刑賞与奪の権はリーダーが握るべし
- 2021/7/19
- コラム
リーダーを支える重職(管理職)の心得を記した「重職心得箇条」。連載コラム第6回目は、第9条から報奨や処分を与える権利について、一般社団法人数理暦学協会の代表理事 山脇史瑞氏の考察を紹介します。
刑賞与奪の権は、人主のものにして、
大臣是れ預かるべきなり。
倒まに有司に授くべからず。
斯くの如き大事に至っては、
厳敷く透間あるべからず。
(重職心得箇条 第9条 佐藤一斎)
重職心得箇条とは、幕末の儒学者である佐藤一斎が、自藩の重役たちに向け、藩の重職の心構えなどについて書き記したものです。第9条は、仕事を任せることに言及した第8条とは異なり、人事や給与を決める権利はリーダー自身が持っていなければならないと説いています。
社員を評価・査定をして、
それに見合う賞与や役職を与えたり、
解雇や左遷する権利を有するのは、
社長のみである。
管理職は、
その権利を預かり
代行しているにすぎないという
意識で行わねばならない。
また、この権利を
部下に持たせてはならない。
この権利を行使する際は、
厳格で透明性を高くせよ。
給与による差別化には熟考が大切
社員を給与で差をつけるのは
リスクが伴う。
優秀な社員が毎年
10%のベースアップを得ているのに、
平均の人が2%のみであれば、
反感が生まれ、
全体的な生産性の低下につながる。
さらには従業員同士の結束も弱まり、
いじめの発生にもつながりかねない。
かといって、
報酬の差別化をまったくしなければ
優秀な人材を失うおそれもある。
働きに相応しい評価と待遇を
優秀な社員の満足度を左右する要素は、
報酬と認知であるという。
会社は優秀な社員を適切に認知し、
より高いレベルにいく補助を
与えることが大切だ。
例えば、
個人では払いにくい高額の研修を、
受けさせることは、
彼らのプライドも満足するし、
ベースアップ以上の魅力もある。
研修にかける費用が
限られている場合は、
より高いレベルに成長するという
視点で彼らと常に話し合い、
スキルアップ出来る業務に導けば、
満足感は高まる。
ベースアップもなく、
そのような配慮もなければ、
優秀な人材はさらなる挑戦や、
報酬を求めて別の仕事を探しだす。
刑賞与奪の権とは
「生きるか殺すかを決める権利」。
彼らを存分に生かすかためには、
きめ細かい配慮と寄り添う気持ちが
大切ではないか。
佐藤一斎(1772~1859年)は、美濃(岐阜県)岩村藩の代々家老を務める家柄に生まれ、幼少の頃から聖賢の経書に親しんだといわれています。22歳の時、大学頭・林簡順の門を叩き、儒学で身を立てることを決意。林家の養子となり、34歳で林家の塾長に抜擢されます。多くの門弟の指導に当たり、70歳のとき、現在の東京大学総長の立場である昌平黌の儒官に任官。日米和心条約の外交文書の作成にも携わりました。
出典:東洋古典運命学「刑賞与奪の権」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。