【書評】組織力UP!新規事業を科学する“異能の掛け算”
- 2022/11/25
- 書評

新規事業を成功させるチームのつくり方が明らかになる『異能の掛け算 新規事業のサイエンス』の著者、井上一鷹氏は、新規事業の正体は不確実性であるとの分析に基づき、精神論で語るのではなく科学的な根拠によって成功に近づく方法を提示します。異能の掛け算として構成されたチームが組織のなかでどう落とし込まれていくのか。コミュニケーションデザインや企業支援コンサルタントのエキスパートとして有名な書評ブロガー、徳本昌大氏による書評でご案内いたします。
異能の掛け算 新規事業のサイエンス
井上一鷹(ニューズピックス)
目次
本書の要約
Biz(ビジネス)/Tech(テクノロジー)/Creative(クリエイティブ)といった「異能」領域のメンバーで構成するチームが、新たな価値を創出する時代です。
新規事業を成功させるには、ビジョンやミッション、コンセプトを共有しつつ、この異能な掛け算を行うことによって起こる科学反応が不可欠です。
そこに、バリューデザイン・シンタックス※のフレームワークを活用することで、新規事業の立ち上げがよりスムーズになるでしょう。
※ 新規事業担当者が自分たちのプロジェクトに最適なプロセスとスキルを独自に診断できるフレームワークのこと(後述あり)。
新規事業の立ち上げ「0→1」を成功に導くチーム論
新規事業で科学すべきは〝異能の掛け算〟である 。
異なる領域のスキルの組み合わせ
新規事業、「0→1」を成功させるためには、Biz(ビジネス)/Tech(テクノロジー)/Creative(クリエイティブ)の異能なチームを構成することが重要になります。
この3つの異なる領域の有能なメンバーを集め、掛け算を行うことで、ビジネスがスピーディに立ち上がるのです。
Biz人材:事業起点で、価値を最大化する持続可能な仕組みをつくる能力者
Tech人材:技術起点で、理想的な価値へのアイデアを実現する能力者
Creative人材:顧客起点で、理想的な体験価値を見いだす能力者
チームの力が新価値を創造する
新たな価値は、1人の天才ではなく、チームで創る時代です。そのチームとは、大事にするモノサシも違えば、プロフェッショナルなスキルも違う、Biz(ビジネス)/Tech(テクノロジー)/Creative(クリエイティブ)の〝異能〟の集まりであるべきです。
私がベンチャーやスタートアップのCEOにアドバイスをする際、COO、CTO、CFO、CMOを揃えることを求めます。
多様なスキルを持ったメンバーを集め、異なる視点で経営に参加することで、レバレッジが効き、新たな価値創造を起こせるようになるからです。
実際、異能の掛け算が行われているチームは、成長のスピードが速く、上場までの時間をより短くすることが可能です。
異能の人材が、〝子供の自由さ〟と〝大人の教養〟をもって、サービスコンセプト・競争戦略・利益構造のデザイン(企画・設計)とプロトタイピング(試作・検証)を繰り返せば、最速で新しい価値を創れる
このように、著者の井上一鷹氏は指摘します。
異能の掛け算3つのステップ
確実性のある成功を積み上げる10→100フェーズに比べ、0→1,1→10フェーズの異なる点は、無数の選択肢の中で正解がわかりづらい「不確実性」が支配しているゲームだということです。
よって、新規事業をスムーズに立ち上げるには、不確実性をいかに下げるかが問われます。
この不確実性を極力なくすために、以下の3つの流れが欠かせません。
①始動する
②無知の知に至る
③確信と確証を得る
子どものように得意なことに夢中になろう!
子供の自由さを持つ人だけが初めに動き、大人の教養を持つことで無知の知に至り、そのチームが異能の掛け算を経て、事業価値の確信と確証を得ていく、という流れになります。
子どものように、好きなこと・得意なことに夢中になれる人が始動でき、大人の教養を持つことで知らなかったことを自覚し、そんな人たちの集まりであるチームだけが異能の掛け算を経て新規事業への確信と確証を得ていけるのです。

出典:本書「異能の掛け算 新規事業のサイエンス」
失敗しても損失が少ない投資規模で創れる小さな価値を定義し、デザイン⇄プロトタイピングを繰り返していくことが重要です。
その前提で踏み切る機会を持つことが、リーダーの必須のスタンスになります。
▶異能のスキルを持ったチームが事業の立ち上げに不可欠であることがよくわかりました。その効果をより十分に発揮させるためのフレームワークについて、次のページでお届けします!