コロナ禍を通して見えた地方創生と農業への期待感

日本は少子高齢化が急速に進行し、人口減少社会が様々な制度に変革を迫っています。読売広告社相談役の中田安則さんは、多様で変化が激しい時代において、長きに亘り広告業界の向上・発展に寄与してこられました。㈱THE CO(地方創生プロデュース会社)への参加を機に、コロナ禍収束後の姿、地方創生における農業への期待について伺いました。

顧客に長く向き合い、時代の要請に応えてきた

Z-EN— 大学生のころは学生運動が盛んでしたが、就職活動に影響しませんでしたか?

中田安則氏(以下、中田氏)-学生運動は、大学に入学したときに始まりましたよ。1年生の秋に大きな封鎖をやって、2年生の途中ぐらいまで休校でした。それより、映画研究会の合宿で千葉の岩井海岸に行っていたとき、母から「よど号事件をテレビで報道していて、中田って名前でていたけどお前じゃないよね」って電話がかかってきました。「いや、私はここに居ますから」って答えてね、よど号事件のほうが影響あったかもしれません(笑)。

就職活動のときは複数の会社から内定をもらいましたが、父の勧めもあって読売広告社に入社を決めました。

— 入社されてから、どのような仕事に携わりましたか?

中田氏-読売広告社は当時、新聞の案内広告という、人の募集をやる広告を中心にやっていました。私は、入社して4年目ぐらいから大手不動産会社を担当しまして、それを社長になる直前までやっていました。不動産関連事業は、会社独自の強みになったと思います。

— 開発プロジェクトなどは長期に及びますが、どれくらいの期間関わるのですか?

中田氏-一番長かったのは横浜の都市開発事業で、区画整理から始まって最終的に18年関わりました。提案書はプレゼンですから、エージェンシーが作った方がお客様に説明しやすいのです。結局、更地から始まって、お客様に渡した後の管理まで関わることになります。

読売広告社相談役 中田安則氏 Z-EN編集部撮影

強みをつくり、多様で変化の激しい時代を乗り越える

— 社長のご経験が長いですね

中田氏-私は取締役の期間が短くて、社長を9年間務めました。平取が1年、常務が1年、社長が9年、会長が2年です。執行役員は2年しかやっていません。13年の役員生活の中には、リーマンショックや東日災大震災がありました。

— 広告業界にとっても大変な時期ではありませんでしたか?

中田氏-生活者のメディア環境が多様化して、コンサル会社から商社まで、競合がどんどん増えています。我々は、デジタル広告ビジネスの統合的な展開を図る会社を設立するなどして、多様で変化の激しいインターネット時代での足場を強化していきました。

— THE COに監査役として参画されますが。

中田氏-不動産関連の事業に長く関わってきた経験からいうと、街づくりに関しては、その地方の基本構造を変えたら駄目ですね。ローカライズは地域の特性に応じたもののみにすることです。THE COの基本モデルは生活者の衣食住を中心に据えていて、単なるエリアマーケティングにとどまらず、商業施設のプロデュースまで提案できるようなメンバーで構成されているところが期待できますね。

コロナ禍でテレワーク、リモートワークが定着して地方に移住する人が増えるという話を聞きますが、企業が研究所を地方に造り、東京と同じ給料で現地の人を雇用するくらいしないと分散化したとは言えないでしょう。ベッドタウンの延長には地方創生はないと思います。

コロナ禍を通して見る集中と分散、地方創生と農業

— 地方創生にご興味をお持ちのようですね。

中田氏-廃校になった小学校をコミュニティのハブとして活用する動きも活発ですね。コワーキングスペースや宿泊施設、レストラン、養殖・食品加工施設など様々あります。個人的には野菜や茸(きのこ)の栽培をやったら面白いのではないかと思います。茸は温度管理をちゃんとやればいくらでも育つから、希少な茸の栽培やブランド化すれば地場産業としても期待できます。THE COの事業構想にも林業と茸栽培がありますよね。もともと学校なので、教育施設としての利用が多いのですが、農業の学校をやったらどうですか。食料は生活の基本です。しかし、農業をやるには農地法の改正が必要ですね。

— 自治体との連携が重要になりますでしょうか。

中田氏-日本の少子高齢化は、諸外国に例をみないスピードで進行しています。人口減少と超高齢化による産業活力の低下、市民のつながりの低下が現実のものとなって、課題解決のために地方自治体では様々な取り組みが行われています。例えば、山間部に居住しているなど、移動に困難を抱える高齢者に近くに集まって生活してもらうようなコンパクトシティ構想があります。町内で使用するエネルギーは町内でまかなうなど、地域エネルギー資源の未活用問題も同時に解決する試みです。付加価値をつけて課題解決する地方創生は、産学の力を活用した自治体とのつながりを作ることが大切でしょうね。

若者や企業へ期待すること

— 最後に若者や企業へ期待することはございますか?

中田氏-課題先進国と言われる日本で、多様で変化が激しい時代を生きています。リーマンショックのときも東日本大震災の時も社長を務めていましたが、その時よりも今は先行きが見えません。不安だと思います。しかし、いま住んでいる地域で幸せに暮らすために必要な、解決すべき課題を見つけられるよう、生活者の視点をしっかり持って欲しいですね。コロナ禍が収束した未来の姿、集中と分散の本質が見えてくるのではないでしょうか。

中田安則
読売広告社 相談役

投稿者プロフィール
1972年、上智大学法学部卒業、株式会社読売広告社入社。執行役員第1営業本部長、取締役執行役員、取締役常務執行役員等を経て、2007年、代表取締役社長、2016年、代表取締役会長に就任。2007年には、博報堂DYホールディングスの取締役も兼務し、日本広告業協会理事に就任。2017年、第52回吉田秀雄記念賞(個人賞)を受賞。

吉田秀雄記念賞:広告業界の近代組織化と質的向上に尽力して、今日の広告産業を築き上げた吉田秀雄(電通・元社長)氏の功労をたたえて日本広告業協会により制定された。広告業界の向上・発展に寄与した人物を表彰する。

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