老子に学ぶ、現代社会思考~SDGs実現は心身の同調感覚を研ぎ澄ます経営で
- 2021/11/15
- コラム
人生を楽しむ術を今から2500年以上前に説いたとされる老子の教え「道徳経 第10章」より、有限な私たちが欲望の無限さとどのように向き合えばよいのかのヒントを解き明かします。
ナビゲーターは、本コラムの連載をしてくださっている、一般社団法人数理暦学協会の代表理事 山脇史瑞氏です。
赤子のように足るを知る
環境破壊や貧困、格差問題の根源とは、
肉体は有限なのに、
人間の欲(精神)は無限なことにある。
老子は我々に、
健やかな「赤ちゃん(嬰児)」になれという。
営魄を載んじ、一を抱きて、
能く離れること無からん乎。
気を専にし、柔を致して、
能く嬰児たらん乎。(道徳経 第10章)
営々と活動している魂を持ちながら、
唯一の「道(タオ)」を守り、
そこから離れずにいられるだろうか。
精神を集中し身体を柔軟にして、
赤子のようになれるだろうか。
赤ちゃんは、お腹がいっぱいになると、
お母さんの乳首を口から外し、眠ってしまう。
赤ちゃんが、貪欲に、
お母さんの乳首を吸い続けたらどうなるか。
お母さんは衰弱し、倒れてしまうだろう。
それでも許さず吸い続けたら、
生命のエネルギーを喪失する。
吸い付くものがなくなった赤ちゃんは、
どうなるか。
赤ちゃんを人間、
お母さんを地球、母なる大地に置き替える。
私たちは、貪欲な赤ちゃんだ。
お母さん(地球)が悲鳴を上げているのに、
ガムシャラに吸い付いている。
これ以上吸い続けると、命を失うかもしれない。
既に体温が上がり、
細菌やウィルスに弱い身体になっている。
それでも吸い続けている。
健やかな赤ちゃんなら、
お腹がいっぱいになると安心して、
眠ってしまう。
生命を維持するという基本的な欲望が
満たされれば、
それ以上のものを望まない。
だからまたお腹がすけば、
新しい乳が飲めるのだ。
しかし、
刺激的な映像を見せ、音楽を聞かせ、
味付けの濃いジャンクな食べ物を与え、
高揚する空間に身を置くと、
感覚が狂い、欲望のブレーキがきかなくなる。
有限な肉体に無限の精神を
どう融合させるか
この欲望をいかに巧みに亢進させ
肥大化させていくか。
それが、従来のアメリカ型ビジネス手法だ。
フェイスブックが、
社名を「メタ(Meta)」に変更した。
インターネット上の仮想現実空間
「メタバース※」に未来を見出し、
事業の軸足を移そうとしている。
肉体は有限で、精神は無限であることを、
ザッカーバーグ氏は熟知している。
メタバースという仮想空間に移動させれば、
精神(欲望)は更に肥大化し、
肉体は弱体化するだろう。
これからの事業展開は、
ソフト産業がさらに巨大化し、
実態産業は
より弱体化の一途をたどると思われるが、
肉体と精神は乖離しないのが自然の法則だ。
それをどう融合させて進化させるか、
これからの経営手腕にかかっている。
※メタバースは、「Meta(超越した)」と「Universe(宇宙)」を組み合わせた造語。
インターネットでアクセスできる仮想三次元空間の総称として用いられ、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)技術を使いより現実世界に近づけたデジタル空間を創造します。
一般社団法人 数理暦学協会では、
週2回のZOOMオンライン東洋思想勉強会(無料)を開催しています。
詳しくはコチラをご覧ください。
出典:ビジネスリーダー達の東洋思想《老子と学ぶ人間学⑦》老子とSDGs
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。