【書評】期待を超える感動体験とマーケットイン思考で「強い組織」をつくる
- 2022/12/27
- 書評
ビジネスシーンでよく聞かれる「付加価値」とは、「重要なもの」という認識はあっても、具体的に付加価値を生み出すためのノウハウや思考の転換方法を知らない方が多いのではないでしょうか。コンサルティング会社を経営されている田尻望氏は独立後、「感動こそが価値の源泉」だと気付くことでビジネスでの成果を挙げ、著書「付加価値のつくりかた」では、生産性を高め、ムダな仕事を減らし、付加価値を生み出す本当に意味のある仕事に集中するためのスキルを分かりやすく解説しています。企業支援のエキスパートとしてご活躍の書評ブロガー、徳本昌大氏が自身の経験も踏まえてナビゲートしてくださいます。
付加価値のつくりかた
田尻望(かんき出版)
目次
本書の要約
組織全体がマーケットイン思考で行動し、付加価値を高めることで組織を強くできるのです。付加価値をつくることは、顧客の期待を超える感動体験を提供することを心掛け、バリューを出す習慣を身に付けるといった、仕事の生産性を高めるためのスキルです。現状維持に甘んじることなく、顧客の期待を絶えず上回る価値を提供することを組織で目指すべきです。
感謝の言葉の数と売上の相関関係
仕事で一番大切なことは付加価値をつくること。
世界40カ国以上の国でモノづくり産業を支える株式会社キーエンスの出身で経営コンサルタントの田尻望氏は、付加価値をつくることの重要性を本書で指摘します。
独立後、直接顧客と触れ合うことで「感動こそが価値の源泉」であることに気づき、顧客の感動に結び付く付加価値を提供することでビジネスで結果を出せるようになったと言います。
成功している企業と成功していない企業の違いは、「付加価値のつくりかた」にあります。
提供するモノ・サービスにお客様の感動を得られるようなプラスとなる価値を付加し感謝の言葉を増やすことができれば、自ずと売上と利益が上がるのです。
私も自身のブログで何度も指摘していますが、顧客体験を高めることが、企業の競争優位性を高めてくれるのです。
その開発は付加価値か?ムダではないか?
日本の家電はプロダクトに無駄な価値を付加することで、顧客離れを起こしました。
顧客体験をアップできない機能をいくら追加しても意味がないのです。
意味のないスペックを高めれば、コストが上がり、成長の源泉である利益を減らしてしまいます。
【付加価値】と【ムダ】の違いを明確にし、ムダな開発に時間を使わないようにすべきです。
顧客に価値を感じてもらえなければ、いくらマーケティングを行なっても商品は売れません。
開発費用、生産コスト、マーケティングコストが無駄になり、下手をすると赤字に陥ります。
「顧客視点」でビジネスを見直す
キーエンスでは、プロダクトアウトではなく「顧客視点(マーケットイン)」でビジネスを行なっています。
・なぜお客さまが買うのか?
・本当にその商品・機能は使われているのか?
・使われたら本当に役に立つのか?
・どんな役に立つのか?
徹底的にこのような顧客視点で突き詰めていきます。
私も広告会社時代にこのマーケットイン思考を上司やパートナー、クライアントから叩き込まれました。
あくまでもユーザーの立場で考えてみる。
この習慣を身につけたことが、今の私の資産になっています。
社外取締役やアドバイザーをしている企業とのミーティングでも、この4つの質問を問いかけることで、正しい答えが見つかるようになります。
顧客対話と「永遠のベータ版」でプロダクトを進化
日本企業の新事業・新商品の成功率が低いのは、「仮説レベルで見切り発車してしまうこと」が原因の大半を占めると考えて間違いないでしょう。
そして、この新事業の失敗が、会社全体の利益を激減させているのです。
成長しているベンチャー・スタートアップは、「永遠のベータ版」という考え方での商品開発を通して顧客との対話を続けています。
それは、仮説・プロトタイプをつくり、顧客からのフィードバックを受けながら、自社のプロダクトを進化させ、顧客体験をアップさせることです。
▶提供するモノ・サービスにお客様の感動を付加できる価値こそが大切であり、常に「顧客目線」でビジネスを見つめることの重要性がお分かりいただけたかと思います。次のページでは、より具体的な「付加価値」を生み出す考え方を示してくださいます。