新たな発想と営業力でお寺と地域の「つなぎ役」に(後編)
- 2022/7/7
- インタビュー
目次
終活と「次男のお客様」が増加
――ますますシステムが進化しているのですね。ところで、何歳くらいの方がお墓を買われますか。
山崎氏――弊社は生前にお墓を買われるお客様が6〜7割で、終活で来られる次男のお客様は多いです。
実家のお墓は長男様が守っていて、お子様はみんな独立したので、ご夫婦で入るお墓を考えているところで弊社の樹木葬を知ったとおいでになった例があります。
弊社のように長く地域で営んでいる店は「何かあったら山崎さんに頼みますね」とおっしゃっていただけるようなお客様との信頼関係作りを大切にするように心がけています。
市場は右肩下がりですが、そんな風に顧客との関係を大切にしている老舗石材店さんには業績が堅調なところが多いです。
相続コンサルタントとして個別相談も
――お墓に関するセミナーも開催されていますが、どういった方が参加されますか。
山崎氏――お墓のセミナーをやっている人は他にいないこともあり、つくば市の大きな会場で開催したところ、100人ほど集まりました。
実際にお客様になってくださったのは1人か2人ですが、悩みをお持ちのお客様も2割くらいいらっしゃることが分かりました。
相続診断士という民間の資格を取得しており、相続コンサルタントとしての活動も行っています。
お寺が繋げる人々の縁
――お寺さんに新しい動きなどはありますか。
山崎氏――40歳まで所属していた日本青年会議所には業種別部会があり、OBも特別会員として活動にゲスト参加できます。
私が入っている石材部会は現役メンバーが30人ほどで、OBまで入れると200人くらい。
新しい樹木葬やビル型納骨堂の見学、海洋散骨の体験などを実施していて、最近のテーマは「お寺さん」です。
近年の寺離れを受けてお寺の役割などについて考えており、先日は先進的な活動をしている千葉県の妙海寺さんを見学してきました。
崖の上にあるお寺の永代供養墓は丸い石のフレームのモニュメントで、向こう側には海が見えます。「海の弔い」と名付けて、手を合わせると海に散骨した人に会いに行けるというコンセプト。
「お寺でランチ」、「寺市」、民泊などのお寺事業のほか、「寺子屋ブッダ」「まちのお寺の学校」といった地域活性事業も行っています。
私と同い年の佐々木教道住職はマインドフルネスの講師でもあり、都会の人達にマインドフルネスなどを根本とした「最高の休み方」を体験してもらう「テンプルステイ」、いわゆるリトリート*も開催しています。
*仕事や生活から離れた非日常的な場所で自分と向き合い、心と身体をリラックスさせるためにゆったりと時間を過ごす新しい旅のスタイル
私も本堂で初めてマインドフルネスを体験しました。
頭の中を使うことが多かった瞑想とは違い、無になるような体験ができました。
実際、無にはなれないのですが、姿勢を整え、呼吸に意識を向けて雑念を抑えることで無に近い状態を感じられ、10分やっただけでとても整った気分になりました。
実は、このように町の人達とお寺がつながる場を提供する「まち寺プラットフォーム」という全国のお寺のコミュニティがあります。
運営する一般社団法人 寺子屋ブッダはたとえば、毎朝7時から20分間、「体すこやか、心おだやか」になる時間を全国のお寺さんが日替わりでモデレートする「オンライン『朝の会』」をzoomで無料提供しています。
お寺が軸となった新たな繋がりが広がり始めています。
人が亡くなる前と後をつなげたい
――そういった感度の高い方が集まるお寺のコミュニティができているのですね。今後、ご自身ではどういったことをやっていきたいですか。
山崎氏――いま弊社で一番強いのは永代供養墓ですが、これからは相続コンサルティングも増えると思っています。
他にもいろいろな引き出しが必要になると思うので、それぞれの分野の専門家と協業していく仕組みも作っていければと思います。
そして、同じ地域に長く住んでいれば長いおつきあいのお寺があると思いますが、今はお寺とご縁がない場所に住み、ご供養にお困りの方も多いと思います。そこで、お寺と一緒にまちづくりにも取り組んでいきたい。
問題意識として、「人の死の前と後をつなげたい」という思いがあります。
ご臨終の前と後は関わる方が全く別で、つながっていないので、亡くなった瞬間にご縁や想いが切れてしまっていると感じています。
そこができるのはお寺しかないと思っているので、お寺さんと一緒に繋げていきたいと考えています。
――ありがとうございました。今後のますますのご活躍を楽しみにしています。
前編「創業270年の老舗石材店は、なぜ変革を成功させ売上向上できたのか?」もご覧ください。