事業投資に不可欠な事業計画~盛込むべき内容と策定方法を伝授

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起業や新規事業の立ち上げなど、事業投資に関する計画書を策定する際には様々な段階を経ることになりますが、事業計画と一言にいっても、実際はどのような内容を指すのかよくわかっていないことが多いのではないでしょうか。

事業計画とは何なのか、事業計画を策定することにどんなメリットがあるのか。
一般社団法人日本パートナーCFO協会代表理事を務める高森厚太郎さんが解説してくださいます。

経営計画に基づいた事業企画を事業計画に高める

事業計画は成長戦略のロードマップ

私は、事業計画を「成長戦略を現実のものとしていくロードマップにあたるもの」と定義していますが、事業計画と似た言葉に「事業企画」「経営計画」というものがあります。
これらはどこが違うのでしょうか?

3つとも明確な定義があるわけではありません。
しかし、それぞれ違うものと考えた方が個々の位置づけが明らかとなり、事業を検討する各段階で考えることをよりハッキリさせられます。

事業企画は初期段階のコンセプト

事業計画が「実行まで想定したもの=ロードマップ」にあたるものとすると、事業企画は「事業の検討初期のコンセプトをまとめたもの」で、事業計画の前段階となります。
事業アイディアに焦点をあて、事業内容や事業環境、想定売上の概算をまとめていきます。

次の段階となる事業計画は、事業企画を具体化していくために作成するものです。
事業企画を深堀りし、新規事業を展開する際に生じるすべてのものに焦点をあてながら、事業戦略や実行施策、収支計画を立てていきます。

経営計画は企業の方向性を示すもの

事業企画から事業計画までの2つが事業にフォーカスしたものであるのに対し、経営計画は全社にフォーカスをあてています。
すなわち、経営計画は「会社全体の経営・戦略について方向性を定めたもの」であり、その主な内容は経営ビジョン、全社戦略、事業戦略、機能戦略、中期経営計画(財務)と広範囲に及びます。
経営計画は、会社を回すうえで、会社が抱える複数の事業と新規事業の兼ね合いなど、全社機能のバランスを考えなければいけない段階で作成すべきものです。

事業計画を構成する3つのプラン

事業計画に盛り込むべきものとしては、その事業におけるビジョンや戦略、組織、スケジュールなどの定性面と、1年や数年間の売上や利益など数値計画である定量面があります。
では、事業計画に盛り込まれていること、構成要素とは結局何なのでしょう。

コンセプト+実行計画+数値計画

事業計画の構成要素は、コンセプト、実行計画、数値計画の3つです。

  1. コンセプト…何をするのか?というビジネスプラン
  2. 実行計画…どう進めるのか?という実践的プラン
  3. 数値計画…いくら儲かり、いくら必要なのか?という収支プラン

事業を作るためには、何をやるのか?つまりコンセプトが必要です。
またそれをどのように実現していくのかということも、実行計画がないと何もできないため当然必要です。
1,2を経て、結局のところそれって儲かる事業なのか?ということも、3の数値計画でしっかりシミュレーションしておかなければいけません。

事業計画のテンプレート

事業計画のサンプルで代表的なものとして総務省「ICTベンチャー向け事業計画作成の手引き」があります。

上記手引きの14要素を整理すると、2~10がビジネスプラン(コンセプト)、11と12が実行計画、13と14が数値計画に該当します。

事業計画では、「何を?」「どのように?」「儲かるのか?」の3つを考え尽くさないといけないと覚えておくとよいでしょう。

事業計画のメリット

最後に事業計画の意義を改めて整理しておきます。

そもそも、事業計画は自身が推進しようとする事業を「整理するツール」です。
事業計画を策定することで、自分の事業アイディアを様々な観点から多角的に考察し、リスクと仮説を明確化できます。

また、事業計画は他者に共有する際の「コミュニケーションツール」になります。
投資家・銀行への説明の際にも、経営陣やチーム、事業パートナーへの説明にも使うことができます。

3つ目のメリットは、事業計画に基づいて実行する「実行支援ツール」になることです。
現場で実行を進める上での指針、検証すべきポイント・論点に関するインプット、達成するべき目標などが一目見てわかる事業計画は、事業の実行をナビゲートしてくれるでしょう。

最後に、実行してみて最終的にどうだったか、検証して次に活かす「検証ツール」になります。
予実差異の確認、仮説としたパラメータの検証など、次期計画へのフィードバックに活かすことができます。

アイディアを可視化する事業計画

事業の成長を目指す場合、以下の点を認識することが必要になるでしょう。

  • 目標…どのくらい成長したいのか?
  • 必要リソース(含む外部パートナー)…成長のために必要な経営資源、ヒトモノカネ情報は?
  • その目標達成に向けた行動に付随するリスク…不確実性とダウンサイド

これらを常に念頭において事業計画を進めるためには、数字で表現することが必須となります。
数字という「具体」で考えることで対象事業について「生々しく」考えることができます。

起業、新規事業に限らず、企業経営では(企業が抱える)事業の成長を目指しているはずです。
成長を志向する起業家、事業リーダー、経営者は、定性・定量面から事業アイディアを可視化する「事業計画」を必ず作るようにしてください。

出典:事業計画作成における3つの補足(資料も含む)
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

高森 厚太郎
プレセアコンサルティング株式会社
代表取締役パートナーCFO

投稿者プロフィール
東京大学法学部卒業。
筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。
日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。

現在は数字とロジックで経営と現場をナビゲートするベンチャーパートナーCFOとしてベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める。

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