小さい会社もいい会社だ~スモール・イズ・ビューティフル~
- 2021/8/30
- 経営全般
「♪大きいことはいいことだ」。これは、1967年、前回の東京オリンピックが開催された時期に大ヒットなった「森永エールチョコレート」のCMキャッチコピーです。シニア世代であれば、耳にしたことがあるかもしれません。人口が急増し、活気溢れ、モノを作れば売れた時代。時代背景を捉えた秀逸なコピーです。当時は、企業経営においても、社員数が多い、売上規模が大きい会社が「いいことだ」とされてきました。しかし、現代の社会では、拡大志向の呪縛に捉われた多くの経営者が、現状とのギャップに苦しんでいるのも事実です。その原因は何なのでしょうか。
小さいことはいいことなのか
近頃、E・F・シューマッハーが50年ほど前に著した、「スモール・イズ・ビューティフル」が再び注目を浴びています。
メディアアーティストであり情報学者でもある落合陽一氏が、最近メディアで推奨した影響があるようです。
スモール イズ ビューティフル
F・アーンスト・シューマッハー著(講談社学術文庫)
本書の内容を、ざっくりと要約すれば以下のようになります。
- 「規模の経済」「巨大信仰」「貪欲」「嫉妬」が、様々な問題を引き起こす。
- 「足るを知る」ことで、バランスを取ることが重要。
- 地球環境に配慮し、継続を前提とした経済活動が必要。
- 最小資源で最大幸福を目指す「仏教経済学」を取り入れるべき。
私もこの世界的名著をお勧めします!と言いたいところですが、とにかく読みにくい。
20年前に本書を手に取り、第一章あたりで挫折しました。
今回、再挑戦し、環境問題、経済、ビジネスにおいて新鮮な気づきがあり、改めて「会社」のあり方について色々と考えさせられました。
今日、Google、Amazonのような巨大IT企業の出現により、会社規模は大きい方がいいというような論調は更に強くなっている印象を受けます。
現政権下においても、日本企業の生産性が低い理由のひとつに「中小零細企業が多い」ことが論じられ、統廃合を後押しするような政策が打ち出されています。
しかし、これは正しい方向性なのでしょうか。
本書から、社長も社員もストレスなく過ごせるヒントを得た気がしましたので、経営者視点から考察して共有したいと思います。
「固定費」という魔物
規模の拡大を目指すと、当然ながら「人件費」「家賃」等の固定費が上昇します。
最近では、「社会保険料」が払えずに苦しんでいる中小企業が急増しています。
特に粗利率が低く、労働集約型の業界では、社会保険料の増加率を吸収するのが難しくなってきています。
いきなり、ビジネスモデルを転換しようと思っても、組織が大きいほど反発も強く、変化に時間を要します。
固定費である「人件費」の削減も、倒産危機レベルでなければ違法行為となってしまいます。
しかし、組織が小さければ、危機感を共有し、変化へ対応するための「生存戦略」を迅速に遂行できます。
メンタル面で病む社員
「職場うつ」が社会問題化しています。
大企業サラリーマンや公務員等、大きな組織に属している方々で特に増加しているのは何故でしょう。
厚労省の「労働者健康状況調査」1)によれば、その理由のトップは「職場の人間関係の問題」です。
組織が大きくなれば、人間関係も希薄になりやすく、コミュニケーション不足によるストレスが増加する傾向にあります。
良い学校を出て、大企業に就職し、できれば定年まで勤める。
これは本来、幸せな社員となるロールモデルだったのですが、ストレスフルな「職場」となっていることで、「幸せ」の意味や価値が分かりづらくなっているのだと思われます。
▶次のページでは、大企業の組織改革においても「スモール・イズ・ビューティフル」が実装されている事例をご紹介し、企業の規模と幸福の関係について考えてみたいと思います!