不動産業界にイノベーションを!不動産価格の透明化を目指して(前編)
- 2021/7/26
- インタビュー
従来、不動産の適正価格は不動産会社だけが知っている不透明なものでした。その時々に見えている不動産価格だけを頼りに売買を行わざるを得ない商習慣に疑問を持ち、不当な取引を減らしたいという想いを胸に、業界に先駆けてマンションの相場公開サイトを構築し不動産価格の「透明化」に邁進する、マンションリサーチ株式会社 代表取締役 山田敏碁さん。テック企業でありながら、スタッフの半数が不動産業界出身者という「不動産の現場を知っている」強みをITに掛け算し、不動産業界を変革させてきた山田社長に、創業11年目となるこれまでの歩みとこれからの想いをインタビューさせていただきました。
不動産売買を適正価格で
――創業以前、山田社長はどのようなことをなさっていたんですか?
山田敏碁氏(以下、山田氏)――以前は不動産仲介会社で、一般顧客向けの不動産賃貸・売買の営業を15年ほどしていました。
その当時のお客様の関心事は「この辺のマンションいくらなの?」というものがほとんどでしたね。
私はそれを都度調べて回答するのですが、不動産の価格など一般の人にもわかるように公開されていればいいのにと、いつも思っていました。
不透明な不動産価格を疑問視
山田氏――例えば、マンションの部屋数は日本全国に約700万戸あるのです。
しかし、同時期にマーケットに公開されるのは4万戸程度しかありません。
全体のたった1%にも満たない数の不動産の価格だけを見比べて価格判定しているということなんです。
今、マーケットに出ていない不動産価格の相場もしっかりわかるようにしたら、一般の人にも適正価格がわかり、不動産売買が安心して行えるようになるだろうと思っていました。
不動産テック企業のスタート
――ITで起業されたのはどのような想いからだったのですか?
山田氏――2011年にマンションリサーチ株式会社を創業しました。
ほとんどの不動産の仲介会社は創業後、一定期間を過ぎると集客の課題が出てきます。
そして、外部に頼らざるを得なくなる。
集客は経営の根幹ですので、先にお客様が集まるための仕組を作っておけばいいじゃないかと考え、ITの力でそれを叶えようと思ったわけです。
不動産で騙される人を減らしたい
山田氏――不動産業界は取引の「透明化」がまだまだ進んでいない業界と言われます。
どこから変えるかといったら、やはり価格を明示するというところからだと思いました。
不動産に、ある一定の基準でなんらかの「格付」を与え類型化するということです。
自分の家を買った後、本来資産であるにも関わらず自分の家がいくらなのか不動産会社に聞かないと分からないのはおかしいと思います。
不動産はそんなに頻繁に値動きしませんけれど、株価のように不動産価格を見られるようにしたい、そして不当な金額で取引せざるを得ない人を少しでも減らしたい。
この創業時に抱いたロマンを持って、この11年間会社を運営してきています。
今は、集まってくる不動産を売りたい方々に向けて、一括査定での売却のお手伝いが主業務ですが、やはり創業当時のロマンに軸足を置いて、今後も実現に向けて努力し続けたいと思っていますね。
――不動産営業からテック企業を創業することに不安はなかったですか?
山田氏―ーもともとITは好きだったんです。
子どもの頃は、ファミリーベーシックというファミコンでゲームプログラミングを自作できる機器にすごく興味を惹かれ、ゲーム雑誌に投稿されたプログラミングを眺めたりしていました。
社会人になった当時はまだ事務所にパソコン1台だけとかの時代ですが、Macにはまりネット接続も楽しんでいました。
そういった意味では、抵抗はほとんどなかったですね。
創業当時は、ロマン最優先でIT開発を先行させていったので、お金は全然なかったですね。
売買業務をリアルでやっていたほうが、よほど実入りがよかったでしょうね(笑)
IT投資の回収は一般的には長期になりますが、お陰様で外部資本を入れることもなく、ほぼ自己資金で運営できています。
▶不動産×ITというイノベーションに挑戦された山田さん。次のページでは、不動産業界に新たな風穴を開ける「不動産相場の透明化」への実装についてお話を伺っています!