【書評】失敗の法則を知り、「失敗の罠」から抜け出す
- 2023/4/11
- 書評
ビジネスを続ける上で、「失敗」はつきもの。しかし、その連鎖を止め、「成功」に導く試金石となる法則があることを、コカ・コーラ元COOで、60年のビジネス経験を持つドナルド R.キーオは、自著「ビジネスで失敗する人の10の法則」で紹介しています。自身の体験を元に導き出した、失敗を引き寄せてしまう考え方や行動の法則を解説しながら、成功をおさめるためのポイントも指摘しています。本書をナビゲートしてくださるのは、企業支援のエキスパートとしてご活躍の書評ブロガー、徳本昌大氏です。
ビジネスで失敗する人の10の法則
ドナルド R.キーオ(日本経済新聞出版)
目次
本書の要約
ビジネスで失敗を繰り返さないためには、失敗する人に共通する10の法則を理解することが重要です。
何らかの失敗に陥っても、それに続く危険な徴候を見つけ、手遅れにならないうちに行動すれば、失敗の罠から抜け出せます。
成功を続ける経営者たちは、失敗しても決してあきらめずにそこから抜け出す方法を見つけ出し、絶えず前進しているのです。
失敗に早く気付き、修正すれば成功は続く
本書の序文には、以下のような記述があります。
自分より優れた人物と付き合うようにたえず努力すべきだと私は考えている。そうすれば間違いなく、自分を高めることができる。(ウォーレン・バフェット)
ウォーレン・バフェットが序文を執筆し、ビル・ゲイツが推薦していた本書を遅まきながら読み始めましたが、これが実に面白い。
多くの経営のヒントを貰えます。
著者のドナルド R.キーオは、コカ・コーラの元社長兼COOとして活躍しましたが、彼こそがコカ・コーラを代表する人物だとバフェットは述べています。
バフェットは自分より優れた人物であるキーオから学ぶことで、コカ・コーラへの投資を決めるだけでなく、失敗しない経営者を見極めていたのです。
失敗に共通する法則
キーオは60年に及ぶ自身のビジネス経験から導いた「失敗する人の10の法則(実際には以下の11の法則)」を本書で明らかにしています。
このうちの1つでも当てはまれば、あなたの仕事は高確率で失敗すると言うのです。
法則1:リスクをとるのを止める(もっとも重要)
法則2:柔軟性をなくす
法則3:部下を遠ざける
法則4:自分は無謬だと考える
法則5:反則すれすれのところで戦う
法則6:考えるのに時間を使わない
法則7:専門家と外部コンサルタントを全面的に信頼する
法則8:官僚組織を愛する
法則9:一貫性のないメッセージを送る
法則10:将来を恐れる
法則11:仕事への熱意、人生への熱意を失う
キーオ自身は実際にいくつもの失敗をしていますが、失敗の原因となるような自身の間違いにすぐに気づき修正することで、コカ・コーラ社を持続的に成長させ成功に導いています。
現状に満足せず、リスクを取ることが勝利への道
キーオは、多大な成功をおさめている時にこそ、リスクを取るべきだと述べています。
「ものごとがうまくいきすぎているのはよくないこと」だと考えているのです。
いつも同じことを聞いて申し訳ないが、何もかも好調なのはなぜか。いま心配しておけば、今後はその点を心配しなくてもよくなる部分はもっとないのか。
成功し続ける人は絶えずリスクをとっています。
逆に成功に安住し、リスクを取らなければ、他の競合に負けてしまいます。
最近ではベンチャー企業が大企業を崩壊させるような革新的なイノベーションを起こしていますが、自社のマーケットを奪われないために、大企業の経営陣は変化に適応し、積極的にリスクを取りにいくべきです。
1970年代に強者だったゼロックスは、パーソナルコンピュター分野でリスクを取らなかったために、アップルやマイクロソフトに敗れてしまいました。
現状に満足せず、リスクを恐れないことこそが勝利への道であると、過去のさまざまなケーススタディが教えてくれています。
失敗の歴史を学ぶことで、経営者は強い企業をつくれるようになります。
▶ビジネスで成功している人は何度も失敗を経験しているというエピソードや、「こうすれば失敗する」という法則の提示に、成功に近づく指針を得た方も多いのではないでしょうか。続いては、大手企業が失敗を克服して成功を手中にした実例を通して、「強い企業」をつくるポイントをご紹介します。