財務諸表を読み解き、粉飾を暴く!リアルの把握がスモールM&A成功の鍵

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(株)レヴィング・パートナー代表取締役 寺嶋直史氏と、株式会社つながりバンク 代表 齋藤由紀夫氏の共著『スモールM&Aのビジネスデューデリジェンス実務入門』から一部を抜粋し、シリーズでお伝えしている4回目。

最終回となる本稿は、会社を映す鏡である財務諸表から会社の”リアル”を把握する経営分析についてお伝えします。ビジネスデューデリジェンスの視点でBSとPLを読み解く力を備えることで、数字だけではない会社の実態(現状、強み、問題点)を把握し、時に粉飾をも見抜き、M&Aの成功率を高めることができます。M&Aや事業投資についてZ-ENにご寄稿いただいている寺嶋、齋藤両氏の知見が詰まった手法を是非参考にしてください。

経営分析から見えてくる「会社の状況」把握の重要性

経営分析とは、BS(貸借対照表)、PL(損益計算書)を使って会社の業績や財務状況を明らかにすることであり、具体的には、主にBSとPLの推移と、それらを活用した財務分析を指します。
BSとPLの推移では、売上や原価、各利益の推移を見て、企業の成長性や収益状況の推移を明らかにします。
財務分析に使用するのは、収益性や生産性、効率性、安全性などの指標です。
その他、事業別や、商品別・顧客別の売上推移も、経営状況を把握する上で重要になります。

企業の実態を明らかにするBSとPLの活用

なお、この経営分析には、通常のBS、PLではなく、財務デューデリジェンス(以下、財務DD)で算出した実態BSと実態PLを活用することが望ましいといえます。
特に事業譲渡で事業の一部がM&Aの対象となる場合は、対象となる事業の範囲で分析する必要があります。

ヒアリング力を屈指して仮説を立て検証する

経営分析において、数値を自動計算させた「作業」の結果に「思考」を加えて会社の実態をイメージするためには、「仮説」を立てる必要があります。
この仮説力は、短期間のヒアリングで経営状況の本質を見極める際に重要になります。

例えば、営業利益が何年も続けてマイナスであるにも関わらず、固定費である販管費が削減できていなければ、営業利益を黒字化するための経費削減の取組みができておらず、経営者は利益への意識が低い可能性がある、という仮説を立てることができます。
また、小売業で、売上高はやや上昇している一方で、連続で赤字幅が増大しており、原価率や広告宣伝費が上昇していたとします。
これは、売上減を安売り広告で補おうとして、逆に利益を減らしてしまった状況が見え、経営者が「安売りによる売上増」という短絡的な施策で業績低迷を打開しようとしているという仮説が描けます。

製造業に多く見られる経営悪化要因1

その他、製造業で、赤字続きで借入が年々増加しているにもかかわらず、有形固定資産は横ばいであったとします。
この場合、借入金は運転資金であり、業績悪化による運転資金不足を経費削減等ではなく借入に依存している恐れがあり、経営者の経費削減の意識や決断力の欠如の可能性があります。
これは企業の経営が悪化する典型的なパターンです。
売上高借入金比率を見て借入過多に陥っていないかを確認し、金融支援が必要な状態に陥る可能性を探ることも重要となります。

製造業に多く見られる経営悪化要因2

さらに製造業で、年々売上が増加していても、利益は横ばいか減少しているケースがあります。
経費を見ると、人件費が増加し、売上高人件費比率が増加しています。
この場合、売上増に対応するために新たに人材を採用したものの、人材をうまく活かせていないと考えられます。
これは、現場のしくみができていない、現場の統制が取れていない、OJTが機能していない、そもそも利益状況を考慮せずに場当たり的に人を増やしている、などの原因が考えられます。

実態に近い仮説を立てるために

このように、BSとPLを見るだけで、数字だけでなく会社のさまざまな状況を描くことができます。
そして各利益や人件費の売上高に対する比率を見ることで、さらに状況が理解しやすくなります。

ただし、これらの仮説を立てるには、

中小企業は、大量仕入で仕入値を抑え、システム化で人件費を抑えて効率化を図った大企業には、価格競争では勝てない

商品等の独自の価値で勝負しなければならない中で、無理に安売りを続けてしまうと、経営が悪化するだけでなく、安売りを求める顧客しか集まらなくなる恐れがある

という事前の経営やマーケティングに関する知識も必要になります。
こうして定量分析結果を踏まえて仮説を立てた上でヒアリングを行えば、会社の現状を、短時間で、より深いレベルで把握することが可能になるのです。

▶会社の実情は財務諸表で明らかになることを踏まえ、次のページでは、粉飾決算が行われるリアルを数値と共に解説します!

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寺嶋直史
事業再生コンサルタント
中小企業診断士
(株)レヴィング・パートナー代表取締役

投稿者プロフィール
大手総合電機メーカーに15年在籍し、部門で社長賞等多数の業績に貢献、個人では幹部候補にも抜擢される。その後独立してコンサルティング会社を立ち上げ、多くの中小零細の再生企業を、経営改善や業務見直し、ブランディングなど、様々な問題解決により再生に導いている。
その他、1年で一流の経営コンサルタントを養成する「経営コンサルタント養成塾」の塾長として、金融機関対応、問題解決思考、ヒアリング手法などの基礎から、事業デューデリジェンス、財務分析、経営改善手法、事業計画、マーケティング・ブランディングなど、様々な講義をすべて1人で実施している。
著書に「再生コンサルティングの質を高める 事業デューデリジェンスの実務入門」(中央経済社出版)、「究極の問題解決力が身につく 瞬発思考」(文響社)、「儲かる中小企業になる ブランディングの教科書」(日本実業出版社)等がある。

齋藤 由紀夫
株式会社つながりバンク 代表

投稿者プロフィール
株式会社つながりバンク 代表。
オリックス㈱に16年在籍後、2012年に独立。
スモールМ&Aの普及活動を中心に、事業再生・リノベーション等に注力。自らМ&A・事業投資も行い、数件エグジット済。
経営革新等支援機関(中小企業庁主管、認定支援機関)、事業引継ぎ支援センター 専門登録機関、日本経営士協会 経営士、日本外部承継診断協会 顧問。
趣味は焚火、居酒屋巡礼、トレイルランニング。

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