社長のしくじりラボ【座談会】失敗から学ぶべきポイントを伝授!
- 2024/8/20
- 経営全般
社長がしくじった経験から一定の法則を導き出し、それに学ぶことで成功につなげていこう!との趣旨で開催されている「社長のしくじりラボ」。今回は、3者による座談会の模様をお届けします。
お話しいただいたのは以下の3方です(敬称略)。
目次
M&Aアドバイザー 齋藤由紀夫(つながりバンク代表)
齋藤由紀夫氏(以下、由紀夫氏)――『しくじりラボ』は、これまで負のオーラとしてしか認識されていなかった経営者の失敗経験が、経営を紐解く非常に貴重な財産として評価されつつあることを踏まえ、その共通項を分析して共有したい。そして、経営者がもっと前向きに気軽に相談できるような場があればとの思いで始めた研究会です。
私は、M&Aのアドバイザー事業を行うつながりバンクという会社を経営しています。
起業して12年が経過していますが、最初は事業再生を手掛けたものの、精神的な負担が大きくてあまり向いていないと気づき、そういった相談を受けた場合はその道のプロに任せてお願いするといった立場を今はとっています。
また、日本経営士協会の理事もやらせていただいています。
日本経営士協会
1953年設立、70周年を迎えた非常に歴史がある日本経営士協会は、戦後のまさに高度成長期に設立された日本初のコンサルタント団体です。
今、私が担当となって、知的資産経営や健康経営など、主に経済産業省が進めている施策をフォローするようなことをしております。
ここでは、「社長のしくじりラボ推進会」という、社長の失敗を資産と捉えて もっと気軽に周りに相談していこうという活動もおこなっているところです。
経営コンサルタントとして、これからは事業再生が1つの武器になると思いますし、実際、件数もどんどん増えています。
今日はまず、下記「倒産のトレンド」資料を基に、皆さんとデスカッションしていきたいと思います。
倒産企業の推移
これは件数に加え、赤い線が負債総額です。
大型倒産が出ればどんどん増えるのですが、直近の2024年6月まで、負債総額1000万円以上の件数ベースでずっと増えています。
月800件という数字には廃業や休眠を含んでいませんので、 実際はこの何倍もあると思われます。
倒産要因が現在の円安による物価高にあり、それを価格転嫁できない企業が非常に資金繰りに困っているという状況です。
あとは人件費の上昇による社保倒産も増えています。
たくさん正社員を雇っていると社会保険料が大きな負担となって、いつの間にか資金切れに陥る。
さらには、2~3年前まではコロナ融資がメインだった政府の資金繰り支援が再生支援に変わってきたので、再生できそうもないところは支援されないといった方向性の変化もあるでしょう。
それに加え、コロナ融資返済が始まっていて、借り替えなどできない人たちが非常に苦しくなっているのが現況です。
事業譲渡による企業再生
私の仕事では、再生型のM&Aがすごく増えてきています。
今までは、経営が立ちいかなくなると破産や倒産しかなかったのですが、その前に事業として一部でもいいところがあれば買い手を見つけて事業譲渡して資金を投入する。
清算するよりも企業価値が上昇して、関係者の皆さんがハッピーになるスキームです。
今日は八起会の竹花さんに参加いただいています。
46年という非常に長く活動されている団体で、竹花さんは、経営者の悩みを聞いてそれを法則化するようなことをやられている方です。
よろしくお願いします。
八起会代表 竹花利明(プラスソフト代表)
竹花利明氏(以下、竹花氏)――私は八起会の代表をしております。
八起会は、1978年、昭和53年に、会長である野口誠一が創設した会です。
できたばかりの頃は倒産者が 互いに寄り添って助け合う、倒産者の会でした。
当時、会社が倒産すると保険金を使って借金を返そうとする経営者が非常に多く、 経営者の自殺が多かった時期がありました。
八起会設立の1年前に野口会長ご自身も倒産されたんですが、仮に倒産したとしても自殺することはないと会長自身が強い思いを抱かれ、自殺しないように倒産者で助け合おうという趣旨で、八起会を発足しております。
私は、1999年にプラスソフトという会社を設立したのですが、設立後は経営に漠然とした不安があり、野口会長に相談して会員にしていただきました。
それから4年後に八起会の世話人に就任し、その2年後から、八起会のホームページを作成しています。
ところが、2016年の2月に野口会長が突然逝去され、会をやめようという声もあったんですが、 結果的に継続することになって、代表世話人に就任いたしました。
私自身は倒産を経験しておりませんので、倒産しない経営を学びましょう!と「不倒会」という活動を始め、毎月15名ぐらいの少人数のグループで経営を学んでいます。
八起会の活動に関しては、実は最初の頃はそれほど熱心な会員ではなかったんですが、何度も出ているうちに、倒産した方々のお話をたくさん聞いて、 いかに倒産が怖いもので危機感を持っていなければいけないか、といったことを心に刻んで、少しずつ熱心にやるようになりました。
これまでの活動としては、世話人に向けて40周年イベントを開催し、現在は、毎月の 月例会(毎月第3土曜日の18時からZoom)をやっています。
誰でも無料で参加いただけます。
事業再生のスペシャリスト 齋藤慶助(ウィンコンサルティング代表)
由紀夫氏――では次に、齋藤慶助さんに登場いただきます。
あまりこれまで表に出てくることなく現場主義で素晴らしい数の再生案件をやられていて、下記記事でも詳しくご紹介しています。
借金は怖くない!!お金の回収側の知識・知恵を生かし4,300人を救済!
齋藤慶助氏(以下、慶助氏)――私は30歳までノンバンクで、会社法11条に規定される支配人として勤務していました。
支配人登記された者は、行為に基づく紛争、民事裁判について、弁護士さんと同じように裁判活動、訴訟活動ができると規定されているので、お金を借りて払わない方の差し押さえや競売等を毎日、裁判所に通ってやっておりました。
私が29歳の時に、ある建設会社の社長が手形を担保に2600万円貸してほしいとやってきました。
町場の中小企業の手形を担保に2600万円は貸せなかったので、保証人を立てるよう条件を提示したところ、地元で相当不動産を持っている80歳過ぎの方を連れてきて保証人になってくれるとのこと。
調べたらすごい資産家だったので融資をしました。
その2週間後の朝、この社長が自宅で首を吊って病院に運ばれたと連絡がありました。
その時はたまたま助かったんですね。
ところが、その3日後に病院の廊下にタオルを引っかけてこの社長は自殺をしてしまったんです。
社長が亡くなったので会社は倒産。
貸したお金の回収は、保証人の方を相手に民事裁判を起こすことになり、保証した覚えはないなどとぼけていたものの、最終的には観念して認め、全額払ってくれたんです。
そのお金が入金になった日に、たまたま、私の出身地である秋田県から両親が私のところに遊びに来ていて、私は父に、この仕事の一部始終と見事にお金を回収したことを秋田弁で説明したんです。
ところが、話の途中で父の顔が真っ赤になって、いきなり秋田弁で「そういう話は聞きたくない」「そんな仕事はすぐに辞めろ」と、ものすごい剣幕で怒り出したのです。
その時、はたと気づきました。
私がやっていることは法的には問題ないけれども、世間様に威張って言える仕事じゃないんだと。
約4,300人を救済し破産者ゼロ
私は、自分には協調性がないので30歳になったら事業を起こそうと考えていましたので、だったら今までの攻める方の知識、知恵を生かしそれを逆手にとって、借金で困っている人を助ける仕事を始めよう!と決意し、30歳で起業して現在に至っております。
今までの活動は30年間で約4,300人、サラリーマンやOL、個人商店、法人等含めて約4,300人の方にアドバイスして、誰1人自己破産をさせずに、債務の方は合法的に攻略し、 持っている企業の強みを別の角度からお金をかけずに伸ばして会社を再生させるという手法でこの活動をしております。
由紀夫氏――多分、皆さん自己破産をしなくても大丈夫だという感覚がわからない方もいらっしゃると思うんですけど、 私も元は金融機関の回収側だったので、本来自己破産しなくてもいい人たちがいるのを結構見てきました。
どうやって自己破産を回避するのかについて簡単に教えてもらっていいですか。
時間をかけて借金をなくす
慶助氏――借金をなくすには2つ方法があって、1つは、お金をかけて自己破産する方法です。
弁護士に相談に行くと、自己破産しましょうということになり、費用はこれだけかかりますと言われるのがこのパターンです。
実際、自己破産すると官報という新聞に載ることもあって一生破産者というレッテルがつきデメリットが多いので、私は、もう1つの方法として、借金を消すために時効を活用します。
例えばカードローンや消費者金融、銀行からの負債などは、最後に払ったときから 5年間払わないと時効になると法律で定められています。
つまり、最後の支払いから6年目に請求された場合には、 時効じゃないですかと拒否できるわけです。
それでも、場合によっては恐喝や脅迫などを交えて請求してくることもあり裁判になる可能性も高くなるので、その場合は判決から10年と時効も伸びます。
お金をかけずに時間をかけて借金をなくすこの手法を取ることで、自己破産を回避しています。
▶次のページでは、倒産の原因と「倒産する社長の共通項目」「倒産の前触れ」について討論していただきます。