIFIC MARK責任者を務め帰国後、多数の顧問会社の税務顧問、経営指導行う。
現在はマレーシア、シンガポールを中心に自らの直接投資経験で得た実践的知識を基に、海外投資コンサルタントとしても活躍。
18年前より注目した華僑の人物解析学の最高峰「算命学」、孫氏の兵法にもある人心掌握術など、アジア富裕層ビジネスメソッド「干支暦学」を活用したコンサルティング人材養成にも力を入れる。

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