新たな発想と営業力でお寺と地域の「つなぎ役」に(後編)
- 2022/7/7
- インタビュー

大切な人を見送り、その人を思い出す時のよすがとなるお墓を、誰が、どのように守っていくか。石材店としてお墓について考える時、お寺、地域、人を繋げることの必要性を感じていると、有限会社 山崎石材店の13代目山崎哲男氏はいいます。前編では、270年続く石材店を承継し、大胆な社内改革で業績向上を実現した経験などについてお話くださいました。後編では、いま樹木葬が注目されている理由を読み解いてくださるとともに、「石屋」としてお寺や地域と一緒に「人を大切にする」つながり構築に向けた思いを語ってくださいます。
目次
樹木葬は「樹木や草花をモチーフにした埋葬形態」
Z-EN――御社の樹木葬は、樹木と石のバランスがいいように感じます。
山崎哲男氏(以下、山崎氏)――ありがとうございます。樹木葬とは、「樹木や草花をモチーフにした埋葬形態」のことです。
私たちの樹木葬は樹木や草花だけでなく、必ず石も使います。
古くから「かけた情けは水に流せ、受けた恩は石に刻め」という言葉がありますが、将来への思いも含めて石に刻む言葉はその方にとっての自己表現です。
世界にたった一つの場所ができたことの価値は、お客様にとってかけがえのないものとなっているようです。

画像は山崎石材店提供
樹木葬にもさまざまなスタイルがありますが、以前、関西の樹木葬霊園が何の標もない野山の中で散骨する樹木葬と、小さいながら名前のプレートがある樹木葬を売り出しました。
結果として、名前プレートがある樹木葬が圧倒的に売れたということです。
この例からも、自己を表現する場が求められていると感じます。
従来の永代供養墓に代わる新たな埋葬
――樹木葬を受入れているお寺さんは、どのくらいありますか。
山崎氏――1割くらいでしょうか。樹木葬を永代供養のひとつだとする認識が広まって来ていますが、全体の半数ほどのお寺にある永代供養墓は主にお墓を継ぐ人がいなくなった檀家さんが入る小さな納骨堂のような箱です。
数百万円かけて作っても、お寺さんは販売力がないために数件しか入っていないところが多いのはもったいないことですし、檀家さんの減少などで存続の危機に立たされているお寺さんも少なくありません。
供養はお寺さんにしかできないことですが、供養を必要とする相手をお寺さん自身が見つけることは難しい。
そこで、石材というハードと供養というソフトの両面が必要な樹木葬を取り入れていただければ、我々のノウハウや販売・営業力を活用していただけます。
その結果、お寺さんと利用者さんを含めた三方良しの事業を展開することができるということを知っていただきたいです。
石材店もマーケティングが必要な時代
――なるほど。では、石材店さんはどのくらいが樹木葬を扱っていますか。
山崎氏――すごく少ないと思います。お墓を建てることと、霊園をつくることは、まったく違う商売です。
樹木葬を扱うためには、まずこの新しい市場を開拓し販売する力が必要とされます。
これまでは営業せずとも依頼がたくさんあったので、いい仕事をすることだけを考えていれば良かったのですが、今はマーケティングしなければお客様に選ばれないし、接点も持てない時代です。
そこに対応できず、お客様の声が入ってこないので、樹木葬が世の中で求められていることに気がつかないのです。
――これまでのお話から、樹木葬のマーケットが伸びそうな印象があります。
山崎氏――そうなんです。弊社は樹木葬に関心を持つ石材店に対してコンサルティングできますし、遠くの石材店だったら競合にならないのでノウハウも共有できます。
実際、弊社もある石材店さんとパートナーを組んで情報やノウハウをいただくなど、教えていただいてスタートしています。
樹木葬は弊社のフラッグシップ商品ですが、仕組化を進めた今は若い社員2人だけで対応できています。
週1回、進捗について情報共有する以外、私はノータッチです。
そのようなノウハウも、是非たくさんの石材店に伝えて、樹木葬を広めていきたいですね。
▶石材店の営業力を活用することで、樹木葬は「三方良し」の事業になると話す山崎さん。その視線は、さらにお悩みが深いお客様、お寺さんに向かいます。