【書評】デジタル・ファースト戦略で事業投資への方向転換を

今、デジタル・ファーストという考え方が注目されています。元々は出版業界の紙媒体を、最初から電子出版形式で提供することに由来しますが、ビジネスでも、デジタル化を優先した業務推進の意味を持たせています。デジタル・ファーストを採用する企業が増えるなかビジネスを勝ち取り生き残るには、ビジネス価値を創造するための方向転換と、そのためのアプローチが重要だと考えられます。

今回ご紹介する書は、オマール・アボッシュ、ポール・ヌーンズ, ラリー・ダウンズ共著の「ピボット・ストラテジー: 未来をつくる経営軸の定め方、動かし方」。未来の経営のあり方は、継続的な事業の分析とイノベーションを核とした賢明なピボット=方向転換により決定付けられるのだそうです。

コミュニケーションデザインや企業支援コンサルタントのエキスパートとしてご活躍の書評ブロガー、徳本昌大氏のナビゲートでお届けします。

ピボット・ストラテジー: 未来をつくる経営軸の定め方、動かし方
著者: オマール・アボッシュ, ポール・ヌーンズ, ラリー・ダウンズ(東洋経済新報社)

本書の要約

テクノロジー主導、絶え間ない関係構築、データ主導型の事業展開、インテリジェントな資産管理、包摂的なアプローチ、新たな人材管理の導入、エコシステムの活用というデジタル・ファースト戦略。これら7つのアプローチを採用することによって、企業は成長を続けられます。

7つの勝利戦略

いまや企業は「デジタル・ファースト戦略」を採用し、戦略立案者の好みではなく、顧客のニーズに最も適した戦略を採用する必要がある。潜在的収益価値を解放する企業は、あらゆる機能・従業員を再配置し、テクノロジー、顧客、ステークホルダー、社会的価値といった核となる資源を、企業全体のポートフォリオとして管理している。単に四半期ごとに業績を測定するのではなく、長期にわたって、本来目指すべき収益を模索している。私たちはデジタル・ファーストのアプローチを総称して、「7つの勝利戦略」と呼んでいる。(オマール・アボッシュ)

賢明なピボットの構築

企業が長期に渡って成長するためには、デジタル・ファースト戦略をとる必要があります。アクセンチュアのCSOだったオマール・アボッシュは自らの体験と多くの成功企業の分析から、「賢明なピボット」というルールを見つけます。

賢明なピボットとは、選択すべき方向転換のこと。製品・顧客・技術など中核資産の最大価値を引き出し、事業投資への方向転換を継続していく戦略です。既存のオペレーションを変革しながらひとつのステージから次のステージへと移行していくことで、市場環境の変化と創造的破壊力のある技術の登場にも即座に対応が可能になる。このようなビジネス価値を創造するアプローチこそが賢明なピボットです。

デジタル・ファーストのアプローチ

著者は、賢明なピボット構築のためには、デジタル・ファーストが有効だと言います。そして、それを実現するための7つの勝利戦略を明らかにしました。

  1. テクノロジー主導
  2. 絶え間ない関係構築
  3. データ主導型の事業展開
  4. インテリジェントな資産管理
  5. 包摂的なアプローチ
  6. 新たな人材管理の導入
  7. エコシステムの活用

テクノロジー主導で経営を行う

「テクノロジー主導」を戦略として採用した企業は、経営者が自ら新しいテクノロジーの採用を推進し、創造プロセスを改善するための新テクノロジーに投資し、外部との安全なコラボレーションを促進するために堅牢なインフラを構築する。他の6つの勝利戦略を機能させるため、自らの組織が新テクノロジー推進のリーダーにならなければならないことを認識している。

新しいテクノロジーを導入して、イノベーションを起こすことができますが、そのためには、デジタル・ファーストの戦略が欠かせません。デジタル・ファースト戦略で、最も優先すべきは、テクノロジー主導で経営を行うことです。

インターネット時代以前に生まれた企業は、より新しい「デジタルネイティブな」競合企業よりも古いテクノロジーを使っています。このテクノロジー負債を抱えた企業は、その上に新しいテクノロジーを継ぎ接ぎすることで乗り切ろうとするため、どんどん競争力を失っていきます。古いシステムがどれほど上手く維持され、更新されたとしても、最新のシステムには勝てないことに経営者は気づくべきです。

絶え間ない関係構築

「絶え間ない関係構築」戦略を採用した企業は、イノベーション段階から顧客と協力し、顧客体験を高める製品やサービスを開発します。企業はデジタル・マーケティングを通じて、顧客に迅速に対応し、顧客が望んでいる製品やサービスを適切なタイミングで提供できるようになります。

「絶え間ない関係構築」のためには、詳細な顧客行動データへのアクセスと、それを理解するための分析ツールが必要だ。またそれ以上に、単に何かを売るのではなく、顧客と長期的な関係を築く必要がある。そして自社と顧客が互いに学び、それに応じて製品やサービスをカスタマイズする必要があるのだ。

  • 詳細な顧客行動データにアクセスし分析する
  • 顧客と長期的な関係を築く
  • 顧客と相互に学び、製品やサービスのカスタマイズに生かす

「絶え間ない関係構築」戦略を採用する企業は、モノを売っているのではなく、経験を売っているのです。

データ主導型の事業展開

「データ主導型の事業展開」を行う企業は、データから得られた知見を基にレコメンデーションを行います。また複数のデータソースを分析し、顧客の行動に影響を与える要素を見極め、将来の需要を予測します。

インテリジェントな資産管理

潜在的収益価値の解放に成功する企業は、ITなどの資産を扱うときに、所有やリース・レンタルのバランスを上手く取る必要があると理解しています。戦略的に資産管理を行うことで、事業規模の急速な拡大や縮小を行い、市場の変化に対応しています。

包摂的なアローチ

「包摂的なアプローチ」戦略を採用する企業は、顧客ニーズをより適切に満たす新しいサービスを開発しています。デジタル・ファーストを実践する企業は、他のパートナーと密接に協力し、より効率的なサプライチェーンを構築。消費者とサプライヤーが潜在的収益価値を解放することを可能にするプラットフォームを提供しています。

新たな人材管理の導入

「新たな人材管理の導入」戦略を採用した企業は、イノベーションの変化を監督し、ジョブローテーションや短期派遣社員、「ギグ」契約を通じて非常に順応性の高い労働力を確保しています。併せて創造的破壊力のあるイノベーション実現のために、小規模で分野横断的なチームをリードできるリーダーを育成しています。

 エコシステムの活用

「エコシステムの活用」戦略を追求する企業は、デジタル技術を活用することで、1回限りの売り買いから継続的なサービス利用に変革しています。外部のエコシステムに積極的に参加したり、開放的なエコシステムを育てたりと、新しいイノベーションをより早く顧客のもとに届けようとしているのです。

潜在的収益価値の解放と効率化

今後、 IoT:Internet of Things(モノのインターネット)が世の中に普及することで、10年以内に多くのものが相互に接続し、インターネットに接続するデジタルデバイスになっていきます。現在のシンプルなIoTアプリケーション(スマート・サーモスタットやプログラマブル照明など)は、製品ライフサイクル全体を通して、製品を構成する部品や原材料のレベルで所在や作動状況、使用状況が追跡可能になるほど拡張されていきます。

スマート化された製品が検知・収集される大量のデータを活用しながら学習し、次第に変化を遂げるため、製品とサービスの境界線はあいまいになると著者は言います。その結果、企業、業界、消費者、社会のすべてで潜在的収益価値が解放され、調達、製造、流通、小売、および顧客サポートの効率を大幅に向上させます。

デジタル・ファーストの7つのアプローチを上手に組み合わせることで、将来の成長を確実なものにできます。経営者はITを軽視するのをやめ、テクノロジー主導の経営を行うべきです。

本書の関連記事はこちらから

徳本氏の著書「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)

出典:徳本昌大の書評ブログ!毎日90秒でワクワクな人生をつくる「デジタル・ファーストの7つの戦略 ピボット・ストラテジー: 未来をつくる経営軸の定め方、動かし方の書評」

この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

徳本昌大
Ewilジャパン取締役COO
ビズライト・テクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
情報経営イノベーション専門職大学【iU】客員教授

投稿者プロフィール
複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。 特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。

現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動するなか、多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施中。

ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。
マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

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