創業130年!老舗のビジネスモデル転換が示唆する経営の在り方

コロナ禍で疲弊する中小企業が多い中、付加価値を付けたサービスとビジネスモデルの転換で好調な業績を維持する株式会社カクテン屋。小さいながらも事業を磨き上げてきたことが奏功したと代表取締役の橋本哲生さんは語ります。これからは他社との連携を図り、ノウハウを共有していきたいという橋本さんが構想する、CRM(顧客管理システム)により効率化・能率化した“資本集約型の御用聞き”のビジネスモデルとはどのようなものでしょうか。

老舗を継ぐということ

Z-EN――御社は創業から今年で130年目の節目となるのですね! 橋本社長は何代目になるのですか?

橋本哲生氏(以下、橋本氏)――4代目になります。ただ、ユニフォームを取り扱うようになってからは3代目ですね。

――カクテンという屋号は面白いですね。ご創業当時は何を取り扱うお店だったのですか?

橋本氏――元々は、旅装束のオーダーメイド制作事業がスタートです。創業者が、大阪の曽根崎新地のマルテン屋というところで修行して、神戸に場所変えして、マルテンならぬカクテンの屋号で神戸の花街で商売を始めたそうです。

――家業の継承は初めから決められていたことだったのですか?

橋本氏――事業と生活が一体のような環境で育ったので、なんとなく継ぐのかなとは感じていました。すぐ目の前に白衣や商品があり、そこで食事をして、自分が食べ終わるころには店の従業員の方が働き始めているというような環境だったので、ビジネスや会社というより家業として継ぐものだろうという感覚です。

家業を継いだのは、大学を卒業し、数年勤めた後です。卒業後、大阪中心に展開していた和光証券(現みずほ証券)に入社しました。証券会社時代は、世の中はバブル真っ盛りで株価が2倍3倍になるのをそんなものかなと見ていましたね。

――ご家業にバブルの影響はなかったですか?

橋本氏――同業者のなかには、1セット10万円から20万円ほどするデザイナーズブランドのユニフォームを販売している先もあり、業界的には影響はあったと思います。弊社の顧客は飲食店が中心で、時流の変化の厳しさを肌で感じる部分はありましたが、どちらかと言えば弊社は時流に対応できす出遅れているのかなという感がありました。

時代に即したビジネスモデルの転換

――現在のお客様はどういった業種業態の方ですか?事業の内容も教えてください。

橋本氏――現在は飲食業、ホテル業が多いです。また、コロナ禍で食品工場やスーパーさんの総菜加工部門を中心に需要があるように思います。

弊社の部門は大きく2つありまして、一つはユニフォームの販売部門、そしてもう一つがユニフォームレンタル部門でクリーニングやメンテナンスのサービスをつけたものです。

販売はお客様の要望をお聞きしながらお客様の欲しい商品を提案し利益を上げる体制でしたが、コロナ禍で飲食業・ホテル業が休業を迫られた状況で苦戦しています。付加価値を付けたユニフォームレンタル部門は契約期間を3年に設定したことで売上が安定しています。

――ユニフォームレンタル・クリーニング事業はいつからですか?

橋本氏――元々販売を行っていた弊社から見て、レンタルは売上を取られてしまうサービスという位置づけだったのですが、徐々に自分たちも取り組まないとダメだろうという考えに変わってきました。

2007年にクリーニングの自社工場も作り、今まで「レンタルは損です!」と否定していたところから180度転換し(笑)、今までの取引先に新サービスとして少しずつ広げていきました。

押し付けで販売するのではなく、お客様の困りごとを解決するのだという意識に変わったのも大きかったですね。

営業は売ることではなく良いサービスを伝えること

橋本氏――それまでは営業社員には売り上げ目標の達成状況で評価を行っていました。高度成長期やバブル期はそれでよかったのだと思いますが、日本の国内において需要と供給のバランスが崩れた2000年あたりからどうもそれではうまく行かないなあと、所謂『失われた10年』というのを身に染みて感じていました。

――何か変革をされたのですか?

橋本氏――はい。営業の定義を『お客様に対して自社の良い商品やサービスを伝える行為である』としました。営業の定義を変えたことで、弊社の営業スタッフが徐々にお客様の困りごとを真摯に聞き、タイムリーな提案を行うことができるようになり、結果として売上につながるという好循環が徐々に生まれていきました。それが弊社の強みを醸成していったのだと思います。ユニフォームレンタルサービスを、提供できる商品のラインナップに加えたことももちろん大きかったと思います。今までできなかったお客様の困りごとを解決できる提案ができるのですから。

変革への鍵は経営者の想いと行動

――リモートワークへの変革

橋本氏――リモートワークは以前から考えていたことでしたが、コロナ禍が後押しをすることになり、結果的に目標としていたリモートワーク体制が一気に整いました。定義した営業行為の効率を上げることができ、弊社社員はお客様とのやりとりに集中できるようになりましたね。

――すごいですね!どのようにして効率化を推し進めたのですか?

橋本氏――従来型のビジネスから変革したいという強い想いがありました。システム導入などやり方はいろいろありますが、やはり経営者の想いと行動が大切だと思っています。

この業界は御用聞き的な要素が強く、お客様とのやり取り内容が担当者個人にしか分からないということがありがちです。我々はそこからも脱却して、社内全体でお客様の過去注文履歴や購買ニーズを把握するようにしました。そのため、お客様の欲しいものを、問い合わせを受けた社員がすぐに用意しスピーディーに納品できるというシステムに変えることができました。 

多角化より多様化で次の100年へ

――他社でユニフォーム販売とレンタル事業を行っているところはありますか?

橋本氏――少ないと思います。レンタル専業ですと、皆さんが良くご存じのダスキンさんやサニクリーンさん等ありますが、ユニフォーム販売専業からの出身企業でユニフォームレンタルを行っている会社はあまりないと思います。

お客様から見てユニフォームレンタルは、費用面の圧縮という見方をすると、目に見える形ではなかなか難しいのだと思いますが、貴重なリソースをどこに集中して使うか?という考えのもとで、面倒なことを請負う会社として理解してもらっています。

――事業の拡大という目線では、コロナ禍のなか多角化に注目が集まっていますが、どう思われますか?

橋本氏――多角化をしようと海外に出たこともあるのですが、今は日本でのユニフォーム事業を小さい規模ではあるけれど磨き上げていくことに注力しています。

経営の年間計画のなかで、いかにマネジメントして定めた目標値に近づけていくかがビジネスです。磨き上げたことで目標とした粗利を稼ぎ、社員にも適正な分配ができるようになってきました。今後、具体的な多角化を考える時もあるとは思いますが、今はコロナ禍で業界全体が疲弊しているときなので、売上不振や後継者問題などでお悩みの同業者がいらっしゃれば、弊社と連携することで我々自身の目標達成も早められるのではないかと思っています。

――10年後の御社のビジョンをお聞かせください。

橋本氏――創業150年の20年後に向けて、自社のことだけでなく業界全体が盛り上がるように、他社さんとの資本業務提携なども念頭に置きながら、利益拡大を10倍、20倍と進めて行きたいと思っています。効率化、能率化の弊社での考え方を共有いただいた他社さんと共に拡大に向けていくことで、お客様からのご支持をいただき、今後150年、200年と継続できる会社にしていきたいと考えています。

橋本哲生
株式会社カクテン屋 代表取締役

投稿者プロフィール
1986年大学卒業後、証券会社勤務を経て、明治24年創業と1世紀以上の歴史を誇るユニフォーム製造・販売の老舗、カクテン屋を承継。ユニフォームの企画選定から、商品管理およびクリーニングまで、ユニフォームに関するすべての業務を行い、HACCPやISO22000等の食品衛生管理に注目が高まる中、奮闘中。趣味はゴルフ。

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