老子の教えを現代のビジネス熟考に生かすコラムの5回目。老子の書とされる「道徳経」をもとに、希少なイノベーションを興すための「人材コントロール」について、一般社団法人数理暦学協会の代表理事 山脇史瑞氏が考察してくださいます。
2030年問題×老子時代
我が国の未来予測、
2030年問題はかなり深刻だ。
人口の1/3が高齢者、
生産年齢人口が減少するため、自ずとGDPは低下する。
国際競争力は低下し、円安が進行、物価は上昇、
社会保障費も不足するという現実を、
具体的な数字をあげて政府自体が示している。
今さら人口を増やせない現実を目の当たりにして、
この問題の解決策はテクノロジーを活用した
新しい産業の創出(イノベーション)だという。
そのため、官民一体になってテクノロジー推進に躍起になっている。
どうすれば既存の社員の中からイノベーションを興せるのか。
孔子と老子に見る相対的チーム構成
まず会社を、現在の業務を維持保守する、孔子チームと、
新しい事業を興す、老子チームの2グループに分ける。
老子チームからは、能力の高い人間を外し、
知能や学歴より、腹がすわった人間をリーダーにする。
給料は基本給だけの成果報酬。
基本給も安くて良い。
その代わり、会社の規約、上司への報告義務を一切外し、
ちょっとした失敗は見てみぬようにして、
どこで何をやろうが、放っておく。
給料が安いと文句を言ってきたら、
そういう事をいう人物は孔子型なので
孔子チームに振り分ければよい。
何より重要なことは、老子チームに、
1~2年で結果を出せとは言わないこと。
毎月報告せよとも言わないこと。
彼らと飲みに行くのは良いが、
報連相(ほうれんそう)をせよとは、
言ってはいけない。
つまり、放っておくのである。
すると、
3年目に事業の芽が生まれ、
5年目にカタチが作られ、
7年目に結果が見えるだろう。
2028年には何かが生まれ、
2030年問題には、ギリギリ間に合う。
成功の可能性はありのままを受け入れることから
大国を治むるは、小鮮を烹るが若し。
(道徳経 第六十章)
81章からなる「道徳経」は、老子の考え方「道教」を記した書と言われています。孔子の説く「儒教」とは対照的だと言われ、常に比較対象とされてきました。
これは、小魚を煮るように国を治めよという老子の教えである。
その人物をそのままを受け入れ、
上手に時間をかけて、弱火で味付けをする。
焦って突っつくと、せっかくそこまで基本給を与えてきても、
こころも身体も崩れてしまい、
本人もどうしたら良いか分からなくなる。
それでも、
世間一般のイノベーションを生み出す確率は、
1000分の3だという。
それくらいの覚悟がない限り、
イノベーションは生まれない。
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出典:ビジネスリーダー達の東洋思想《老子と学ぶ人間学⑤》老子的インキュベーター
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。