M&Aは実行してからがスタート、重要なのはPMI(統合後)実務

M&Aのゴールは契約実行日と思われていますが、実はそこがスタート日です。実行後の統合業務はPMI(※)と言われ、M&Aが普及するにつれて最重要ポイントと認識されつつあります。

買手のM&A担当者として、ある日突然M&Aに関与し、老舗企業の代表取締役会長として事業拡大に邁進している株式会社月刊総務 代表取締役会長の  阿保おかやす 晴 彦さんにその経緯と成功の秘訣をお聞きしました。

※Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)M&A成立後に統合効果を最大化するためのプロセス。経営面、業務面、意識面で行っていく。

Z-EN――御社が発行する「月刊総務」は間もなく720号を突破する老舗の総務専門誌だと伺いました。

阿保晴彦氏(以下、阿保氏)――はい。弊社は1963年創業で58年の歴史を持ちます。日本で唯一の総務・人事部門専門誌『月刊総務』の発行を行っています。

Z-EN撮影 株式会社月刊総務 代表取締役会長の 阿保おかやす 晴 彦 氏

――58年の歴史を持つ総務部門専門紙ですか!経済・社会の激変の中、総務の在り方や価値の変化も相当なものでしょうね。

阿保氏――そうですね。コロナを契機に働き方の変化だけでなく、管理部門のIT化、効率化やDX化、それに伴う規程作成など、期待される役割はどんどん大きくなっています。変化に対応するために、社内外の人脈を使って最新情報を収集し発信し続ける。総務部門の対応力が、従業員のモチベーションを変え、企業の労働生産性をも左右するようになっていますね。

――月刊総務は、2018年に㈱一貫堂さんに事業承継されていますね。阿保さんは買収後に着いたプロ経営者と伺っています。

阿保氏――はい。月刊総務は2018年に(株)一貫堂グループに事業譲渡され、今はグループ会社になっています。私は、高校卒業後に岐阜県の製版会社に勤めました。入社まもなく、製版業という業態がなくなりかけており、グループ合同での新規事業に参画し、新規事業の立ち上げや業態転換を行いました。事業が軌道に乗った頃に新しいステージでのチャレンジをしたいと思い転職をしました。その時の転職先が今の一貫堂です。

その後東京で一貫堂の仕事をしながら、週末は岐阜で過ごすというデュアルライフを15年間続けています。

一貫堂代表の長屋はビジョナリストで先進的な考えを持っているので、現場と意見が乖離することもたびたびあります。私は長屋の言っていることをまずは受け入れ、解釈して0→1に具体的に組み立てていくというフォロワーシップ(リーダーシップではない)を実行しているうちに、その考え方が自分の中に落ちていきました。今はスポークスマンとして管理業務をすべてやる立場です。

長屋イズムの継承をすることが会社の存続につながる。そして、理念だけでなく、今会社が一年毎にスクラップ&ビルドをやっているその社風を存続させる。この先、私が承継しても10年でやめると言っています。創業者ではない者が、創業者の想いをどこまで繋いでいけるのか?もしかすると、どこかで私物化が起きるかもしれない。事業承継のサイクルを5~10年と短くしていけば、私物化を避け社会的意義のある会社としてバトンを繋いでいくことができるだろうと思っています。

――もはや経営戦略を考える立場になってきているということですか?

阿保氏――はい。月刊総務では、2018年頃より「戦略総務」と言う言葉を使用しています。企業の目的や目標を達成するために会社の仕組みなどを改善していくことに、総務の在り方を置いています。環境の変化や従業員のニーズを吸い上げ、創造性と戦略をもって経営陣に提案し、経営と従業員を繋いでいく立場になる総務には、今大変注目が集まっています。

――御社では総務部門にどのような情報を発信しているのですか?

阿保氏――月刊誌『月刊総務』のみならずオンラインメディア、セミナー、サロンを通じて、総務業務の考え方、最新情報、有用なサービスを紹介しています。また、総務顧問サービスやコンサルティングによる総務業務相談、プロジェクトサポートも行っています。

Z-EN撮影

――月刊総務を事業承継することは一貫堂の長屋社長が決められたのですか?

阿保氏――はい。買うと言われたときは社員一同「え??」という感じでした。一貫堂の主軸業務は文具通信販売ですから、出版業を買ってどうするのか?と。ブランドと時間を買うということで、利益が上がる事業であれば、それを維持できればいいかな?と最初は思っていました。DDの時は利益確定を心配していましたね。M&A成約から2年で代表取締役会長に就任しました。怒涛の2年でしたね。

――M&Aの実務は、どのように行われたのですか?

阿保氏――財務面では弊社の顧問税理士と進めましたが、実行後にキーマンの方々とうまくやれるかがポイントと感じていたので、人任せにせずに主体的に絡んでいきました。いきなり100%譲渡ではなく、新設法人をつくり段階的に移行するソフトランディング方式を採用し1年後に完全譲渡となるスキームを採用しました。歴史ある会社でしたので、スタッフ、出版取次、様々な関係者の理解を得るために良い選択だったと思います。

――買収してからは順調だったのですか?

阿保氏――買収後に、心配なことが的中しました。譲渡後2年目の決算では予定の利益を実現できませんでした。それでも、キーマンと経営戦略についてミーティングを重ねていたので、いくつかの手は打っていました。そんな矢先、コロナの影響で企業の総務部門が否が応でも変化への対応を求められたことで、弊社のコンサルティングや情報セミナーなどを有益だと感じてくださる方が増えていったんです。3期目は予定利益が2倍を超えるまでになりました。

――コロナがいろいろな意味で契機になったわけですね。

阿保氏――そうですね。より総務部門に寄り添い有益なコンテンツを増やそうと、コロナ禍でのパンデミック対策特集などを組んで配信を試みたことが、オンライン会員を増やすことに繋がりました。今までは情報収集程度だった受け手側も、自ら積極的に情報を取りに来てくれているように感じます。

今まで行っていた年2回のリアルセミナーも、オンラインになったことで会場手配などの準備や参加人数の制限の必要もなくなったため、セミナー回数、参加人数ともに増やし、より月刊総務のオンラインコミュニティを身近に感じて頂けるようになったと、会員の皆さまの反応から感じています。

出典:株式会社月刊総務

――月刊総務は、今後どのような方向でやっていこうと思われていますか?

阿保氏――総務部門は戦略的になってきていますが、雑務も当然あります。これらは、ベンチャーや外資系企業などでは、コーポレートサービスという呼び名になって外注の対象になっている。総務の業務は二分されてきているのです。経営企画も人事も元をたどれば総務。総務がどう変化していくか?環境の変化も見据えて、総務の役割を価値あるものにしていくのが月刊総務の役割でしょうね。そのためにも、ニーズを先導するコンテンツを世の中に発信し続ける。その仕組みを構築していくことが、私たちの価値だと思っています。

阿保晴彦
株式会社月刊総務 代表取締役会長

投稿者プロフィール
日本で唯一の総務・人事部門専門誌『月刊総務』の発行
バックオフィス業務の「困った」を解決する「月刊総務オンライン」の運営
「月刊総務ウェビナー」の主催、総務を営業する会社向けのコンサルティングなど、会社買収後今までになかった企画を次々と打ち出す。
名門県立岐阜高校野球部では副主将を務め、今もバドミントンを趣味とするスポーツマン。

関連記事

ピックアップ記事

  1. 経営者が突然倒れたときに会社をどうするのか!?この問題がふと頭をよぎった経験のある方は少なくないでし…
  2. 大企業だけでなく、中小企業、個人も含めたM&Aの業界はここ数年で激変しています。M&…
  3. Z-EN読者のなかでも、フランチャイズ本部を運営してみたいと思われる経営者の方は多いかと思います。今…
ページ上部へ戻る