「買収されたけど転職します」と言われないために大事なこと

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「私、自分がサラリーマンとして働いていた時、会社が買収されてしまった経験が何度もあるんです。」と、初っ端から興味の沸くお話をしてくださった青木社長。「買収される側の一従業員の気持ち」を踏まえて、買収成功のためには何が不可欠なのか? についてお話を伺いました。

従業員たちの力こそが競争力の源であるというような会社、人材こそが資産であるというような会社を買収する際には、特にこの「買収される側の一従業員の気持ち」を強く意識しておくと良いでしょう。

想定される業態は、人材の発想からアイデアを生み出すクリエイティブな業態や、専門技術が必要な匠のものづくりの業態などです。

(ここでは、買収時に人材はリストラするというパターンや、従業員は引き継がず事業や資産のみを買収するというパターンは除いて考えます。)

突然の事態における、一般従業員の反応とは…

では最初に、買収される側に所属する従業員がどのように買収事実を知るのか、そのシーンを思い浮かべてみましょう。

通常、企業の売買収の交渉は、秘密裏に実施されます。

よってほとんどの従業員は、自分の勤務先がどこかに買収されることを唐突に知ることになります。よく聞くのは、ある日突然、全従業員を対象にした会議の招集がかかり、年末年始や決算期でもないのにナンダナンダと思っていると、その会議の場でいきなり買収されることを知らされる、というようなパターンですね。

この突然の事態における一般従業員の反応は、多くの場合においてネガティブです。

というのは、経営陣やオーナーの思いはともかく、一般従業員としては、買収されるということは未知の世界に飛び込むことと同義ですので、その未知に対して恐れおののくのです。

中には、そういう事象に対して武者震いするという人や、大企業に買収されたらラッキー、と思う人もいないわけではないですが……。

ちなみに、私がいた会社が買収されたとき(何度かあります)、周りの一般従業員の反応は以下のようなものがありました。

(同業に買収されたとき)
「今までライバルだったあの会社に買われるなんて悔しい( `皿´)キーッ!!」

 

(違う業態の会社に買収されたとき)
「うちの商売のこと分かってくれなそうだからイヤだ(´・ω・`)ショボーン」

 

(大企業に買収されたとき)
「大企業には優秀な社員が多いから、
きっと俺なんて使い物にならなくて給料下がるんだろう((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル」

 

 

従業員を無理やりつなぎとめても意味がない

しかしこういった形で買収に対してネガティブなイメージを持つ一般従業員がいたとしても、彼らに離職されてしまっては困ります。

もし離職されてしまうと、当初考えていた買収後の計画に狂いが生じます。

もし代替人材を補充しようとすれば、それだけ採用コストや教育コストがかかってしまいます。

また、社内で人望のある従業員が離職すれば、残ってくれた従業員たちのモチベーションが低下することも考えられます。良いことなんてひとつも無いですね。

M&Aの教科書的な意味合いでいうと、従業員を繋ぎとめるための施策として、人事制度の設計をしっかりすることが必要です。

これらを防ぐためには、買収の事実を発表した直後から、何よりも従業員たちに懇切丁寧に説明をすることが大事です。買い手側の経営陣なりオーナーがしっかりと買収先に出向き、経営陣だけでなく一般従業員に対してもコミュニケーションをとりましょう。

そして、従業員のみなさんこそが大切ですというメッセージを発しましょう。

M&Aを経て働く魅力のある企業に

その意味では、やはりその会社の経営理念に共感したり、その会社で働くことに対して従業員が深く意義を感じてもらえるようにするなどの施策がもっとも効果的であると考えられます。

つまりこれは、経営者としてなんのためにその企業を経営したいのかをしっかりと考え抜き、それを偽りなく示すということです。

ビジネスである以上、「買収したら利益拡大できそうだから」「安価に買えるから」というのはもっともな理由ではあります。しかし、そんなことを従業員たちに話しても意味がありません。そうではなくて、その会社の理念や、製品・サービスを通して実現したい社会のあり方などを、例え青臭かったとしてもしっかり説明することが大切です。

その上で、従業員の給与・待遇の話や、教育を通したキャリアアップなどの話をし、従業員にとってその会社で働くことにどんなメリットがあるのかを提示しましょう。

 

優秀な従業員であればあるほど、他社への転職も容易です。そんな従業員に見限られないためにも、しっかりとコミュニケーションをとることをオススメします。

青木治夫
株式会社ジュリエット 代表

投稿者プロフィール
オリックス銀行、オリックス社長室での新規事業企画を経て、ライブドア勤務。
転職したわけではないのにライブドアがLINEに買収されたのでLINEに移る。その後、転職したわけではないのにまた事業買収されてミクシィに移る。
しまいに買収する側の業務もおこなうようになり、買収後の企業のPMIにも従事。
ITツールを駆使して、事業承継期やベンチャー期にある企業の業務プロセスの改善や、バックオフィス業務の効率化をおこなっている。

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