税理士法人2代目の使命は事業拡大と承継問題へのアドバイザー
- 2021/12/6
- インタビュー
税理士法人優和 東京本部の代表に就任された楢原一典さん。お父様も弟さんも公認会計士・税理士という税理士一族のなかで、顧客の相続・事業承継を支援し、税理士法人優和グループの後継者問題にも取組まれています。税理士法人を承継された経緯や税理士法人としての今後のあり方、DX化が進む中での税理士の役割などについて、お話を伺いました。楢原さんご自身が2代目の使命と考えていらっしゃる未来予想図についても語ってくださっています。
目次
税理士法人優和の誕生
Z-EN――税理士法人優和の沿革を教えてください。
楢原一典氏(以下、楢原氏)――私の父は公認会計士として、茨城県古河市で開業していました。
製薬会社を脱サラして資格取得したと本人から聞いています。
しばらくは個人事業主でやっていたのですが、平成13年の商法改正を機に当時仲の良かった同業者メンバー4人のそれぞれの個人事務所を統合する形で、2004年(平成16年)に法人を設立しました。
それが今の税理士法人優和です。
メンバーは東京・京都・埼玉、そして父の茨城とそれぞれの拠点に根付いており、今も4本部の間でノウハウや情報を共有し、その繋がりを生かして関東・関西をまたぐ総合的な税務支援をしています。
2代目承継のプレッシャーからの解放
――楢原さんは2代目だと伺いました。
楢原氏――そうですね。私は3人兄弟の真ん中の長男で、親からの希望もあり子どもの頃から跡継ぎになるんだと思って育ちました。
そのプレッシャーは大きかったですね。
大学卒業後も公認会計士資格にチャレンジし、2度目の受験で合格できました。
合格後は監査法人に就職したんですが、元々監査業務をずっと続けるつもりもなく将来は税理士業務をしたいという思いが強かったので、監査法人は4年で退職し、税理士法人に転職しました。
――その後家業は継がれたのですか?
楢原氏――そんなときに、私の弟までもが公認会計士資格を取得しました。
兄が受かったんだから自分も受かるだろうと思ったようです(笑)
弟も家業を継げる立場になったことを機に今後について話し合ったところ、弟から「実家に帰りたい。兄貴も帰ってくれるなら2人でやりたい。」と、言われました。
でも、2人して継ぐこともないのでは?ということで、家業は弟に任せることに落ち着きました。
――すんなりと決まったんですね。
楢原氏――私は、家業を継がなければならないというプレッシャーから解放されるほうが嬉しかったんですよ(笑)
それに、当時はネットが発達していなくて会計や税務の最新情報は東京にありましたから、田舎にいると情報に疎くなるのではないかと危惧する気持ちもありました。
自分が東京でアンテナ役として情報収集し、それを茨城の実家に流すことで地元での信頼度も高まり、一族全体の繁栄に貢献できればいいだろうと、私は跡を継ぐ選択をしませんでした。
では自分はどうしようか考えたときに、0からはじめることも経験してみたいと思い、税理士法人を退職して独立し、池袋に個人事務所を構えました。
そこで10年やりましたね。
その間に繁忙期の実家の手伝いに戻ったりもしましたが、自分の子ども時代を知っている社員もいてやりづらい面もあったので、結局はうまくいかなかったですね。
東京本部の承継者に
――今の事務所に入社されたきっかけは?
楢原氏――元々、同じ東京で活動していて長い間、公認会計士監査業務を一緒にやっていた東京本部の創業時の代表社員であった公認会計士の渡辺俊之先生から私に、税理士法人優和グループの東京本部に加入しないかという話が持ち上がりました。
茨城本部に資格持ちの2代目が2人いるから、東京にいる長男の方に後継を含んで来て欲しいと声が掛かり、私の事務所が吸収される形で東京本部と合流しました。
代表は今も元気にやっていますが、今年で77歳になり代替わりの時期です。
税理士法人グループとしても、埼玉本部の承継が一足先に終わりました。
東京本部も今期交代して、会長となる先代の義理の娘さんが公認会計士として副代表に就任し、私が東京本部の代表社員に就任します。
後継者問題をグループ全体で経験していることになりますね。
税理士業界の課題
――税理士業界でも人手不足が悩みの種になっているようですが、やはり職員がいないと事業としては成り立ちにくいですか?
楢原氏――顧客が増えればそれだけ業務量も増えますが、一人が担当できる絶対量は決まっていますから当然、人材は必要ですね。
私たちも一時期は採用に苦しみましたが、幸いなことに最近は若手職員が入ってきたので大事に育てている段階です。
業界全体では人の獲得は厳しい状況だと思います。
税理士業務の自動化が活性化に繋がる
――若い方たちからみて税理士の仕事はどのように見られているのでしょうか?
楢原氏――税理士という職種は、景気が悪く就職難の時の方が人気は高いんです。
でも、今は売り手市場で、さらに税理士はAIにとって代わられる職種の上位に入っていますよね。
残念ながら資格を取り、この業界を目指す人は減少傾向にあります。
――税理士は本当にAIにとって代わられる職種なのでしょうか?
楢原氏――昔ながらのやりかたは自動化の形でAIに切り替わっていくでしょうね。
でもそれは、業界にとって悪いことではありません。
効率化により税理士としての知識や経験を活かした本来のアドバイザー業務に注力することで、クライアントの課題解決や変革の手助けができ、結果的に満足度を上げることができるのです。
我々の仕事は、決して数値化できない人の心を相手にする職業です。
人とのコミュニケーションスキルが必要とされる職業なので、AIが代替できるのはその一部で、すべて代替するのは難しい職業と考えています。
――DX推進の流れのなかで税理士業界のテック化はいかがですか?
楢原氏――自社でテック開発したりなどは、総数的な問題でニーズがないところがほとんどでしょうね。
税理士のように顧問業がメインとなる事務所は、集客用のLPを制作するなんていうこともあまりないかもしれません。
ですが、今後ニーズが増えてくる相続や資産に関することにはテックに力を入れる事務所も多くなるでしょうね。
▶税理士法人優和グループ東京本部の代表社員となった楢原さん。次のページでは、グループ全体で挑戦する新たな事業展開についてお届けします!