盆栽業界の伝統に新風を吹き込む「よそ者」4代目の挑戦(前編)
- 2022/6/28
- インタビュー
盆栽業界の苦境打開策
――お義父様、きっと内心では嬉しかったのではないでしょうか(笑) 盆栽園の仕事はどのようなものなのですか?
鈴木氏――盆栽園の主な仕事は、お客様の盆栽の預かり・維持管理、そして新規販売です。
盆栽を愛好してくださる旦那衆がいて、盆栽園は「この木で盆栽を仕立てたら絶対良くなるから」と買ってもらい、さらに管理費ももらいながら銘木を育てていく。
所有者の旦那衆は自分の盆栽の資産価値が高くなり喜ぶという、いわば協力関係にあるビジネスなんです。
変革すべきは古い体質
――盆栽業界は、今どのような状況にあるのでしょうか?
鈴木氏――残念ながら、業界自体は年々縮小しており、ここ10年で全体の1割近い業者が後継者不足で廃業をしています。
私のように、他業界から新規参入する人も実際のところほとんどいません。
業界の中には、良いものを作り続けていたらお客様がついて来てくれるという風潮が今も一部ありますが、実際には愛好家の数も盆栽の価格もバブル期の10分の1以下に下がっています。
今のお客様の年齢層も50~70代と高齢化していることで、国内販売数もさらに減少してきていますから、業界全体で新陳代謝を図っていかなければならない局面だといえるでしょう。
従来のように、常連のお客様だけを相手にして新規の営業活動を行わず、入り口に休業の札を出して一見さんお断りにしているような古い体制は変革しなければなりません。
新参者の視点でイノベーションを
――なるほど。厳しい業界なのですね… 鈴木さんは他業界からの目線で、さまざまな変革に挑戦されているそうですね。
鈴木氏――そうですね。外から来た人間として、外の視点をなくさないように、同調できないことには疑問や課題を持ち続けられるように、普段から心がけています。
WEBサイトを作り盆栽をECでも販売したり、フェイスブックやインスタグラムなどの各種SNSで作品を紹介したり、積極的にマーケティングを行っています。
正直、当初は業界内から反発も受けました。
でも、実際に変革を起こしたことで、大樹園を取り巻く状況は変わってきています。
結果も徐々についてきて新規顧客も取り込めています。
盆栽の魅力を広く知らしめる
鈴木氏――最近では、少しでも多くの若い方々の目に触れるように、展示会や鑑賞会、他業界とのコラボレーションイベント開催などの機会を得ています。
先日もJWマリオット・ホテル奈良内の至る所に盆栽を置かせてもらい、鑑賞会を行いました。
盆栽といえば松を思い浮かべる方が多いと思いますが、花が咲くもの、実を付けるもの、紅葉するものなど、樹種により実にさまざま。
樹齢を重ねるごとに、根はりや枝ぶり幹の古さによる安定感や壮大さ調和などが合わさり、見る人に多彩な印象を与える趣深いものです。
また、植栽された器の美しさなども見どころの一つです。
そんなことをお伝えすると、みなさんとても興味深く盆栽に接してくれますね。
――なかなか知る機会がありませんものね。私も伺ってとても興味が湧きました。
鈴木氏――今まで盆栽に触れる機会がなかった方にも興味を持ってもらえることは嬉しいですし、業界のためにもなります。
大樹園では、鑑賞の機会を少しでも持ってもらえればと、レンタル盆栽サービスも行っており、ホテルや旅館、企業の受付などに置いてもらっています。
とても華やぐと好評なんですよ。
ーー異業種からの転身で盆栽業界に身を投じた鈴木さん。古い体質を変革しようと新たな挑戦を次々と試みます。後編「盆栽NFTに挑戦!世界初リアルとデジタル融合で価値向上を 」では、世界で初めて盆栽業界にリアルとデジタルを融合させたNFTを展開する試みや、盆栽業界の現状についてお話くださいます。