企業理念の継承こそが未来を繋ぐ架け橋となる(前編)
- 2021/9/8
- インタビュー
目次
地域創生エコシステムで循環型エネルギー社会を創出
鈴木氏――素晴らしい理念の実現を着々と進められていますが、農業との深い関わりについて、もう少し詳しくお聞かせください。
田中氏――日本中の弊社のガレージが、小さな発電所としてクリーンエネルギーを生みだし、その場所が災害時の安心ステーションとして機能する。
この私たちのビジョンに賛同してくださった農家さんが、現在では約15,000世帯あり、彼らと共に現在122メガワットものクリーンエネルギーを生みだしています。
そこで生み出された利益は、農家さんに還元しなければなりません。
そこで、農家さんにより安全な農業を提案出来ないかと考えて立ち上げたのが、ナノバブル(超微細な泡)の発生水を農業に活用する、アクアソリューション事業です。
ナノバブル水とは、水道水を超微細な泡にしたもので、それを農業に用いることで農薬の量を軽減し、生産量を落とさず品質を向上させることが可能な水です。
但し、水であることの難しさもあり、土壌や環境・気候により用い方は様々で、そのノウハウを集積しAI化することで、最適な灌水タイミングが割り出され、秀品率も向上します。
そのノウハウを蓄積し、誰もが出来るように情報を共有することで、脱ケミカルの活用法が確立できれば、日本の食の安全が実現され、日本の農業をより元気で安全なものに出来ます。
太陽光にナノバブルテクノロジーという太陽と水の力を循環させたビジネスモデルこそ、100%循環型エネルギー社会の創出ではないかという想いで、プロジェクトを推進させています。
継承した理念を基軸に変革が生まれる
鈴木氏――理念を実現するためには何が大切だと感じていらっしゃいますか。
田中氏――創業からの理念「日本を農業で元気にする」を掲げ、それがどうすれば達成できるか、困難なことが起きても必ずその理念に立ち戻ったことで新しい事業が自然発生的に生み出され、事業環境がその都度更新されビジネスエコシステムが形成されてきました。
エコシステムは、私たちが持っているような中核になる理念がないと循環しないと思っています。
アメリカのビジネススクールでは、どうすれば儲かるかという教育を受けました。
そのため、儲かる時は大躍進しますが、儲からなくなると企業の存在意義がなくなるので、欧米の企業寿命は短いように感じます。
私は、事業を継承したとは思っていません。
私が継承したものは、「日本を農業で元気にする」という創業者の想いであり、事業理念です。
そのため、私が目指すビジネスモデルは、どうすればその理念が達成できるのか、どうすれば相手のためになるのかという視点で常に考え、その理念に誘導されることで新規事業が自然に生み出されるものだと感じています。
災害にも強いスペース自体が再生エネルギーをつくりだし、そこで生み出された資金を用いて水を用いた脱ケミカルの農業を興すことに循環させ、安心安全な自立型の地域社会を創りだす。
不透明な時代において、明確な未来への提案の一つではないかと思うのです。
ホテル経営に挑戦
鈴木氏――新規事業の要ともいえるホテル経営にも参画されていますね。
田中氏――2009年に、今までに経験のないホテル経営を行うことになりました。
それが現在の「アンシェントホテル浅間軽井沢」です。
本社が長野で創業の地であることから、軽井沢とも縁が深く、軽井沢の国立公園内にあるホテル支援の話が持ち上がったのです。
ホテル経営の経験がない私たちにとって未知の領域であり、多くの困難を経験した事業でしたが、それが新たな空気を会社全体にもたらしたように感じています。
この続きは後編でお届けします。お楽しみに
出典:創業135年の老舗企業が変化し続けられる理由
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。