経営者の重要課題である「組織づくり」と「人財育成」

この記事を読むのにかかる時間: 4

経営者の悩みに常に上位ランキングするのが「ヒト」、特に「組織づくり」についてです。組織がうまく機能していることは、会社運営をしていくうえで非常に重要で、事業の成長にも不可欠なことでしょう。

今回は企業経営に関するプロフェッショナルが集うMASTコンサルティング代表取締役の高島氏、同社執行役員兼経営コンサルタントである橋詰氏により、機能的な組織づくりのヒントと、人財をつくる「Human Resource Management(人的資源管理)」の仕組みについて教えていただきました。

個人よりもチーム戦が得意な日本人。強みを生かした組織作り

日本人は、誰も100m走で10秒を切れないのに、オリンピック400mリレーで銀メダルを取ってしまうとか、突出したスタープレーヤーもいないのにサッカーW杯で強豪国を相手に健闘してちょっとした旋風を巻き起こすことができるなど、個々の力をうまく組み合わせて、1+1を3にも4にもできる「組織づくり」が得意な民族です。

企業も一緒で、個性ある「人財」をうまく組み合わせれば、一人で事業を行うよりも、はるかに大きな事業に成長させることができます。

それを可能にするのが「組織づくり」です。

企業の組織形態の中で最もオーソドックスなのは、「機能別組織」と呼ばれる、社長をトップに営業部・製造部・総務部・経理部など「専門化されたチーム」がぶら下がっている、皆さんがよくご存知の組織形態です。

[図表1]機能別組織(※図はZ-EN編集部作成)

事業領域が限られる中小企業であれば、社長と専門化された従業員の意思疎通の容易なこの組織形態が、まずは目指す姿です。

機能別組織をうまく機能させるには

機能別組織は、上意下逹の情報伝達がスムーズで、役割分担や責任が明確なので組織をコントロールしやすいことが特長です。
専門化された機能をうまく使えば、あなたの事業を加速させることができるでしょう。
しかし、官僚化しやすい組織形態でもあるので注意も必要です。

ただ、創業期の組織づくりはそう簡単にはいきません。

人は常に足りず、専門化どころか分業もままならないかもしれません。
従業員は「経営資源」であると同時に「コスト」でもあるので、社長の奥さんが経理・総務を無給でやってるなどというのも、よく聞く話です。

そして創業期は、管理よりスピード感と柔軟性が大切ですから、はじめは役割分担を決め、責任を明確にしながら一人で何役もやっていくことも仕方がないかもしれません。
少人数で一丸となって生き残りを図りつつ、事業が軌道に乗ったら少しずつ専門化・分業化していくのが現実的でしょう。

事業が成長するに従い、複数の事業が生まれたら「事業別組織」の採用や「マトリックス型組織」(縦の命令系統にこだわらない横断的な組織)等の採用を考えると良いでしょう。

いずれにしても、自社の経営戦略に沿った組織に発展させていくことが大切です。

 

会社にとって必要な人財をつくる仕組み「HRM」

さて次は、HRM(Human Resource Management)、人的資源管理についてお話しします。HRMとは、従業員のモチベーションを高め育てることで、従業員の能力を最大限に活かそうとする仕組みのことです。

[図表2]HRMの仕組み(※図はZ-EN編集部作成)

「採用」で様々な個性を集め、
②適材適所に「配置」し、
納得性・透明性・公平性のある
「評価・報酬」を実施して、
⑤各従業員の特性にあった「能力開発」を行う。

そして、それを事業の発展にフィードバックしていく仕組みのことです。

せっかく雇用した従業員をただ漫然と働かせるだけでは、「人財」にはなりません。
従業員としっかりとコミュニケーションをとって経営理念を浸透させ、忠誠心とやる気を持って働いてもらってこそ従業員は「人財」となり、1+1を3にも4にもしてくれる存在になるのです。

HRMは必ずしも大企業向けの人事戦略ではありません。
従業員が一人で何役もこなさなければならない創業期の企業にこそ必要な仕組みです。

従業員の雇用手続きも大切な組織づくり

従業員の能力開発に必要な教育研修費や賃上げのための人件費には、政府からの助成金や補助金のほかに税制面での優遇など様々な公的助成の仕組みがあります。
専門家に相談しながら、積極的に活用しましょう。

そして、初めて従業員を雇用する事業者が忘れてはいけないのが、雇用に際して必要な諸制度や法的規制です。

従業員を雇用する時には、雇用契約で明示するべき法定事項をはじめ、労働基準監督署が窓口となる労働保険や、年金事務所が窓口となる社会保険(健康保険と厚生年金保険)、労働者名簿や賃金台帳、出勤簿等法定帳簿の保存義務など、従業員を守るために定められている複雑な制度や法的規制が目白押しです。

適切な雇用手続は、従業員のみならず、事業を守り発展させていくための大前提ですが、複雑で落とし穴の多い分野ですから社会保険労務士などの専門家にしっかり相談しましょう。
間違ってもブラック企業の仲間入りをしないように注意が必要です。

「企業は人なり」と言われます。
「人財」の扱いは、経営資源の中で格段に難しいですが、企業の成長に欠かせないダイナミズムとなるべき存在です。

「ヒト」を円滑に使えてこそ、本当の意味での経営です。組織づくりと人材育成を組み合わせて、大きく成長する企業を作っていきましょう。

出典:幻冬舎GOLD ONLINE『事業の成長に不可欠な「組織づくり」「人的資源管理」の重要性』

この記事は著者と掲載元の幻冬舎に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

高島 宏明
MASTコンサルティング株式会社
代表取締役 中小企業診断士

投稿者プロフィール
1974年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、大日本印刷株式会社にて情報システム業務、監査法人トーマツにて上場支援業務に従事した後、独立。
2011年に中小企業診断士を取得。

経営支援に従事する士業がネットワーク化し活躍するためのプラットフォーム構築を目指して2013年MASTコンサルティング株式会社を設立、2015年には中小企業の海外展開支援のため同タイ法人を設立、両社の代表取締役就任。
中小企業のIT、財務だけでなく、事業承継、M&A、海外展開支援等に携わっている。

橋詰 秀幸
MASTコンサルティング株式会社執行役員
中小企業診断士

投稿者プロフィール
早稲田大学法学部卒業。中小企業診断士。
現三菱UFJ銀行に33年間勤務し、融資業務、法人・富裕層営業、事業承継・資産承継コンサルタントを歴任。
現在は退職し、経営コンサルタントとして事業承継・資金調達支援を行っている。
一つ一つ丁寧に分かりやすくアドバイスし、経営者様に安心感をもって経営に向かっていただけるコンサルティングを心掛けている。

著書に『中小企業のための補助金・助成金徹底活用ガイド』(同友館・共著)、『中小企業診断士2次試験 事例問題攻略マスター』(同友館)がある。

この著者の最新の記事

関連記事

ピックアップ記事

  1. 社長がしくじった経験から一定の法則を導き出し、それに学ぶことで成功につなげていこう!との趣旨で開催さ…
  2. 「PR」と聞くと、企業がテレビやラジオなどのメディアで流すイメージCMや、商品やイベントなどを情報発…
  3. 決算は、株主、投資家、金融機関など、外部のステイクホルダーに会社の財政状態・経営成績を伝達する役割を…

編集部おすすめ記事

年別アーカイブ

ページ上部へ戻る