アフターコロナを見据えたIT投資を Part.2 ~ I Tリテラシーに乏しい経営者には未来が見えない

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コロナ禍で日本の商習慣が変化し、クラウドサービスを導入する企業が増えています。前回の「アフターコロナを見据えたIT投資を Part.1 ~ テレワークはなぜ進まない?」で、正社員数が少ない会社ほどテレワークの導入率が低い傾向について解説してくださった株式会社ジュリエット 代表 青木治夫さんが、今回はコロナ収束後を見据えた積極的なIT投資の可能性についてアドバイスしてくださいます。

今やクラウドサービス全盛の時代

前回、テレワークに対して消極的な人や会社について書きました。言っては悪いですが、テレワークすら導入できないような会社は、他分野のITシステムについても正しい投資判断ができず、結果的に社会情勢から取り残されてしまうのではないかと私は思います。

いわば、環境に適合して進化することができず、滅亡の運命をたどる恐竜みたいなものですね。これは、大企業が導入するような大規模なITシステムの話ではありません。中小企業でも安価に導入できるITの話です。

恐らく皆さんは、ワードやエクセルなどを日常的に使っていると思います。文書を手書きしたり計算を電卓でおこなったりするよりも、ワードやエクセルを使うほうがはるかに簡単で便利ですよね。

それと同じように、中小企業でも導入してしかるべきITシステムやツールがたくさんあるのです。

CloudService

会計ソフトもクラウドで提供される

例えば、経理のシステム。個人商店を除いて、今どき手書きで帳簿を付けている会社は少ないと思いますが、パソコンやら社内サーバやらにインストールして使うパッケージソフトを使っている会社は多いですよね。弥生会計などのようなソフトです。

パッケージソフトが悪いわけではないですが、最近のトレンドはクラウドサービスでしょう。クラウド会計ソフトには、マネーフォワードクラウド会計や、freeeなどがあります。弥生会計シリーズにも、弥生会計オンラインというクラウドサービスがあります。これらを導入すれば、例えば銀行口座の入出金情報を、自動でネットバンクから取り込むことができます。いちいち通帳を見て会計ソフトの仕訳帳に手入力する必要がなくなるのです。これだけでも業務の効率化が進むと言えるでしょう。

(ちなみにこういうインターネット経由でサービス提供されるサービスの形態を、SaaS=Software as a Serviceと呼びます)

勤怠管理と労務管理を連携することも

あるいは、勤怠管理システム。どの従業員がいつ出社していつ退社したか、なんていうことを簡単に記録して、出勤簿を自動で作成するシステムも数多くあります。中には従業員が自分の出社や退社時刻をスマホで打刻できるものや、打刻時のスマホの位置情報を記録できるようなものもあります。テレワークや出張が多い会社における従業員管理には最適でしょう。タイムカードを「ガシャン!」ってやっている場合ではありませんね。

また、勤怠管理システムと連動して、その情報を従業員の入退社ならびに雇用契約情報などを記録する労務管理システムに紐づける仕組みや、従業員ごとの賃金台帳を作成する給与計算システム、さらにはその給与計算結果を会計システムに反映させる機能など、横の連携をも可能にする仕様が続々と構築されています。

これらのシステムを導入していけば、どんどん業務が自動化していきます。これまで手でやっていた作業が一気に効率化されるわけですね。

もっと凝りたければ、例えばzapierという、プログラマーではなくてもサービス同士を連携できるサービスを導入したり、あるいはGoogle Apps Scriptでプログラミングしたりして、自社オリジナルの機能を作ることだって可能です。

(複数のシステムを連携する形態をiPaaS=Integration Platform as a Serviceと呼びます)

むしろ人件費を考えると割安に

「でも、こういうのってお高いんでしょう?」と思われるかもしれませんが、最近はなかなか安価に使えるのです。

これまでに紹介したようなサービスの利用料金はバックオフィス業務を中心としたものですが、従業員一人あたり月額500〜2,000円程度です。複数のサービスを同時に使っても数千円程度。

なぜそんなに安いかと言うと、システムを自社用にイチから開発するわけではなく、既に開発されているシステムを複数社で使用し、かつオンラインで提供を受けるからなのです。月額で使った分だけを払う、いわゆるサブスクリプション方式です。

私が過去に相談を受けてきた企業群では、これらの月額料金を支払ったとしても、担当者の工数が削減され、結果的にトータルコストを抑えることができるケースばかりでした。ワードのソフトを買うより費用はかかるけど、人間が張りついて手作業で文書を作成する人件費よりも安く済んだのです。

旧態依然の考え方で導入するのは危険

なお、ITシステムの導入メリットはコスト面だけではありません。好むと好まざるとに関わらず、導入しないとビジネスに致命的な支障が出ることもあり得ます。

例えば、コロナ禍でぐんぐん利用社数が拡大しているビジネス向けITサービスのひとつに、電子契約サービスがあります。契約書に印鑑を押すのではなく、インターネット上で契約締結を完結させることを目的としたサービスで、有名どころはクラウドサインGMOサインなどです。

この電子契約サービスを実際に使ってみると、実は自社側でお金を支払わなくとも、契約締結だけはオンラインで完結することができるように見えます。しかし、電子契約したPDF書面を、自社が契約するしっかりとした電子契約サービス上で保管しておかないと、電子署名法上の電子署名の有効期限が過ぎたときに、有効ではないと言われてしまう可能性があるのです。

新しい法律や新しい取引環境に慣れずに「今まで通りでいいかな」と進めてしまうことは、いつかこのようなミスを起こす危険性をはらむのです。

つまり、既存の考え方で物事を進めてしまい、進化しないままでいることが招くリスクです。

迅速な意志決定のために社内を風通し良くする

これらの社内のシステム周りの問題を解決していくためには、本来は先手先手で社内のIT担当者が提言をしていくことが必要でしょう。情報システムの部署、いわゆる情シスと呼ばれる部署が担当でしょうか。

しかし経営者にITやシステムへの理解が足りないと、情シスからはうまく提案があがってきません。情シス担当者がただの社内のヘルプデスクになってしまい、経営者が「あの人、パソコンの使い方を教えてくれる人でしょ?」みたいな雑な扱いをしてしまうと、情シスもやる気をなくします。

IT環境は劇的に変化し、ITツールを使ったビジネス環境はどんどんアップデートされています。適切なIT投資ができるよう、ITなんて分からない、などという弱気なことは言わないようにしていきたいものです。

参考資料:株式会社パーソル総合研究所「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査

青木治夫
株式会社ジュリエット 代表

投稿者プロフィール
オリックス銀行、オリックス社長室での新規事業企画を経て、ライブドア勤務。
転職したわけではないのにライブドアがLINEに買収されたのでLINEに移る。その後、転職したわけではないのにまた事業買収されてミクシィに移る。
しまいに買収する側の業務もおこなうようになり、買収後の企業のPMIにも従事。
ITツールを駆使して、事業承継期やベンチャー期にある企業の業務プロセスの改善や、バックオフィス業務の効率化をおこなっている。

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