
経産省がデジタル社会の実現のために推し進めるDXは、企業の競争力維持・強化を目的にデータとデジタル技術の活用を促し、企業文化の変革を目指すものです。
中小企業は、コロナ禍を経て自社のビジネスをどのように変革させていくか経営戦略の方向性を定め、DXの展開を求められています。
経営者はDXをどう捉え、何に取り組めば良いのでしょう。
ITシステムが大きな課題となるなか、ワークフローによるファースト DX を推進する株式会社エイトレッドと 2 代目経営者を中心に中小企業をサポートする、2 代目お坊ちゃん社長の会が協業し、『今さら聞けない!?超かんたん DX 経営』をコンセプトに、中小企業向けのユーザーコミュニティを開設。
DX取組事例や成功事例を共有し、多くの中小企業に気づきときっかけを提供していくことが発表されました。
今回は、Z-ENインタビューもある、京南オートサービス㈱田澤社長が代表理事を務める「2代目お坊ちゃん社長の会」の座談会の模様をお届けします。
2代目社長4名が、先代から受け継いだ従来型の組織体制を、試行錯誤しながらDX化し変革を行う過程を語って頂きました。
DX化に悩んでいる経営者の方は必見です!
目次
先代から受け継いだ土台をDXで変革
Z-EN――田澤社長率いる「2代目お坊ちゃん社長の会」は㈱エイトレッドさんとの中小企業DX化推進での協業を発表されましたね。
田澤さん――我々のような2代目、3代目の会社は、常に変革していかないと取り残されてしまいます。
古い体質のまま組織が出来上がっていますから、意識して変えていこうと一生懸命に取り組んで、やっと普通かな?というところです。
若い社長が起業して、ITを駆使しながら急成長していくような会社とはやはり違って、先代から引き継いだベースがある分、良い意味でも悪い意味でもどうしてもやり方が旧態依然としてしまう。
だから、我々後継者は無理をしてでも新しいことにチャレンジしていかないといけないのです。
その一つとしてのデジタル化は世の中の流れで、生き残りのためには避けて通れません。
ならば、DX化による組織変革を2代目お坊ちゃん社長の会が立ち向かうテーマと捉え、情報共有しながら取り組もうということになりました。
DXって、何やるの?と、具体的な目標やタスクが定まらず悩みを抱える中小企業経営者も多いと思いますが、ファーストステップとして非常にいいと思ったのがワークフロー※でした。
これは、毎日社員が使うものですから浸透しやすいだろうと判断して、ワークフローによるファーストDXを推進するエイトレッドさんとの協業という形になりました。
※ワークフローとは、業務の流れ、もしくは流れを図式化したもの。「ワークフローシステム」は、それらの稟議をはじめとした社内申請等の業務手続き電子化を担う。
それぞれのDX推進
コロナ禍の変革の波に乗りデジタル化を加速
▶株式会社高橋商店の場合
--デジタル化を企業向けに提案するお立場だったと伺いました。今ご自身の会社のなかでDXをどう捉えて、どのような取り組みをされているのですか?
高橋さん――弊社は祖父が創業した会社です。
私は今から16年前にこの会社に入社するのですが、それまで外資系のIT企業で8年間勤務していましたので、IT化やデジタル化には慣れていた方でした。
2005年に今の会社に入った時、手作業が多く属人化したアナログな事業環境を目の当たりにして、すぐにデジタル化を取り入れなければならないと思いました。
しかし、昭和38年創業の会社には古い人が多く、当然のことながらITリテラシーも低いのです。
ですから、いかに古い人たちを大切にしながらDX化を進めていくかを考えるようになりました。
今あるものを大事にしつつ、少しずつ投資して、1人に1台パソコンを支給して、ExcelやWordに慣れてもらい、電子メールを導入してホームページを作って…と少しずつ段階的にデジタル化を推進してきました。
ところが、そうした取り組みの最中にコロナ禍が直撃し、社会全体の変革が課題となり企業にもDX推進が求められるようになりました。そこで我々もその波に乗り、急激にデジタル化に舵を取ることにしました。

創業時の株式会社高橋商店(HPより)
――具体的にはどのようなことをされたのですか?
高橋さん――今は、既存の請求業務や基幹業務のクラウド化を進めているところです。
ガソリンや軽油配達時に現場で使う納品伝票は今まですべて紙だったのですが、伝票管理システムを導入することで、車載したPOS端末を使って現場で数字入力できるようになりました。これにより、今まで紙の伝票を事務所に持ち帰り3人体制で行っていた入力作業をすべてなくすことができる予定です。
同時に経理業務のクラウド化も進めていまして、これから人事給与のクラウド化に着手するところです。
――高橋社長はエイトレッドのワークフローも導入されているのですか。
高橋さん――はい。エイトレッドさんのワークフローを活用して、10月から営業日報も紙からデジタル化しようと動いているところです。
社内の文書や、大事な個人情報になる名刺などもすべてデジタル化して、クラウド上の共有システム内で一元管理できるように取り組んでいます。
これで社内のやり取りがすべてクラウド上でできるようになります。
田澤さん――すごいですね!そこまで急激だとついて来られない人もいますよね?
高橋さん――確かについて来られない人も出ていますが、幸いにもITリテラシーが高い人が何人かいるので、旗振り役になってもらって進めています。
更なるDX化への疑問
▶芝田総合法律事務所の場合
――ありがとうございます。芝田さんのところはいかがですか?
芝田さん――うちの弁護士事務所は父から引き継いで私が2代目になります。
環境問題や廃棄物問題を中心に取り扱うちょっと変わった事務所で、現在弁護士5名と事務職員2名の合計7名が所属しています。
DX化はITに強い内部人材の支援により、スタッフはパソコンさえあればいつでもどこでも自社サーバーにアクセスして仕事ができる環境にあります。
私自身、現状の社内システムに特段の不満はありませんが、クラウドでの管理体制に移行した方がいいなどの意見もあり、何が事務所にとって最適なのかメリットは何なのかわからない状態を解消して、いいものは取り入れていきたいと思っています。

芝田さんと法律事務所職員(HPより)
ITの力で人手不足を解消
▶株式会社アラキ企画の場合
――ありがとうございます。荒木さんのところはいかがですか?
荒木さん――家業に入る2007年まで10年間勤務した信用金庫は、まったく IT化が進まず、すべて手で書き、手で集計するという環境でした。
その後、家業の会社に入ってみたら、信用金庫時代と同様にIT化が遅れていて、Excelすら使っていない状況でした。
業務は煩雑で量も多く、私自身外に出ることもできない状況を人に相談したところ、某グループウエアを紹介されて2011年に導入しました。
社内コミュニケーションが取れるようにするところから少しずつ進めて今年で10年が経過し、今では社員みんなが使いこなせるようになっています。
すべての情報をシステム上で共有でき、ワークフローのシステムも使いながら、業務の一元化と簡素化ができて良かったと思っています。
その他、ゴルフ練習場の貸しボールの機械を3年前にすべてシステム化して、売上金に手を触れることなくデータ化できる仕組みを取り入れました。
これでデータ入力の事務作業が軽減され、人手不足に悩むこともなくなったと思っていたのですが、実はちょうど今、システムと機械にエラーが多発して、今まで以上に労力が掛かるという事態に陥っています(笑)
これが解消すれば、業務の簡素化が大分進むことになります。
他にも人事労務のソフトを入れたり、社内サーバーを入れてVPN接続できるようにと進めているので、残る課題は今のシステムエラーを直すことと経理関係です。
領収書などの紙保存をやめてなるべくペーパーレス化し、クラウドに保管できるようにすることもこれからの課題ですね。

アラキ企画が運営するゴルフ練習場ガーデン藤ヶ谷ゴルフレンジ(HPより)
――2022年1月以降、電子帳簿保存法の改正で電子帳簿での保存が取り組みやすくなることも追い風ですね。
荒木さん――そうですね。
OCRで読み込んだスキャナ保存も税務署長の事前承認制度が廃止されたり、社内チェックや定期検査が不要になるようなので、改正後は一気にペーパーレスに移行したいと思っております。
この続きは「DX化を社内に浸透させるのは経営者のITリテラシー」でお届けします。お楽しみに