地方創生・地域密着型のビジネス、成功のコツ

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「輪業」から「林業」へ

――そういえば「林業」も手掛けていますよね。

馬場氏――「輪業」セミナーと間違えて「林業」セミナーに参加したのがきっかけです(笑)。
林業だけでなく、山林活用全般と関わっていますね。
ロードバイクには山坂をひたすら登り続ける「ヒルクライム」という競技があり、そこに参加する中で自然と森に触れる機会が増えたことも大きいでしょう。

日本は国土の約2/3が森林という森林率約7割の、世界でもトップクラスの森林大国です。
しかしながら、産業としての林業は衰退し、林業従事者数はわずか4万5千人(2015年国勢調査)。
その結果、手が入らない山は荒廃が進み、さらに水源を目的とした海外資本に山を買われているのが現状です。
そんな情報を耳にするたび、日本の本来の美しい森の姿を守りたいと思うようになったのが山林との関わりのスタートです。

――どのような切り口で林業を支援しているのですか。

馬場氏――日本には奈良吉野地方などに見られる「長伐期択伐施業」という林業手法があります。
これは、山を資産として孫子の代まで受け継げるよう一代の事業で伐り尽くしてしまわず、伐る木と残す木を選択し、長い時間をかけ山を育てていくやりかたです。

この手法には、山を荒らさず、壊さず、丁寧に手を入れていくことが求められ、その結果として、川や海の保全にも繋がっているのだと思っています。
具体的には、この環境保全型の持続可能な林業手法を広めている自伐型林業推進協会というNPO法人の趣旨と活動に賛同して協力しています。

――いわゆる小規模林業ですよね。ビジネスとして成立するのでしょうか。

馬場氏――ビジネスとして成立するか、難しい質問ですね。
やり方による、とも言えますが、林業自体が資本主義的な指標にそぐわない事業だというのがネックになっています。
その理由は「時間軸」にあり、そもそも、1年という会計年度で評価できるものではないからです。
3年、5年あるいは10年といったスパンの中長期的な結果に評価基準を当てはめていく必要があり、その間に山の営み方を見誤る危険性すらあります。

と言っていても始まらないので、継続と将来投資のための破綻しない収益モデルの確立を前提として、経済合理性だけで語るべきでない森林の持つ環境・健康への貢献度や、木質バイオマス利用による地域内循環エネルギー利用等を含めた林業を核とした複合的な森林活用という考え方を広めていきたいです。

地方創生、地域活性化の本質

――今後の抱負と、地域が活性化するコツについて教えて下さい。

馬場氏――そうですね。
今後の抱負と言っても、私も決して若くはなく、あと何年動けるのか分かりませんので、大層なことは言えませんが、日本中の森林を活性化させたいですね(十分、大言壮語ですね。自己ツッコミ)(笑)。
今、私が関わっている皆さんとは、幸いにも価値観が近く、また熱い使命感を持っている方たちばかりなので、そうした同志とでもいうべき方々と面白がりながら、色んな活動をしていけたらと思っています。

私なりの地域活性のコツは、主役は地元の方、というスタンスを忘れないことでしょうか。
そして、その地域の良いことは良い、悪いことは悪いと正直に話して、その地域ならではのやり方、スタイルを提案することを心がけています。
時に不快な思いをさせることもあるかもしれませんが、よそ者の強みで臆することなく客観評価し意見を交わす。
そこからスタートして初めて、地方にありがちな有名観光地や都会の模倣、二番煎じ主義から脱却できると信じています。

――本日はありがとうございました!

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馬場 隆司

投稿者プロフィール
1959年10月20日生まれ
地域振興&森林活性活動家&サイクルスポーツ・プロデューサー

株式会社UNITED SPORTS 代表取締役、地域活性化企画会社(株)THE CO取締役、財)日本スポーツ協会 公認スポーツ指導者、損害保険会社のシステムエンジニアを経て独立。
プロ自転車チーム「宇都宮ブリッツェン」設立 初代社長兼GM
一社)全日本実業団自転車競技連盟 連盟本部長兼事務局長

現在は、日本各地での森林活用による分散型地域エネルギーシステムの導入と、スポーツコミュニティの普及に注力。

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