【書評】日常行動のルーティン化=脳の省エネで幸福度アップ
- 2021/9/6
- 書評
私たちの行動は日常的に繰り返されていることが多く、そのほとんどを無意識のうちに行っています。自分がより良く生きるために必要な行動にもルーティンを決め、負担にならないよう無自覚に手順を踏むことができれば、ストレスや悩みから解放されるのではないでしょうか。時間をより有意義に使うためのタイムマネジメントを説く池田貴将著「24時間すべてを自分のために使うタイムマネジメント大全」をご紹介します。コミュニケーションデザインや企業支援のコンサルタントのエキスパートで、書評ブロガーとしても有名な徳本昌大氏の書評でナビゲートいたします。
24時間すべてを自分のために使うタイムマネジメント大全
著者:池田貴将(大和書房)
目次
本書の要約
南カリフォルニア大学の心理学教授ウェンディ・ウッドは、人の行動のうち60%は無自覚であることを明らかにしています。無駄なエネルギーを使わない無自覚な行動は、脳の省エネに繋がるそうです。であるなら、日常繰り返し行う重要なことにはルーティンを決めてしまえば、より大切なことに最大限、脳のエネルギーを使えることになります。行動のルーティン化は、心の充足を図るためにも重要なファクターです。
すべきことのルーティン化で脳の省エネを!
よけいなことで脳を忙しくさせないようにするには、必要なことはルーティンを決めてしまって、大切なことに脳のエネルギーをとっておいた方がいいわけです。
私たちは、無自覚な行動を減らすことができれば、時間を味方にできるようにもなります。特に、人に邪魔されることのない朝と夜の時間帯を有意義に過ごすことで、より充実した人生を送れるようになるのです。
人間の脳の処理能力には限界があるため、私たちは、習慣化された行動であれば意識の裏側の低電力モードを使って行っています。これが脳のショートカット機能です。
研究によれば私たちは1日1100万もの情報を脳で処理しなければいけない状態を生きていますが、そのうち意識的に処理できるのは40のみだそうです。この脳の仕組みを逆手に取り、日々の重要事項をルーティンにし、その日やるべきより大切なことに脳のエネルギーをとっておくようにするのです。
ルーティンで生まれる余裕が偶然を楽しませてくれる
常に余裕をつくり出す ルーティンを決めておいても「偶然」は起こります。英語で「セレンディピティ」と言われる「思いがけぬ幸運な出会いや発見」は、日々の中にたくさんあります。しかしそれも、ある程度の余裕がなければ気づけません。ルーティンを決めるということは、偶然を楽しむためのものでもあるのです。
心理学者で運の研究家のリチャード・ワイズマンは、店の入り口にわざと5ドル札を落とし、運と偶然のチャンスの関係を調べました。すると、事前の調査で「自分は運がいい」と回答した人は、5ドル札に気づき、「自分は運が悪いと思う」と回答した人は、5ドル札に気づきませんでした。
ルーティンを決めておいた方が目の前で起きた偶然の大切さに気づけるという利点があります。それに、もし突発的なイベントや忙しさで生活リズムが乱れても、ルーティンさえ決めておけば、元の生活に戻ることも簡単です。
私は毎朝、書評ブログを書いていますが、日々更新するためには、膨大なインプットが欠かせません。書店やAmazonでの偶然の本との出会いが、私の運を高めてくれます。
本に出会う→ブログでアウトプット→著者や編集者との新たな出会いをデザイン
私はこのルーティンのおかげでネットワークが大きく広がり、よいことに出会える確率が高まっています。
寝る前のルーティンが有効である理由
寝る前の時間は、朝とは別の意味でルーティンが有効です。寝る前にすることは睡眠の質を左右し、翌日の気分や体調にダイレクトにつながるからです。また、意志力が枯渇して誘惑に負けやすい時間帯でもあるため、とるべき行動をルーティン化することで睡眠時間を守ることができます。
睡眠の質を高め、回復力を養う
寝る前に必要なのは、脳をリラックスさせて自然に眠りへと促すような行動です。自分を緊張させないルーティンを生み出し、それを習慣化しましょう。いつも通りのルーティンをすることで、脳は自然とリラックスします。
私は、朝起きた時から眠るまでの隙間時間を読書に費やしていますが、寝る前の読書時間は格別です。熱心な読書家として知られるビル・ゲイツも、寝る前には必ず1時間の読書をしているそうです。
読書には知識を得るという利点はもちろんのこと、ストレスを和らげ、記憶力を向上させる効果があります。2009年のエセックス大学の研究によると、1日わずか6分読書をするだけでもストレスレベルが最大68%も下がることがわかっています。
読書の習慣のある人は、年齢を重ねたときに認知機能の衰えが平均で32%減少したというイギリスの研究報告もあります。つまり、脳力アップにもストレスを下げるにも、大きなメリットがあるのが読書なのです。リラックスするために、私は夜の読書はビジネス書ではなく、小説やエッセーを読むようにしています。
感謝の気持ちが免疫力を向上させる
本書の著者は、ベッドに入ったら1日のうちでよかったことを思い出し、感謝しながら眠ることを習慣にしているそうです。私も読書後に1日を振り返るようにしています。感謝の気持ちを持って、その日に出会った人に感謝の気持ちを伝えることで、1日を気持ちよく終えられます。
ポジティブ心理学の研究によって、感謝するだけで脳からセロトニンやドーパミンなどのホルモン物質が放出され、気分がよくなるのはもちろん、幸福度が上がることかわかっています。私たちは感謝することで自尊心を高め、免疫システムを強化しているのです。結果的に人間関係にもいい影響を与えています。
私は朝のルーティンに感謝日記を書くことを習慣にしています。昨日の感謝を翌朝、言語化することで、朝を気持ちよくスタートでき、朝から書く時間を持つことで、脳を活性化できます。これも、脳の省エネ化と免疫力アップに繋がっているのではないでしょうか。
世界で最も影響力のある女性と称されるオプラ・ウィンフリーも、感謝日記を習慣にしています。
ありがとう日記をつけるといいわ。毎晩、あなたが感謝したことを5つ、リストアップするの。そうすれば、毎日に対する、そして人生に対する、あなたの見方が変わり始める。(オプラ・ウィンフリー)
脳内で感謝の回路が強化されることで、幸福感を維持できます。私は夜時間と朝時間に感謝の時間を持つことで、自分の人生をより豊かにできるようになりました。
徳本氏の著書「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
出典:徳本昌大の書評ブログ!毎日90秒でワクワクな人生をつくる「探池田貴将氏の時間すべてを自分のために使うタイムマネジメント大全の書評」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。