老子に学ぶ、現代社会思考~ビジネスエコシステムと武士道の融合
- 2021/12/13
- コラム
起業家がスタートアップに抱えるさまざまな課題を、大企業や投資家そして大学などの研究機関がサポートしリソースが循環する仕組み、ビジネスエコシステム。
米国のシリコンバレーを発祥とするこのシステムは、世界中でイノベーションの促進を加速させています。
日本でもその気運は高まりつつありますが、持続可能で革新的な起業を生みだすには、内発的動機となる起業家精神の醸成が不可欠です。
武士道精神が根付く日本でビジネスエコシステムを充実させるには?
老子の教えから、一般社団法人数理暦学協会の代表理事 山脇史瑞氏が考察されています。
失敗を糧とする発想
GAFAMに代表されるITの巨人は、
ビジネスエコシステムという仕組みの中で誕生した。
大学の技術や人材、投資家やVC、
起業を支援するアクセラレーター、
ビジネスを支援する弁護士やコンサルタント、
協業を狙う企業などが集まり協調的に、
スタートアップを支援するビジネス循環型エコシステム。
自然発生的に構築された、これらの土壌が
数多くのスタートアップ企業や
ユニコーン企業を輩出した。
シリコンバレーのあるカルフォルニア自体、
ゴールドラッシュで誕生した街であるため、
金脈を探し当てて
一攫千金を狙う採掘者的な発想だ。
スタートアップの成功率は、1割以下。
Fail First※、トライアンドエラー。
失敗を積み重ね、それが経験となり研ぎ澄まされ、
成功できる、つまり失敗は成功の糧という考えだ。
※ 「誰よりも早く多く失敗せよ」の意味。前例がないことへの取り組みにはつまずきがつきものだから、早く多くの失敗に対処して学びを得、目標に近づこうとすること
武士道精神への憧憬が強い日本の場合
失敗者に甘くはない。
責任をとらされ、
元の会社には帰りづらくなるし、
敗者復活戦を支援する仕組みもない。
日本が抱える失敗への不寛容さ
天下に忌諱多くして、民弥々貧し。
民に利器多くして、国家滋々昏る。
民に智慧多くして邪事滋々起こる。
法令滋々彰らかにして、盗賊多く有り。(道徳経 第57章)
法律や禁令が多くなり、縛りが強まると、
新たなものに挑戦しようという意欲が失われ、
人々はどんどん貧しくなる。
人々が便利な道具をたくさん持つと、
国はますます混乱してしまう。
技術が進めば進むほど、
怪しげな物が作り出され、
法令の解釈が明確になればなるほど、
法の目をかいくぐり、儲ける人が多くなる。
失敗に対して
ネガティブな発想を持つ多くの日本人は、
心の中に禁令を作ってしまう。
人に迷惑をかけたのだから、もうダメだ。
失敗から学ぶより、
失敗したら終わりだと思い込んでいる。
だから、挑戦への意欲は失われ、
人だけでなく国もどんどん貧しくなる。
武士道精神の縦社会にある日本が、
ビジネスエコシステムを構築するには、
失敗を許容し、次の挑戦をみなで支援する
フラットな土壌を作りあげることが
いまこそ必要だろう。
進化した先にある混とんとした世界
老子によると、文明の利器は、
国をますます混乱に陥れるという。
リモートで社員を統制することに
難儀を感じる経営者、
AIが解析した企業価値でM&Aをする時代、
企業はますます混乱する。
メタバースだの、ホログラフィーだの、
人間の在り方の根本を覆すようなものが
次から次へと作りだされ、
それらの使い道を
コントロールする法律が追いつかないため、
その隙間を狙って利益を得る
賢い人たちが増えるという。
縛りのない世界で武士道は生かされるか
メタ空間の土地売買が今、
注目されているという。
実際の土地ではなく、バーチャルな土地の売買。
その空間に訪れる人が増えれば、
一等地に自社看板を立てておけば、
広告効果は絶大だ。
その土地は、どこの国の土地でもないため、
どこの国の法律も関係しない。
そんな世界が利益を生み出し、
世界を席巻する時代。
Gold miner(金塊を発掘する人たち)の世界で、
武士はどう戦うのかという事をテーマに、
掘り下げていったら、
日本らしいビジネスのヒントが
見つかるかもしれない。
一般社団法人 数理暦学協会では、
週2回のZOOMオンライン東洋思想勉強会(無料)を開催しています。
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出典:ビジネスリーダー達の東洋思想《老子と学ぶ人間学⑨》武士道と起業家エコシステム
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。