経済ウォッチャーはポストコロナ経済をどうみるのか
- 2021/7/14
- インタビュー
コロナ禍で多くの人が旅行はもちろん、仕事や買い物に行くにも出づらくなり、その結果として需要と供給が同時にショックを受ける事態となりました。しかし、アメリカはいち早くワクチン接種を進め、経済回復へ向けて前進しています。アメリカ企業リサーチラボ・加藤千明さんに、今の経済と企業から見たポストコロナの経済について伺いました。
企業の情報収集が日課になった編集者経験
――加藤さんは、大学を卒業後に証券会社に就職されて、その後は東洋経済新報社で編集や執筆のお仕事を長くされていたのですよね。
加藤千明氏(以下、加藤氏)――はい。山一証券で2年半ほど働きました。
シンクタンクを希望していたのですが、業績悪化や証券不祥事が起こり、営業店に異動になりました。
それで東洋経済新報社に転職し、経済統計の月刊誌編集部や電機・化学の業界担当記者、投資信託専門誌編集部などで経験を積みました。
投資信託専門誌の編集部では、投資信託の評価などもしていました。
その後は、自治体情報ハンドブックの編集長やCSR・ESG情報チーム、アメリカ企業の情報ハンドブック編集部(米国会社四季報)などでの26~27年のキャリアがあります。
情報収集、データ収集が日課でしたので、マーケットデータのチェックや統計数値のチェック、新聞記事のチェックなどをしながら「データを軸に考えること」が習慣化されました。
52歳で独立し、今はFPとしても活動しています。
2021年3月に独立したばかりですので、まだまだこれからといったところです。
――noteでは、アメリカ株について情報発信もされていますよね。
加藤氏――コロナで在宅ワークになり、時間に余裕ができたので試しに始めてみました。
友人からは「通好みだよね」「銘柄を選ぶのに参考になる」など、嬉しい言葉もいただいています。
あくまでも分析して情報発信しているだけですので、仲介や推奨はしないスタンスです。
――アメリカ株への投資を検討しても、言葉の壁や情報収集の壁を感じて挫折する人も多いと思います。加藤さんのnoteがきっかけになり、アメリカ株投資を始める人が増えるかもしれませんね。
加藤氏――そんな人が増えてくれると、私も嬉しいです。
コロナによる経済環境の変化
――コロナショックの影響もあり、日本も世界も経済環境が変化していると思いますが、加藤さんはどのようにみられていますか。
加藤氏――新型コロナの影響もあり、「K字経済」と表現されるように企業業績の明暗がはっきりと分かれたのがこの1年だったと思います。
増益だったのは、製造業や巣ごもり需要の恩恵を受けた企業。
赤字だったのは、運輸やデパート、外食、エンタメ産業などです。
内閣府が発表した2020年度のGDPは、前年度比4.6%減と2年連続でマイナス。
下落率はリーマン・ショックがあった2008年度の3.6%減を超え、実質的には戦後最大の落ち込みです。
日本はGDPのうち個人消費が約53%を占めています。
個人消費が増えると成長率も好調になるわけですが、コロナの影響もあり個人消費は増えていません。
所得が増えれば個人消費も増えるのですが、残念ながら所得はこの30年間増えていないのが日本の実状です。
なぜ日本人の所得は増えないのか?
それは、新しいものやサービスを作れなくなったからです。
「高くても売れるもの」が、今の日本は作れていません。
日本の労働生産性は低下しており、37か国中26位。
それにともない、グローバル競争力も低下しています。
スイスのビジネススクールIMDが発表している「世界競争力年鑑」(※1)によると、1990年に1位だった日本のグローバル競争力が、2020年には34位になってしまいました。
「稼ぐ力」が低下しているのが今の日本です。
日本経済の地盤沈下は深刻で、新たな発想で経済再生・強化が必要だと感じています。
※1 国の競争力に関連する統計データと企業の経営層を対象とするアンケート調査結果を63カ国(地域)から収集し、作成される競争力指標
――追いつめられるほどに方法や姿勢が試されますが、日本はゆでガエル状態で、追いつめられているという自覚もないのかもしれませんね…。
▶加藤さんの編集者としてのご経験が独立後に発信されている情報への信頼度を高めていることがよく理解できました。次のページでは、アメリカ株をもとに経済ウォッチャーとしての加藤さんが企業の業績の分析方法について言及してくださいます!