社長のしくじりラボ【座談会】失敗から学ぶべきポイントを伝授!
- 2024/8/20
- 経営全般
目次
倒産の原因
由紀夫氏――ここから、八起会でまとめてくださった資料を元に進めていきたいと思います。
竹花さん、このデータや法則についての説明をお願いします。
竹花氏――実はほぼ40年前に八起会が非常に世間の注目を集め、会員が500人ほど登録していた時代がございました。
会員は、ほぼ全員倒産者です。
そこで、会員である倒産者の社長たちに以下のアンケートを取ったんですね。
―あなたの会社の倒産の原因は何だと思いますか?―
その回答を集計したものが「倒産の原因ベスト10」です。
ですから、ここには倒産した社長の実感が込められています。
由紀夫氏――年数が経っていても、やっぱり人間の本質的なところに関わることですので、倒産の原因としては今もあまり変わっていないのではないかと思います。
慶助さん、この辺どうお考えですか。
慶助氏――私が常日頃見て思っていることが全て網羅されているという印象です。
由紀夫氏――9番のように、数字が苦手だと公言している社長がいますが、これを経営者が言ってしまうと従業員から見下されたり不正が発生しやすくなったりするという傾向が見られますよね。
たとえ苦手でも管理できていればいいんですが、社長が公然と言ってしまうとまずいですよね。
慶助氏――そうですね。
下手すると、8~9割の経営者に簿記などの知識がなく、経常利益などの意味すら分かっていないような人が多いですね。
60歳を過ぎていようと、今はお金をかけずに、youtubeなどを活用すれば簿記3級ぐらいは簡単に取れる時代になっていると思います。
社長、簿記を勉強しましょう! 何かあればいつでもご質問ください!といつも言っています。
倒産する社長の共通項目
由紀夫氏――倒産する社長の共通項目ですが、自己中心的な人や悪いことは全て他人のせいにするというのは、実感として感じますね。
また、確かに人がいい社長は騙されてしまう方が多いです。
これらは人間の本質なので、昔から変わっていない気がします。
竹花さん、いかがですか。
竹花氏――実は野口会長は。倒産する真の原因は経営者の心の甘さだとおっしゃられているんです。
まずは経営者の心から崩れて、いろんなことが悪くなっていく。
売上の不振などは1番最後の現象だから最終的な倒産の原因として見えるのであって、本当は経営者の心の問題が根底にあると。
由紀夫氏――例えばこの 10番の公私混同ですが、社長が100パーセント株主だと財布が一緒になってしまって、会社は自分のものという感覚に陥ってしまいますよね。
そういうケースは結構多いと思います。
竹花氏――私自身も経営者として、会社のお金を使って色々したくなる気持ちも非常によくわかるんですが、 公私混同すると社員の信頼を失ってしまうということを野口会長はおっしゃりたいのだと思います。
由紀夫氏――確かにそうですね。
ちなみに慶助さんが支援する際、基本的には相談に来た方はどなたでも支援されるんですか。
慶助氏――そうですね。
来るものは拒まずの考え方で、相談にいらした方からはお話を聞きます。
今まで、自分の方からお受けできませんと断った人は、 いなかったと思います。
月々のコンサル費が払えないくらい状況が厳しいという人からはお金を取りにくかったという経験はありますね。
由紀夫氏――どういう料金体系で、実際どんなサービスをやられているのですか。
慶助氏――最初、決算書や銀行返済票、自宅の謄本といった資料を持参いただいて、2時間ぐらい検討しますので、 初回3万3000円いただいています。
例えば分かりやすい例だと、コロナ融資金で銀行から保証協会付きで1億円の融資を受け、元利金利で今150万円毎月払っているケースでは、月々1万円で減額和解ができるというスキームがあります。
そうすると、毎月150万円払っていたのが1万円になるわけですから、149万円助かる。
そのうちの10%を手数料としていただいています。
由紀夫氏――サラリーマンなどの個人の方もやるわけですよね。
慶助氏――個人のOLやサラリーマンの方でクレジットカードや消費者金融からの借り入れが150万円くらいある方は、大体毎月 の支払いが8万円くらいです。
そういう方については1万5000円~2万円でアドバイスしています。
幅広いですね。
由紀夫氏――私が事業再生の仕事を辞めたきっかけが、真剣に再生に取り組んでいる間も私に嘘をつく人が多かったことです。
お2人は、裏切られたという経験はないですか。
慶助氏――私の中ではそれは想定の範囲内。
例えば、負債がカード、消費者金融、 銀行で1000万円あるという方も、会うたびに、いや、実は、実はと言って、負債額が大きくなるんです。
私の中では大体1000万円と言われたら、最低でも1.5倍の1500万円の借金があるのだろうと。
こういう想定の上でコンサルを始めます。
竹花氏――借金のある方の心理の1つに、ごまかしたいっていうのがあると思います。
倒産か破産かというところまできて見栄を張るというのも信じられないでしょうが、人は見栄を張りたいものなんですね。
野口会長時代の話では、借金がいくらあるかもわかっていない経営者もいたそうです。
倒産の前触れ
由紀夫氏――次に、倒産の前触れについてですが、これはいろんな意味で役に立つ情報ではないかと思います。
「売り上げ3か月分以上の借金が倒産の前触れ」ということですが、これは業種によっても違いますよね。
竹花氏――おっしゃる通りで、実は野口会長自身も業種によって異なる点を詳細に説明しています。
由紀夫氏――これは、おそらく仕入れがある製造業などが想定されているのではと感じます。
あと、有力社員が退社するというのも、前触れとしてよくありますよね。
火のないところに煙は立たないと言われるように、あそこは危ないなどという噂は予兆のないところには立たないですから。
さらには、倒産の危機にあっても派手な金遣いがやめられない経営者が遊んでいたりするんですが、どうでしょうか。
竹花氏――本当にうまくいっているならいいと思うんですけれども、 先ほど言った、心の甘さが遊び始めると出てくるのと、社員のやる気がなくなってモチベーションが下がるという面もあると思います。
由紀夫氏――8番の「努力しても赤字が続く時」というのは、メンタル的にきついですね。。
業種によっては、業績の不振が外部要因でしかなく、仕方がない時もありますから。
竹花氏――はい、そうですね。
由紀夫氏――9番「夫婦仲が悪くなったとき」は、よくありそうですね。
慶助氏――私が30歳で起業して5年ぐらい経った頃から、再生する人とダメになっていく人との違いがどこにあるのかを考えるようになっていました。
例えば、Aさんは、最初のコンサル料3万3000円を払うのも厳しいような状況でしたが、時間が経つごとにどんどん良くなるんですね。
一方、Bさんの方は、当初 1番多いときで10億円ぐらいの資産を持っていたんですが、時間が経つごとにどんどんお金は減るし、 不動産は差し押さえになる。
最終的に、家族愛があるかないかによって大きく違うんだということに気がついたんです。
3割ぐらいの人は大体奥さんと一緒に相談に来ます。
負債の話や売上げの話などをしている時に、いつも下ばかり見て返事もろくにしない社長が、家族の話、お子さんの話などを振ると、水を得た魚のごとく、すごい勢いで自慢することがあるんです。
そういう人はいいんですよ。
やっぱり家族を愛し、必死になんとか守ろうというものを持っている人は踏ん張りが違うなと感じます。
ところが、お金はあったとしても、 家庭がうまくいっていないとか奥さんと別居中などという人は徐々にダメになっていく傾向があるんですね。
由紀夫氏――なるほど。わかる気がします。
竹花氏――野口誠一会長のお話でも、今慶助さんがおっしゃられたこととほぼ同じことを話されているんですね。
こちらで示した資料も、もう20~30年以上前のものなんです。
本当に人間の本質は変わっていないんですね。
由紀夫氏――14番「自分一人で取り引きしたとき」とは、どういう意味ですか。
竹花氏――多分、社員に相談せずにしているということではないでしょうか。
銀行ではない怪しいところに一人で借金に行くなど、こっそり社長が公言できないような取引を始めたといったような、ちょっと後ろめたいところがあることですね。
▶次のページでは、再起するために必要な心構えと、失敗を繰り返さないための経営者に求められる行動指針について討論していただきます。