10万円スタートでもフランチャイズ本部はつくれる!(前編)
- 2021/2/12
- インタビュー
目次
㈱豆吉郎の成功要因
――移動販売は、競合もいろいろあると思うのですが、うまくいったきっかけやタイミングなど、成功要因は何だと考えていらっしゃいますか。
宮嵜氏――業界にもよると思いますが、流行っているビジネスは、本気の方たちがものすごく多いじゃないですか。
でも、豆腐屋の移動販売事業の拡大を本気でやっている人は、それほどいないと思うんです。
「なんとなく売れたらいいな」くらいの人が多いから、ライバルがいないし新しいことを求めていない業界だったので、システムやGPSの導入、商品ブランディング、FC制度など業界としては新しいことをしたのが成功の要因ですね。
豆腐の移動販売だからできたこと
――豆腐の移動販売って、地域限定で、チャルメラ吹いているイメージですよね。エリア展開していかれたのが良かったんですね。
宮嵜氏――僕が始めたころの豆腐屋さんはHPがない会社も多かったんです。
だから、把握はしていませんが、他に同じようなエリア展開をしているところがなかったんじゃないですかね。
今でも、移動販売車10台程度まで持っている会社は結構あると思いますが、50台以上だと、全国に1~2社だと思います。
――でも、需要はありますよね。豆腐はみんな食べますから。
宮嵜氏――スーパーを回ってみても、原価率が50%以下の商品って、魚介系か豆腐くらいしかないですね。
野菜はブレが大きいし、調味料なら原価率(仕入)7~8割。
原価率が50%以下の商品を扱いたいと考えていました。
豆腐は原価率20%くらいで、毎日食べるものなので移動販売にはちょうどよいと思ったんです。
外に出さないことで付加価値をつける
――お豆腐の原価率ってそんなに低いのですね。
宮嵜氏――ものにもよると思いますが、移動販売なので、付加価値をつけて売るため原価率が低いんです。
スーパーでも豆腐の原価率は30%くらいだと思います。
一般の食品の小売りの原価率は70%~80%くらいがほとんど。
僕らは飲食店並みの原価でやろうと考え、全部オリジナル商品にしてよそと値段だけで比べられないようにしました。
その代わり、よそには卸さない、豆吉郎の販売員しか売れないようにしていました。
その結果、販売員の独立も防げたし良かったんじゃないかと思います。
――なるほど!皆が食べる豆腐にさらに付加価値もつけていたわけですね。
宮嵜氏――何より、豆腐はピープーと笛の音を流して売るのがポイント。
創業したころ、沖縄から北海道までエリアを広げられる商材について聞き込みに行ってみたんですが、豆腐屋だけは、どこの地域の人もピープーという音でみんなわかるんです。
これは宣伝費を使わずに全国制覇できるぞと思いました。
個人の能力に依存するな!
――そうすると、宮嵜さんの著書にもありましたが、特定の営業力には頼るな!ということですか。
宮嵜氏――フランチャイズの加盟店に頑張りや営業力とかを求めてはいけない。
というか無駄だと思っていました。
楽にできて、ただ商品を積んで集客の音(ピ〜プ〜)を鳴らすだけで売れるよっていうのを作りたかった。
特定の人にしか売れないのでは広がらないと思いました。
日常で当たり前に消費される商品がポイント
――著書のなかに「フランチャイズ本部運営の基礎知識」というところで、「個人の能力で成り立っているのはだめだ」「世間に周知された商品がいい」とありますが、まさに豆腐がそうですね。また、大手がやらない、やりにくいんですね。あと、商品選びのポイントは「リピート性が高いこと」と「在庫」とあるんですが、在庫とは?
宮嵜氏――豆腐は腐るので大変でしょうと言われますが、実際の廃棄率は1%以下です。
その理由は、みなさんが豆腐を食べる量というのが決まっているからなんです。
お金のある・ないや天候にも左右されない。
売り上げが爆発的に伸びる事もない代わりに落ち込むこともない。
仕入れの予想がしやすいんです。
お客さんの9割以上がリピーターだったので、ほぼ、注文を受けて帰ってくる。
リスクがなかったのと、残った賞味期限1日とかの豆腐は大きい居酒屋さんに卸していたので、実質廃棄はゼロだったのではないかと思います。
――本部も加盟店もキャッシュフローがいいですね。
宮嵜氏――キャッシュフローはいいです。
加盟店さんは常に現金が入ってくるので。
売却先企業との距離感が重要
――ここに出てくる人たちは加盟金の初期費用が大体1,000万円~2,000万円くらいですが、投機した不動産は数百万円かからないくらいですよね。
宮嵜氏――そうなんですが、今、新聞社さんが買われてフランチャイズをあまり募集していないと思います。
トラブルを嫌うので、直営でやるみたいです。
――それでもうまくいっているんですね。M&Aをした後にうまくいくケースも多々あるのですけどね。
宮嵜氏――コロナの影響もあって、うまいタイミングで外食需要から移行したんですね。
対前年比160%くらいと聞きました。
――今も接点はあるのでしょうか。
宮嵜氏――ほぼないですね。
――西日本新聞社さんが新聞のネットワークを活用して現在やられていますが、業界からすると、すごく思い切ったなというイメージだったんです。実際の引き継ぎはどうだったんですか。
宮嵜氏――大変でした。
僕自身がちゃんと勤めたことがなかったところに、長い歴史のある新聞社だったので、会議なども1年くらい参加していたんですが、正直、馴染めなかったですね(笑)。
今までのM&Aの仕事を振り返ってもそうなんですが、買収した会社は1年ほどは今まで通りにやってもらって、そのうえで何かしら関わっていくのが良いのかもしれないと思っています。
買収した会社の企業文化を大切にしないM&Aはほぼ数年後に失敗していますね。
※この続きは「FC成功の秘訣は加盟店との距離感にあり!」でお届けします。