暗号資産価格の乱高下に一喜一憂しない!web3思想への哲学的考察

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ブロックチェーンなどのテクノロジーを駆使してデータ所有権を分散管理するWeb3.0。暗号資産が投資や資産運用などで注目されるなか、その価格にばかり焦点が当てられがちですが、起源となる社会的背景や思想に目を向け理解することで社会への浸透を後押しすると考える向きもあります。

「思想や技術を理解していないから価格の乱高下に一喜一憂する」。こう断言されるのは、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、インドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏。ビットバンクCEOの廣末紀之氏、Blockchain Tech Farm CEOの籠原吉広氏との対談で、Web3の哲学的な側面をさらに深く掘り下げてくださいます。これまでZ-ENにご寄稿いただいている中島氏、廣末氏に加え、籠原氏の豊富な知見を交えた中身の濃い内容です。

暗号資産の成り立ち

中島氏――暗号資産のニュースというと、「価格の暴騰」「価格の暴落」「ビットコイン終了」などといった話題にばかり注目が集まりがちで、業界の草創期から携わっているお2人からすると不満もあるのではと思います。
価格の乱高下に一喜一憂しないためには、ビットコイン誕生の背景や根底にある思想、哲学を理解しておく必要があると思うのですが、いかがでしょうか?

廣末氏――暗号資産の文脈や、その根底にある思想の理解は欠かせないと思います。
ビットコインは、2008年の(サトシ・ナカモト論文とも呼ばれる)サトシペーパーの公開から始まりました。
その翌年2009年には、ビットコインのブロックチェーンにおける最初のブロック(ジェネシスブロック)が生まれ、そこには以下のメッセージが刻まれています。

The Times 03/Jan/2009 Chancellor on brink of second bailout for bank
イギリスの財務大臣が2度目の銀行救済の瀬戸際にいる

サトシ・ナカモトによって書かれたこの文は、2009年1月3日付イギリスのタイムズ紙の記事の見出しとなったものです。
リーマンショック後の中央銀行の在り方を問うているメッセージだと思います。

貨幣発行の中央集権型vs.分散型

「ケインズvs.ハイエク」としてよく語られる論争があります。
イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズは「大きな政府に基づいて政府は市場に介入するべきである」と主張し、一方のオーストリア・ウィーン生まれの経済学者・哲学者フリードリヒ・ハイエクは、『貨幣発行自由化論』で中央銀行が独占している貨幣発行権を解放し、民間が自由に貨幣を発行できるようにするべきであるという理論を展開し、政府の市場介入に強く反対しました。

ハイエクの主張は、既存の金融、あるいは既得権に対するアンチテーゼであり、そんな背景がビットコイン誕生にはあると言えます。
政府が通貨発行権を独占し、そこに依存する限り、通貨の乱発によるインフレ、つまり通貨の減価は免れ得ません。
これを防ぐために、通貨の発行を民間に委ねるべきではないか、というのがハイエクの主張です。

中央集権型のリスク

資本主義が発展する過程の中で金融システムが拡大し、中央集権化が進んだ現代社会では、利用者保護の観点から、大きな銀行は潰せないという面があります。
本来、市場に委ねられ淘汰されるべきものは自然淘汰されるのが資本主義のルールですが、実際はそうなっていません。
矛盾が生じた結果、中央銀行の貨幣発行や血税で救済されるわけです。

例えば、今回のコロナで仕事がこれまでどおりにはできないという状況が生じ、各国政府は救済のために財政政策を行いました。
これにより救済された人もいますが、その一方でインフレを招いたわけです。
インフレにしても増税にしても、その代償は現在および未来の国民が負うことになります。

知るべきは双方の功罪

通貨の減価が続く状況では、ケインズ型の市場介入が良く作用することもあれば、悪く作用することもあります。
また、ハイエク型の貨幣発行は、現実社会において主流になることはありませんでしたが、デジタル技術が進化しビットコインが誕生したことによって技術的裏付けができ、初めて実現できるようになったのです。

しかし、ケインズ型にせよ、ハイエク型にせよ、一長一短が必ずあります。
ケインズ型を中央集権型、ハイエク型を分散型(非中央集権型)としたとき、すべてが分散型であるべきとも思いません。

中島氏――「すべてが分散型であるべき」「すべてがweb3になる」といった分散原理主義者のような人もいますが、良いところと悪いところ、うまく作用することと悪く作用することといった功罪がありますから、冷静に見極めることが重要ですよね。

▶暗号資産の起源と背景にある思想を知ると、暗号資産がとても身近なものに感じられます。次のページでは、web3ブームとも言える現状を分析してくださいます!

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中島 宏明

投稿者プロフィール
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立。一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

廣末 紀之
ビットバンク株式会社代表取締役CEO

投稿者プロフィール
野村証券株式会社を経て、GMOインターネット株式会社常務取締役、ガーラ代表取締役社長、コミューカ代表取締役社長など数多くのIT企業の設立、経営に従事。
2012年ビットコインに出会い、2014年にはビットバンク株式会社を設立、代表取締役CEOに就任。日本暗号資産取引業協会(JVCEA)理事、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)会長を務める。

籠原吉広
株式会社Blockchain Tech Farm CEO

投稿者プロフィール
「ブロックチェーンを活用した新たな価値を持ったビジネスモデルの創造」「ステークホルダー資本主義経済の実現」という理念を掲げる株式会社Blockchain Tech FarmのCEO。
2005年に営業コンサル会社・株式会社ANALOG WORKSを設立。同社を皮切りに保険の販売、広告代理店、飲食店経営などのさまざまな業種において営業や経営の実績を残す。
2014年、ビットコインとの出会いでブロックチェーン技術分野に参入。大きな可能性を感じ、同分野の先進諸外国を訪問し各国で先進的取り組みを経験した後、ブロックチェーン事業確立のため、2017年に株式会社Blockchain Tech Farmを設立。ブロックチェーン2.0と言われる非金融部門で事業を展開している。
直近では、SDGsや気候変動対策などの世界的な流れから、その先にあるべき実現社会であるサーキュラーエコノミー(循環経済)分野でビジネス展開するめたにcarbon eyes株式会社を設立し、同社でも代表を務めている。

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