経営者が変わるとき、組織が生まれ変わる
- 2022/1/14
- 経営全般
経営が何となくうまくいかない会社では、社員が困りごとを抱え、何より社長が方向性を見失っている場合があります。そんな時、多くの企業は改善に向けてまず、人事評価などの制度を導入しようとするものですが、それよりも前に見直すべきことがあると、経営コンサルタントの大橋弘子氏は言います。ご自身が携わった事例を基に、組織を生まれ変わらせるための考え方を教示してくださいます。
目次
こんな社員さんの存在でお困りではありませんか?
① 社長が〇〇してくれない・・・くれない族
② 私の仕事じゃない・・・他責
③ 他の会社は、もっとお給料がいい・・・判断軸がお金
上記①~③の社員さんの存在が一つの要因で、
職場の雰囲気や社員同士の関係性が悪く業務も非効率。
経営がなぜうまくいかないのか。
その答えの参考となる事例をご紹介します。
私が過去に担当させていただいた
社員数50名程度の
ある企業での組織づくりについてです。
人事評価制度だけをつくっても意味がない
社長様は、
「今まで社員さんとの関わりを避けてきた」
「お給料を上げてくれと言われて困る。
何となく払ってきた給与とボーナスの
支払基準に根拠がない」
だから、
「大橋さんに人事評価制度を作ってほしい」
とおっしゃいました。
これに対して、会社の背景を伺ったうえで、
「人事評価制度だけ作るのであれば、
インターネットで検索すれば、
たくさんでてきますよ。
御社の場合、人事評価制度をつくっても
今の状態では意味がないと思います」
と、お答えしました。
関係性を整え、目的を共有する
社長様とお話した結果、以下の大枠につき策定することをご提案しました。
① 社員さんを含めた全員参加型の
□□経営理念策定・浸透支援
② 中長期事業計画策定・運用支援
③ ドンブリ経営からの脱却
□□キャッシュフロー経営の導入・運用支援
④ 人事評価制度策定・運用支援
⑤ 職務基準および役割と権限の明確化
これらを実践していくことで組織全体を改変できると確信し、
関わらせていただくことにしました。
まず「社長が変わる」
社長様に伝え続けた言葉は、
「社長が変わる以外に会社が変わる方法はない」
ということです。
そして、社員教育をする前に社員さんとの関係性を整えるため、
一貫した社員研修テーマを2つ決めて、
研修時に社員さんへ伝え続けることをお話ししました。
伝えるべきテーマは、以下の2つです。
1.自己の存在の承認
□□社員さんが何のために仕事をしているのか?
□□必要とされること、感謝されること
□□お金は手段であって、目的ではないこと
2.自己実現の明確化
□□働くことを通じて何を実現したいか?
全員参加型で経営理念を策定
顧問先で理念を策定する時、
理念の構成は、基本的に
・ミッション(使命)
・ビジョン(目標)
・バリュー(仕事をしていく上で大切な価値観)
としています。
ミッション(使命)とビジョン(目標)は、
社長様と私で策定します。
バリュー(仕事をしていく上で大切な価値観)は、
社長様を含めた全社員さんでアイディアをだしてつくります。
全社員さんでつくる理由は、
現場の業務をすべて社長が把握
しているわけではないことと、
業務をする上でのやり方やこだわりは、
社員さんにしかわからないからです。
バリュー(仕事をしていく上で大切な価値観)
を社員さんも一緒につくることで
会社の理念を自分事として
捉えてもらえるようにもしています。
理念を浸透させる
理念は掲げているだけでは意味がありません。
理念の完成はあくまでもスタート。
全社員さんで理念浸透施策を行います。
何のために理念をつくるのか?
① 会社の方向性を明確にし、ぶれない軸の構築
② 理念(大切な価値観)で思考と感情を整える
↓↓↓
理念(大切な価値観)を習慣にする
↓↓↓
いい行動が生まれる
↓↓↓
いい成果をだし続ける組織になること。
最終的なゴールは、全社員さんの物心両面の
豊かさと幸せの実現です。
社員研修で関係性改善へ
社員同士の関係性改善に気づきを促し、
理念策定に関する初回研修の翌日、
社員さんから電話がかかってきました。
「大橋さん、ありがとうございます。
私が会社に言いたいことを全部、
大橋さんが研修で言ってくださっている」
という内容でした。
会社の方向性を明確にし、ぶれない軸の構築
理念策定と同時に、
会社の中長期事業計画を社長様と一緒に考えます。
理念に基づいた事業活動をした結果の
お金の裏付け
(売上・利益目標/人財・設備投資など)の計画です。
言葉にして発表、生まれた社長の覚悟
社長様の経営計画の発表後、
社員さんからネガティブな質問がありましたが、
社長様が真正面から、次の回答をされました。
会社として精一杯のフォローをすること。
覚悟をもって臨むこと。
そのご姿勢に、社長様が変わった瞬間を拝見しました。
発表後、社長様より
「経営計画を今まで考えたことがなかったけれど、
引き出してもらって、ありがとう。
言葉にしてみんなの前で発表したことで、
覚悟が決まりました」
と、お話がありました。
迷子をなくす
① 社長が〇〇してくれない・・・くれない族
② 私の仕事じゃない・・・他責
③ 他の会社は、もっとお給料がいい・・・判断軸がお金
④ 社員同士の関係性が悪く業務効率が悪い
上記①~③のような社員さんが存在して
④のような問題が生じてしまう要因の一つとして、
社長様も社員さんも「迷子」であることが多いです。
迷子とは、
・現在地がわからない
・行き先がわからない
・行き方がわからない
人のことです。
迷子を解消するために、
会社の方向性を明確にし、ぶれない軸の構築をして、
情報共有することが大切です。
働くことを通じて実現したいことは?
今まで自分に向けていた内向きのベクトルを
目の前の相手に向け、
関わる全てのステークホルダー※に向けていこう。
□□1.社員とその家族
□□2.社外社員とその家族(取引先・協力企業等)
□□3.現在顧客と未来顧客
□□4.地域住民、とりわけ障がい者等社会的弱者
□□5.株主・関係機関・社会
(出典:人を大切にする経営学会)
上記1~5の人々の満足を追求・実現しよう。
※利害関係者の意。株主や経営者、従業員だけでなく、顧客や取引先など広範囲に関わる人すべてを指す。
広い視点と長い時間軸を
もっと視点を広く!
時間軸をもっと長く!
この問いかけを社長様と社員さんに
これからも続けていきます。
私の広義のミッションは、
「想いを分かち合って、
多くの人の心に夢や希望を届けたい」
です。
~お断り~
事例をご紹介する場合は、わかりやすさを優先し、
また営業秘密の漏洩を防止する観点からも、
内容に一部改変を加えている場合があります。