農業体験×食育×農家支援でESG経営に取り組む(後編)
- 2021/4/14
- インタビュー
目次
果物づくりをもっと身近に。だれでも参加できる農業を
――安藤さんの農業に懸ける真摯な姿勢が伝わってくるのですが、やはりオーストラリアでの体験や、浜松のみかん農園での体験が原点にあるのでしょうか?
安藤氏――やはり、「農業のすばらしさを伝えたい」というのが自分の原動力になっています。
例えば、みかんは1本の枝に10個くらいできていた場合、5個くらいは捨てちゃうんです。
「もったいないなぁ」とも思うのですが、間引きすることで木の負担軽減や残りのみかんが良いものになるわけです。
「1個のみかんのために、これだけのことをしている」というのが、最初は衝撃でした。
また、農家の方々も農薬をかけたくてかけている訳ではないため、減農薬を意識しながら栽培をおこなっています。
「農薬=悪」と誤解されてしまう面もあるのですが、必要な農薬もあるという正しい知識を子どもたちに伝え、お母さんお父さんにも一緒に学んでいただきたい。
そういった食育にも力を入れて、次世代に伝えていきたいですね。
農業体験は一番の食育になると思いますし、農園にオーナーご家族みなさんで来ていただくと、農家の方たちもすごく喜んでくださいます。
まさにWin-Winな関係ができると思います。
――今後は、どのようなことに貢献していきたいですか?
安藤氏――ファミリーツリーのマイクロオーナーサービスをBtoB、BtoCともに拡大して、農家さんへの支援やオーナー様の満足度をさらに高めたいと思っています。
「食」や「つながり」は、人間が生きていくうえでとても大切なことです。
果樹を育てることで食への理解を深めることができますし、家族同士や農家さんとの交流を通じて、人と人とのつながり、人と自然とのつながりへの理解も深めることができると思います。
そうすることで、家族の絆や地域の絆も深まると思います。
私も子どもができたら、農業体験は絶対させたいですね。
また、オーナー様同士で果物の物々交換ができるコミュニティもつくっていきたいです。
たくさんの種類の果物を食べられることや季節の旬な果物を食べられることも魅力なのですが、そこで生まれるオンライン・リアルの交流も楽しいと思います。
農業体験を通して、地域の人々のつながりを生み出すことが夢
――オーナー同士で農園や果樹を紹介し合ったりすると、「じゃあ、こっちのオーナーにもなってみようかな」と思うかもしれませんね。美味しい味を知れば、もっと食べてみたくなるでしょうし、人に贈りたくもなりますよね。自分がオーナーの木がそこにあると思うと、ときどき訪れたくもなりますし、さまざまな経済効果がありそうです。ESG経営・ESG投資という言葉もありますが、自然や社会は重要なキーワードですよね。
安藤氏――ワーケーションとして企業に活用していただくと、農業を通じて働き方改革にも貢献ができると思います。
農業セラピーというか、IT開発などで心身ともに疲れている方には農業はとても良い癒しになると思います。
シルバー世代の方には「週末農業」的にデュアルライフを楽しんでいただくのも良いですし、子育て世代の方には、体験型農業というアクティビティとしてご家族で楽しんでいただくのも良いでしょう。
これはまだ目標というよりも「夢」に近いのですが、全国の保育園や幼稚園、小学校に1本ずつ苗木を贈っていきたいと考えています。
地域によって気候が違うので、気候に合わせてベストな苗木をプレゼントして、全国の子どもたちの食育に貢献したいですね。
その子どもたちが親になったときに、ご家族で果樹園に来て農業体験をしていただきたいです。
そうすれば、国産の果物がなくなることなく、脈々と受け継がれていくと思います。
企業向けには、マイクロオーナーになっていただくと、代表の方の故郷の保育園や幼稚園、小学校に苗木が贈られて、その苗木で食育ができる。
その子どもたちと企業が果樹園で交流できたり、社会科見学ができたりすると、地域の絆も深まると思います。
そんな良いサイクルを、農業体験や食育、農家支援を通じて生み出していきたいですね。
本稿「農業体験×食育×農家支援でESG経営に取り組む」の前編はこちらから