企業理念の継承こそが未来を繋ぐ架け橋となる(後編)

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地域創生の場作りが農業の未来を支える

カクイチA-SITE公式サイトより

鈴木氏――他にも、リノベーションした新分野事業がありますか。

田中氏――この数年、従来の物置販売スペースを、多くの人が集まり情報が行きかうコミュニティスペースとしてリニューアルしています。
Agriculture(農業)Aqua(水)建築(Architecture)の情報拠点になるべく、A-SITEと名付け、現在、全国67か所あるA-SITEを、地域の農家と地元の方々を結ぶ場として、マルシェや勉強会など地域に根差した活動を通して、様々な情報の発信の場として展開しています。

A-SITEは、素材や⼈、歴史に触れ、想像し、創造して楽しむ場
カクイチA-SITE公式サイトより

A-SITEは販売店ではありません。
地域の農家と地元の方々の出会いと縁を結ぶ場所、心を繋ぐプラットフォームの場です。
そこには、ホテル経営で培ったノウハウでもある、居心地の良い空間と、場の提供を目指しています。
日本の農業は、次世代が夢を持たない限り、未来はありません。
若い人たちが農業に参入し、農業にイノベーションを起こす場として、A-SITEが地域ベンチャーの発信拠点になればと願っております。

感性を信じて学びを得よう!

鈴木氏――田中さんの今後の抱負をお聞かせください。

田中氏――日本企業の多くは、エビデンスがあるか否か、有名知識人が提唱しているかなど、過去を分析して自分たちを納得させ、論理的に方向性を導き出す「大人の視点」です。
しかし私たちは、未来から逆算して面白いものか、夢中になれるか、人を動かす魅力があるかという視点で直感的・感性的に考え、例えリスクがあっても必ず学ぶものがあると捉え、何度もチャレンジを繰り返すという「子どもの視点」を心がけてきました。
勿論、創業から135年の間に様々な試練、困難もありましたが、その都度、子どもの視点で見直すことで、複雑化していた問題を簡素化し、解決してきたように感じます。

そしてもう一つ大切なことは、135年の重みがあるからこそ勢いや流れに上手に乗ること。
そうしない限り、伝統や老舗には重みがあるため沈んでしまいます。

正解も定石もない時代だと言われていますが、自然と共生したいと願う、農耕民族の日本人の原点は変わりません。
新たなテクノロジーを活用しながら「農業で日本を元気にする」という理念を未来に繋げていく。
それこそ、私たちにしか出来ない事業です。

よい仕事をする、よろこんでいただく。
そのくりかえし、くりかえし。

先代からのこの言葉こそ、次の世代に私が継承していくものだと思っております。

鈴木氏――素晴らしいですね!田中さんのこれからに期待しています。ありがとうございました。

本稿「企業理念の継承こそが未来を繋ぐ架け橋となる」の前編はこちらから

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田中離有
株式会社カクイチ 代表取締役社長

投稿者プロフィール
1962年、長野県生まれ。慶応義塾大学商学部卒。1990年、米国ジョージタウン大学でMBA取得。
株式会社カクイチに入社。2001年、同社代表取締役副社長、2014年、同社5代目として代表取締役社長に就任。カクイチ建材工業(株)・(株)カクイチ製作所・(株)岩深水・(株)シリカライム・アンシェントホテル浅間軽井沢・(株)アクアソリューション・稲栄総業(株)・SGDsファイナンス㈱の代表取締役も務める。
カクイチは、1886年(明治19年)創業の老舗企業。ハウスガレージ・樹脂ホース・鉄鋼資材卸業・太陽光発電事業・ミネラルウォーター事業・ホテル事業・内装材事業・農業改善事業の8事業で、11のグループ会社を運営する。

鈴木道也
鈴木道也会計事務所 一般社団法人数理暦学協会 協会理事長

投稿者プロフィール
経営コンサルタント、税理士(国内、国際税務)。
1956年生まれ早稲田大学卒、米アリゾナ州立大学サンダーバード経営大学院にてMBA取得。
世界最大化粧品会社AVONニューヨークのPACIFIC MARK責任者を務め帰国後、多数の顧問会社の税務顧問、経営指導行う。
現在はマレーシア、シンガポールを中心に自らの直接投資経験で得た実践的知識を基に、海外投資コンサルタントとしても活躍。
18年前より注目した華僑の人物解析学の最高峰「算命学」、孫氏の兵法にもある人心掌握術など、アジア富裕層ビジネスメソッド「干支暦学」を活用したコンサルティング人材養成にも力を入れる。

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