【書評】コミュニティでつながろう!共に繁栄する関係の構築へ

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コミュニティの作り方

著者は世界中の多様なコミュニティでコンサルティングを行うなかで、企業やリーダーが最善のコミュニティを構築するために、以下の6つの方法があることを明らかにしました。

  • 情報を共有する
  • 人を解き放つ  
  • 尊重し合える環境を作る
  • 率直さを実践する 
  • 意義を与える  
  • メンバーの幸福度を高める

1人で病気について悩みがちな患者は、集団診療というコミュニティに加わることで孤独感を覚えずにすみ、同じ問題を抱えた人々の経験談を聞くことができます。
患者たちは互いに「大丈夫、あなたならできる。私ができたんだから、あなただってハードルを越えられる」と声を掛け合います。
それは医師から言われるより、ずっと患者の心に響くと言います。

「シスコ・システムズ」のケース

IT企業のシスコ・システムズ※2 は、従業員が率先する「アワー・ピープル・ディール」という協働的なカルチャーを構築することによって成長を維持し続けています。
従業員から収集した情報を元に、「会社が提供するもの」と「従業員に期待すること」を明確にし、「責任の共有」を確立するものです。
ここから同社は、従業員と会社が互いに恩恵を受け合う双方向の関係性を生み出しました。

シスコには、従業員の好き嫌いの感情を用いたフィードバック方法があります。
年に1度、従業員が自分たちの仕事、リーダー、チーム、会社の好きな点と嫌いな点に関するフィードバックをマネージャーに報告するのです。

従業員がどのように苦しんでいるかがわかれば、リーダーはより迅速に解決策や援助を提供できるでしょう。
また、好き嫌いを明らかにすることでリーダーと従業員はお互いをさらに知ることができ、リーダーがスタッフの強みやスキルを生かせるようになることで、信頼感とコミュニティの感覚が育まれます。
日常的に自らの強みを活用できている従業員は、より生産的でクリエイティブであり、仕事へのエンゲージメントも6倍高いことがわかっています。

※2 『フォーチュン』誌で発表されている「働きがいのある会社ベスト100」に毎年ランクインされている数少ない企業の1つ。2019年、2020年と「World`s Best Workplaces(世界の最高の職場)」で第1位に輝く。

失敗を許し安心できる環境づくり

コミュニティ内の恐怖心を軽減させるためには、「ミスして当然」とする認識を広く浸透させることです。

失敗への恐怖心を排除することで、組織のなかで自分の考えや気持ちを誰にでも安心して発言できる心理的安全性を育むことができます。
失敗を恐れなくてもよい会社で働いている従業員は、自由にリスクに挑むことができ、失敗した際にも辱めを受けずにすみます。
失敗を許容する文化が、従業員と会社を成功に導くのです。

グーグルの場合

グーグルでは、同じミスを防ぐために情報共有システムを導入して、

  • 何があったのか
  • なぜ起こったのか
  • どんな影響があったか
  • どうやって沈静化したか
  • 同じミスを防ぐ為に何をすべきか

を文書にしています。

仲間のミスから学ぶため、以下の4つの点を重視し、失敗体験の詳細について情報共有するのです。

  • どんなことが効果的だったか?
  • どんなことが効果的ではなかったか?
  • 運に助けられたのはどの部分か?
  • 次はどんな違うやり方ができるか?

ここから従業員は学びと成長を得られます。

失敗を挫折ではなく、成長と発展のためのチャンスと捉えることで、従業員のマインドセットをポジティブにできます。

敬意と信頼が生む強い絆

「尊敬」はグループに魔法のような効果を発揮します。
著者とトニー・シュワルツは世界中の従業員2万人を対象にした研究を行いましたが、従業員の仕事の成果に、敬意ほど大きな影響を及ぼす行為はないということが明らかになりました。
リーダーから尊重されている従業員は、健康と幸福度が56%、信頼と安全が1.72倍、仕事に対する喜びと満足が89%、集中力が92%高いと報告されています。
リーダーから尊重されているメンバーが組織に留まる確率は、そうでない人たちより1.1倍高くなっていました。

また、敬意はよい関係性構築に明らかな影響を及ぼします。
リーダーから尊重されていると答えた人たちは、エンゲージメントが55%高くなっていたのです。
信頼と敬意に裏打ちされた心理的安全性をより強く感じている従業員は、仲間のアイデアを活用する傾向が強く、会社に多くの利益をもたらし、組織への定着率も高まっていました。

マリオットホテルのケース

従業員を大切にしなさい。そうすれば彼らはお客様を大切にし、お客様はまた戻って来てくれるでしょう。(J・ウィラード・マリオット)

マリオットホテルの創業者のJ・ウィラード・マリオットが作り出したカルチャーが、現在も同社を成長させる一因になっています。
同社では、創業者の「従業員を大切にする」という言葉に込められた思いが今も理念として浸透しています。

意識すべきは従業員のウェルビーイング

創業者の信念に基づき、マリオットとその経営陣は従業員のウェルビーイング(健康と幸福)を最優先しています。
結果、より良いサービスの提供がなされ、顧客の満足度、そして利益を向上させています。
マリオットのデータでは、従業員のエンゲージメントが高いホテルほど、財務上高い成果が出ているとのことです。

マリオットは、従業員のウェルビーイング向上のために従業員同士を結び付ける、以下のプログラムを導入しています。

  1. ハピネス・ヒーロー・カード ⇒ 同僚のスキルから仕事のやり方まで、何かしらを認定するもの
  2. バディ・アップ ⇒ チームビルディングのためのエクササイズ
  3. オン・ザ・メンド ⇒ 気分や体調が優れない人に解決策を提供するもの
  4. ハイ・ファイブ・フライデー ⇒ その週にあった「最高の瞬間」を90秒でチームに共有すること

さらに、社会における会社の役割として、多くのホテルが、自分たちのコミュニティの地域に根ざしたプロジェクトに取り組んでいます。
コミュニティでのつながりが感じられることによって私たち人間にとって不可欠な帰属意識が満たされ、共に繁栄する関係に高めていくことができると著者は教えてくれています。
ぜひ、組織や集合体のなかで安心できるコミュニティを醸成し、幸福な個人の集まりとしてコミュニティファーストのビジネスを成功に導きましょう。

徳本氏の著書「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)

出典:Think COMMUNITY「つながり」こそ最強の生存戦略である(クリスティーン・ポラス)の書評
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

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徳本昌大
Ewilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
iU 情報経営イノベーション専門職大学特任教授

投稿者プロフィール
複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。
現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動するなか、多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施中。
ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。
マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

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