【書評】活発なコミュニケーションで集団的知性を獲得し、仕事を楽しもう

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リモートワークが浸透し働き方が多様化する現代のビジネスパーソンにとって、心身ともに充足できる働き方を見出すことはより重要になっています。仕事に追われる日々から脱却し仕事が面白いと思える日々を送ることは、意外にも、日常の小さな変革で始められるのかもしれません。

今回は、イギリスの「マネジメント・ブック・オブ・ザ・イヤー 2020」最終候補作ともなったブルース・デイズリー著「Google・YouTube・Twitterで働いた僕がまとめた ワークハック大全―仕事がサクサク終わってラクになれる科学的メソッド」をご紹介します。仕事が楽しくなり好きになるための手引書です。

コミュニケーションデザインや企業支援コンサルタントのエキスパートとして有名な書評ブロガー、徳本昌大氏による書評でご案内いたします。

本書の要約

テクノロジーの進化が仕事とプライベートの境目を無くし、ビジネスパーソンに過度のストレスを与えています。心と体が疲弊することで、彼らの創造性を奪っています。著者の30のメソッドを取り入れることで、仕事を楽しいものに変えられ、パフォーマンスをアップできるようになります。

Google・YouTube・Twitterで働いた僕がまとめた ワークハック大全
仕事がサクサク終わってラクになれる科学的メソッド
著者:ブルース・デイズリー(ダイヤモンド社)

労働過多はストレスを生み創造性を奪う

ストレスを感じると、創造性は窓の外から出ていってしまう。
人は過去の成功にしがみつこうとし、新しく何かを創造するのではなく、これまでと同じことを繰り返そうとする。

テクノロジーの進化によって、私たちの働き方は激変しています。対面とリモートとのハイブリットな環境で仕事とプライベートの境目がなくなる中、多くの人がストレスを感じているようです。現代の職場ではストレスが常態化し、ビジネスパーソンの創作行為を妨害しています。

今後もこの動きが加速することは間違いありません。テクノロジーは日々進化し、様々な心理的な悪影響を現代人に与え続けます。インターネットによって常に仕事とつながるようになったことで、私たちは土日も働くようになり、自宅でメールをチェックすることが当たり前になっています。しかし、驚くことに、働く時間が増えたのに、生産性が上がっているという証拠はないのです。

逆に、働きすぎによって、燃え尽きる人も増え、いくつもの調査から多くの人が疲労を感じ、自分を犠牲にしていることが明らかになっています。極端な働き方から体重変化やストレスによる脱毛、パニック発作、睡眠障害を起こす人が増えています。過労の影響で心や体が疲弊し、優秀なビジネスパーソンから創造性を奪っています。

楽しく働くための変革が必要

では、私たちはどうすれば、クリエイティブに生きられるのでしょうか?

本書の著者ブルース・デイズリーはマインドセットを変え、働き方を変えれば、「僕たちはもっとハッピーに働ける!」と考えたのです。著者は楽しく働くための30のメソッドを見つけ、データや調査結果に基づきながら、その効果を説明しています。

著者が提唱するメソッドを取り入れることで、間違いなく自分のパフォーマンスを高められます。実際、ダニエル・ピンクやジャック・ドーシーといった影響力のある人たちも著者のメソッドをレコメンドしています。

労働者の幸福度は生産性に比例する

スマートフォンのアプリを使った数万人を対象にしたイギリスのアンケート調査では、あらゆる行動の中で「仕事をしているとき」の幸福度が2番目に低いことがわかりました。ちなみに一番低かったのは「病気で寝ているとき」で、通勤もまったく楽しくない行為だと見なされています。

仕事で幸せを感じられるようになれば、収入が増えるだけではなく、仕事を長く続けられるようにもなります。科学ではこれを「逆の因果関係」と呼んでいますが、現状では多くの人が仕事を忌み嫌い、生産性を下げています。ウォーリック大学の研究によれば、幸せな労働者の生産性は12パーセントも向上し、不満を抱いている従業員の生産性は10パーセントも低下していたのです。

変化を恐れずよい習慣を身に付けよう!

以前、私は広告会社で働いていましたが、その時の私はこの本に登場する働きすぎの疲弊したビジネスパーソンでした。ストレスフルな環境で働くうちに、アルコールに依存し、睡眠を犠牲にすることで、自らの生産性を下げていたのです。

私は自分を変えるために、13年前に断酒をしました。お酒に浪費していた時間を読書にあて、多くの本で学んだよい習慣(メソッド)を徹底的に実践したのです。その中には本書で紹介されているメソッドもあります。よい習慣を身に付けることで、働き方が変わり、私の人生は明るくなり、幸福度もアップしました。今の自分があるのは、過去の自分が変わろうと決断し、様々なメソッドを実行したおかげだと、当時の自分に感謝しています。

今の私は、仕事が楽しくて楽しくて仕方がありません。好きなことを仕事にし、優秀な人たちと働くことで、多くの刺激を受けています。家族や仲間との時間を充実させ、しっかりと休息をとることで、以前より遥かに創造力が高まっています。日常にメリハリをつけて、楽しく働くことができれば、元アルコール依存症の私のような人間でもクリエイティブに生きられるようになるのです。

幸福度を高める集団的知性とは?

本書の中から、会議で生産性を高める方法を紹介します。「集団的知性」の力を知れば、メンバーの能力を引き出せ、生産性が高まり、結果、メンバーの幸福度をアップできます。

カーネギーメロン大学、MIT、ユニオンカレッジのチームが、会議の参加者には測定可能な「集団的知性」があるかを調査しました。約700人を小グループに分け、思考のさまざまな側面を測定するための課題を与えました。その結果、2つの重要な事実が発見されたのです。

  1. 成績が良かったグループにはすべての課題で良い成績を上げる傾向があり、成績が悪かったグループにはすべての課題で成績が悪い傾向があった。
  2. 個人の知性がグループのパフォーマンスには直接的な影響を与えなかった。

際立って頭の良い人がメンバーに含まれていても、それだけではグループ全体の成功は保証されません。メンバー同士のコミュニケーションの方法が、会議の結果を左右したのです。失敗したグループは、1人か2人のメンバーが主導権を握っていましたが、成功したグループは民主的で、全員が同程度に意見を述べていました。

直感的な能力に勝るのは女性

研究を率いたアニタ・ウィリアムズ・ウーリーは次のように指摘します。

全員が話す機会を得ていたグループの成績は良かったが、1人または限られた数のメンバーのみが発言しているグループでは集団的知性が発揮されていなかった。平等に発言するグループには高い集団的知性が見られた。全員が発言することで多角的な意見が得られ、それに基づいて全員で考察をするからだ。(アニタ・ウィリアムズ・ウーリー)

他者の視線を解釈し、相手の反応を予測し、微妙な手がかりに基づいて他者の考えや感情を察知する「直感的な能力」が会議の結果を左右することもわかりました。この直感的な能力は男性よりも女性のほうが優れています。

集団的知性のテストでは、成績がトップクラスのグループには必ずといっていいほど多くの女性が含まれています。女性が半分以上を占めるグループでは際立ってスコアが高くなり、逆に女性が少数派のときは、男性によって議論から締め出される傾向があるのです。

女性が多数派になると、少数派の男性にも議論に参加しようとする傾向が見られ、ほぼ全員参加の議論ができるようになるとウーリーは言います。つまり、ジェンダー構成が多様でより女性のほうが多いグループに、参加レベルが高くなる傾向があるのです。

コミュニケーションによる共感性が心の安定を図る

ウーリーによるとこの共感的なスキルは、対面の場合だけでなくオンラインでも有効であることも明らかになりました。

オンラインでもオフラインでも、他より良い成績をあげるグループはあった。成績の良いグループにとって最も重要な要素も同じだった。つまり、コミュニケーションが活発で、平等に発言し、相手の感情を読む能力があることだ。(アニタ・ウィリアムズ・ウーリー)

他よりも活発な議論をしているチームは、全員が議論に参加し、お互いに貢献することで、チームによい感情が生まれます。メンバーがポジティブな状態にあり、心理的安定性を味わうことで、よりよい議論ができるようになります。

全員参加から生まれる集団的知性

良い会議とは全員が参加する会議で、お互いの貢献が欠かせません。それを達成できないのなら、その会議は開催する価値がなく、時間の無駄でしかないのです。

リーダーが「集団的知性」のある会議を行い、無駄な会議をなくすことで、メンバーの残業時間を減らすだけでなく、社員のやる気を引き出せます。生産性の高い会議のみを行うことで、結果、社員のパフォーマンスや幸福度をアップできるのです。

 

徳本氏の著書「「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)」

出典:徳本昌大の書評ブログ!毎日90秒でワクワクな人生をつくる「ブルース・デイズリーのGoogle・YouTube・Twitterで働いた僕がまとめた ワークハック大全――仕事がサクサク終わってラクになれる科学的メソッドの書評」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

徳本昌大
Ewilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
iU 情報経営イノベーション専門職大学特任教授

投稿者プロフィール
複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。
現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動するなか、多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施中。
ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。
マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

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