【座談会】DX化を社内に浸透させるのは経営者のITリテラシー

DX化座談会の模様をお届けしている本シリーズ。
前回の「今更きけないDX経営〜レガシー企業文化からの脱却 2代目社長のDX~」では、ご出席のみなさまの現状を伺いました。
今回は、実際にDX化を進める企業の代表であるみなさまに、それぞれの効果や課題、感じられている難しさなど、現場での声を含めどんなご苦労があるのか、お話を伺っています。

デジタル化を阻むもの

ITに精通する人材の確保

――高橋さんの会社では、新しいシステムの導入はスムーズだったのでしょうか?スタッフからの反発はなかったですか?

高橋さん――以前からいる人ほど反対意見でした。
ですから、何年もかけて準備を行い、きちんと話し合いをもって、各事業部の責任者が全て納得したうえで自身で決めるように促しました。
結局、社長が決めちゃうと、うまくいかなかったときは特に「社長が決めたから!」となる可能性が大きいでしょう。
ですから、それぞれの部門の責任者が自分たちの意志で決めることは大事ですね。
そして、デジタル化の実施は横一線で一気に行いました。

――素晴らしいですね!エイトレッドさんのサービスには、導入時の進め方や取り組み方などのマニュアル提示があるのですか?

高橋さん――エイトレッドさんでは決まったフォーマットはなく、自由にフォーマットを作れるのが売りです。
そのため、ある程度ITを活用でき作り込みができるスキルがないと、自社用にカスタマイズするのはなかなかハードルが高いかもしれませんね。
使い勝手よく効率的に使えて、カスタマイズに自由度がある分、作り込んで使いこなせる人材が必要です。
ただ、その辺はサポートしてもらえるので、弊社もサポートを受けながらなんとかスタートできるようになりました。

※カスタマイズせずに自社にあったものをお選びいただける1,000以上のサンプルフォームのご使用も可能です。

DX化には経営者のITリテラシーが必須

――各企業の課題は様々ですが、まず何からどう進めるのがいいですか?

田澤さん――数々ある課題も全部やろうとしたら全部できちゃうんですよ。
でも実際には全部はできないので、まずできるものからスタートすることです。
雛形も約100種類とたくさんあるので、その雛形が合えば使えばいいし、合わなければ今まで会社で回っていた「紙」と同じフォーマットのまま電子化してあげると、変化が少ないので社員も受け入れやすいですね。

まずは、ひとつやってみて、社内での評価が高ければ、少しずつ増やしていく。
そして、ここは大事なところですが、ちゃんと経営者がついていかないと止まっちゃうんです。
最初のうちは非デジタルとデジタルが混在しますから、デジタルの方向に移行すると決めたら、社長自らが絶えず言って浸透させていかなければいけない。
社長が何も言わなくなると、あれ?社長飽きちゃったかな?と思われて、いつの間にかやらなくていい雰囲気になっちゃうんですよ(笑)

みなさん――ありますね!

田澤さん――社員は、自分たちでいいと思えたものは自分たちで作り始めていきますので、DX化にたどり着くまでは時間が掛かるかもしれない。
ただ、始めないと何もできないので、うちはスタートを切れたこと自体はよかったと思っています。

難問は取引関係先のデジタル進度

――経産省はDXの課題は単にデジタル化ではなく、企業文化の刷新だとも言っていますが、芝田さんが感じていらっしゃる課題はございますか?

芝田さん――気づいてないだけかもしれませんが、実はあまり課題を感じていないんです。
自社サーバーを設置し、パソコンさえあれば、みんな外からアクセスして仕事はできる環境なので、1回目の緊急事態宣言下からすぐにテレワークに移行できました。
ただ、「サーバーよりクラウド化した方がよいのでは?」という話はIT管理者からは出ています。

法律事務所の業務内容は、多分みなさんのお仕事よりシステム的には単純です。
みんなが仕事して、サーバーにデータをアップして、顧客とやり取りするっていう、ほとんどそれだけ。
もっとも、裁判手続きについては、最もIT化が進んでいない分野の一つだと思います。
そこは何とかしてほしいと思っています。

――行政機関も少しずつペーパーレス化がなされてきてはいますが、法曹界はそのような状況なのですね。やりとりする先が非デジタルだと、自分たちだけデジタル化しても仕方ないという問題もありますね。

芝田さん――そうですね。
ただ、このコロナ禍で裁判所もオンラインシステムを導入して、いわゆる本庁という地方裁判所の本部とはオンライン会議ができるようになりました。
以前から電話会議はありましたが、随分進んだ印象です。
地方の支部とのやり取りは相変わらず電話会議だけなんですけどね。

――なるほど。徐々に進んできているのですね。

芝田さん――データが大きくなってくるとメールでのやり取りも大変なので、クラウド管理でURLを連絡するだけで済むことはとても便利です。
しかし、そもそもそこに必要性を感じていらっしゃらないお客様が多く、そのこともDX化が進まない要因にはなっているんでしょうね。

DX化は人材不足を補えるのか

――やはりみなさんお考えも課題も多種多様ですね。

田澤さん――そうですね。
そして、どの業態にも共通しているのは人材不足でしょう。
中小企業は潤沢に人を採用できないことをどの経営者も分かっていますから、少人数でも業務を回せるように現在の不要な業務を減らし、必要な業務に人材リソースを当てるために、デジタル化で解決できないか?という発想になります。
デジタル化することで効率を上げて、社員には早く帰ってもらって自分の時間を楽しんでほしいですね。

短期集中でのIT移行

――DX化のためにはITリテラシーの高い人材を入れないといけないのでしょうか?

高橋さん――うちは幸いなことに前職で学んだノウハウと、ITに強い人材が社内にいることで、分からないことも教えてもらえる環境があります。
だからこそ、DX化を急激に進められたのだと思います。

――どれくらいの期間で変えていかれたのですか?

高橋さん――まさに、ここ数か月でほとんどが移行できました。
経理業務全体ではちょうど1年ぐらい経ちますが、請求業務や伝票管理などはここ数か月でデジタル化しました。
社内のデータベース共有化やMessengerなどでのやりとりも、1年ぐらいでの移行です。

システムの混在が招く課題

――データベースの共有システムは現在、どのようなものを使用されているのでしょうか。

田澤さん――いろんなシステムが混在しているという状態ですね。
今後、システムを入れていくときに、仕様の異なるものがいろいろと組み合わさっているという既存システムのブラックボックス状態が、経営者にとって大きな負担になるだろうと思っています。

DXを本格的に展開するためには、既存システムを刷新し変化に追従できるITシステムが不可欠です。
しかし現状は、

  • データを活用しきれていない
  • 維持管理費が高騰していくことで技術的負債が今後一層増大する
  • 保守運用者を確保できない場合にセキュリティリスクが高まる

等の課題に直面しています。
多分このままいくと、大企業が歩んで来たIT化の迷走を中小企業も踏襲するんじゃないかという怖さを感じます。
やはり、課題を個別に判断してシステムを決断していくと、その時々で必要なシステムを導入することになって、結局、仕組みが重複したり分からなくなったりする不安を抱えることになります。

高橋さん――ベンダーの言いなりだと、そうなりがちですよね。
誘われるままに決断しないように、ある程度経営者がITリテラシーといえる情報のアンテナを持ってないといけないですね。

――荒木さんの会社ではグループウエアを継続されていますが、抱えている問題はありますか?

荒木さん――同じ会社のグループウエアで機能が全く違うシステムを2つ持っていて、1つは社内情報の共有やワークフローなどに使用するもので、もう1つの方ではいろいろなシステムを作ってもらうようにしています。
ところが、なかなか要望通りにならないことがあり、非常にもどかしく思っているところです。

社内人材の育成が急務

――社内で要件定義する際にディレクションする人材はいますか?

荒木さん――いないんですね。
グループウエアの話だけじゃなく、人事労務のシステムでもうちの雇用形態に合わないものがあって、ちょっと変えてと言っても、なかなか思うようにならずに時間ばかりが過ぎるという経験もしました。
かといって、こちらのやり方を変えるのは本末転倒ですから、エンジニア側とのコミュニケーションには一番苦労しています。

田澤さん――DX化にはCDO(チーフデジタルオフィサー)が必須だというのは本にも書かれていますし、人づてにも聞く話ですけど、中小企業経営者は追いついていないのが実情です。
そういった人材にたどり着かないし、適合度合いも分からない。
だから、どうしてもベンダーさんを頼らざるを得ないんですが、ベンダー側の売りたいものも偏っていたりします。でも、最終判断は社長に求められる、という(笑) どこの企業もそんな悩みを抱えていて、大きな課題ですよね。

荒木さん――CDOの雇用を、フルタイムでは負担だと思い兼業副業で募集したことがあります。
でも来てくれたのは、中小企業を知らない人がほとんどでしたね。
大手企業でのシステムエンジニア経験は中小企業には当てはまらず、理解してもらえたとしても今度は金銭面で合わず、泣く泣く諦めるといった経験もあります。

――みなさんいろいろとご苦労があるようです。
後編「DX化が企業の集団総合力向上に貢献する」では、中小企業が抱えるDX化への悩みを、2代目お坊ちゃん社長の会がどのように支援していくかについてお話を伺います。

参考:経済産業省「DXレポート」

田澤孝雄
京南オートサービス株式会社 代表取締役社長
2代目お坊ちゃん社長の会 代表理事

投稿者プロフィール
1975年生まれ。早稲田実業高校から早稲田大学政治経済学部に進学。不動産業を営む父親に逆らえず、大学1年で宅建を取得するも父への反発心で、不動産とは真逆の弁理士取得を決意。サラリーマン時代に25歳で弁理士合格を果たす。
30歳目前にして家業に入社。家業のガソリンスタンド業界を発展しつつ、損保指定工場の板金事業に魅せられ京南オートサービスとして運営交代し37歳で社長に就任。他に介護事業や洗車事業を運営する等、多角的な事業経営をしつつ、「一般社団法人2代目おぼっちゃん社長の会」を立ち上げ家業を継ぐ2代目を支援する。
著書「ビジョン経営革命を起こした2代目お坊ちゃん社長の77の逆襲レター」
Youtubeチャンネルでの動画は現在140件

荒木知太朗
株式会社アラキ企画 取締役

投稿者プロフィール
荒川信用金庫(現・城北信用金庫)営業課、融資課を経て2007年3月に株式会社アラキ企画入社。同年7月に代表取締役就任。
信用金庫時代には営業の他、債権回収、資産査定なども担当。 FP資格も取得、税務、法務等の知識も習得。 株式会社アラキ企画では、ゴルフ練習場ガーデン藤ヶ谷ゴルフレンジ、ゴルフスクールをメインに、清掃関係や機能性素材の卸売商社も行う。

高橋成紀
株式会社高橋商店 代表取締役

投稿者プロフィール
学生時代はスポーツにのめり込み、大学卒業後、外資系IT企業を経て、30歳の時に祖父が創業した株式会社高橋商店に入社。
その後、代表取締役社長に就任。石油販売、ガソリンスタンド経営、タンクローリーによる燃料配送事業を行う。
座右の銘は「苦労は心を深くする」
オフタイムは、ランニング・料理・家族サービスなどで過ごしている。

芝田麻里
芝田総合法律事務所 代表弁護士

投稿者プロフィール
東京弁護士会所属
一般社団法人 事業承継研究会 代表理事、株式会社事業承継・M&A支援センター(JMA)代表取締役なども務める。
得意分野は、環境問題や産業廃棄物関連。事業承継、知的財産、一般民事、一般刑事なども幅広く取り扱う。
企業コンプライアンスや社内研修など、顧問先企業との密接な関係構築と予防的司法に注力している。

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