暗号資産価格の乱高下に一喜一憂しない!web3思想への哲学的考察
- 2022/11/1
- インタビュー
目次
コミュニティ限定の絶対的価値への転換
中島氏――ビットコイン等の価格の乱高下に一喜一憂する人はまだまだ多いと思いますが、価格のことばかりが注目されるこの雰囲気はいつか終わると思いますか?
籠原氏――「1BTC=○○ドル」のように、常に法定通貨とセットで考えられてしまうので、しばらく続くと思います。
コミュニティのなかで使われるトークン(暗号資産)になっていけば、コミュニティ内で価値交換ができれば良いので、わざわざ法定通貨に換算する必要もなくなるのかもしれません。
コミュニティはリアルだったり、メタバースだったりすると思います。
廣末氏――法定通貨が主体だから一喜一憂してしまうのでしょう。
まだまだ暗号資産の社会への浸透が甘いのではないかと感じますね。
ビットコインのボラティリティの高さは徐々に落ち着いていくと思いますが、この雰囲気はしばらく続くでしょう。
価格の乱高下が機能性として着目されているという面もありますから。
しかし、GameFi(ゲームファイ)※・ブロックチェーンゲームなどで暗号資産のユースケースは拡大しており、「価格のことが二の次になる」「価格への関心度が低下していく」という可能性も感じています。
私の場合、そもそも未来のイメージがありますから、一喜一憂することはありません。
※GameとFinanceを掛け合わせた言葉。ゲーム内で獲得した仮想通貨やNFTをゲーム外に持ち出し、法定通貨と交換できる。
中島氏――日本では、「ビットコインだけで生活している」という人はほとんどいないと思いますが、海外ではいますよね。
私の場合、インドネシアで事業をしている都合でインドネシアルピアも少し持っているのですが、現地で使う分には為替のことはあまり意識しません。
「物価が上がったなぁ」とは思いますが。
ビットコインは、地域通貨・コミュニティ通貨であり、世界通貨でもあるわけで、「法定通貨の経済圏とビットコインの経済圏、どちらでも生活している人」が増えていけば、価格の乱高下も気にならなくなるでしょうね。
暗号資産を持つ動機づけが不可欠
廣末氏――ビットコインの背景やルーツ、技術を理解していないことも一喜一憂してしまう原因だと思います。
以前、FLOCブロックチェーン大学校というブロックチェーンやビットコインについて学べる学校を運営していたのですが、多くの人は理解する前に学ぶことをやめてしまいます。
知らない単語が出てくると抵抗感があるのでしょう。
まだまだ啓蒙が必要だと思います。
なにか決定的なユース、例えば「ビットコインで劇的に生活コストが安くなる」とか、「細かな説明が不要でベネフィットがある」など、本質的欲求にアプローチするユースケースが出てくると浸透も進むと思います。
価格上昇もそのひとつの要素ではありますが。
私は、GameFi、ブロックチェーンゲームはわかりやすいユースケースになり得ると感じています。
新しいゲーム体験がもっと生まれていくでしょうし、「楽しいからゲームをプレイする」という極めてシンプルな動機が行動につながっています。
他には、「暗号資産を持っているとモテる」とか、そういうシンプルな動機が暗号資産を持つきっかけになっても良いと思います。
籠原氏――私は最近、「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」に関心があって海外の事例などを調べています。
オランダなどが先行しているのですが、日本以上に非金融領域のブロックチェーン活用、トークン活用が進んでいる印象です。
社名に“ブロックチェーン”とついていると、日本では未だに「どのコインが儲かりますか?」と聞かれてしまうのですが、海外はそうでもない。
海外では、ブロックチェーンという言葉に対する印象・イメージがおそらく日本とは違っていて、その背景には廣末さんが仰るとおり「思想や哲学、技術への理解」が違うのだと思います。
web3にも、日本以上にいろいろなビジネスモデル、ユースケースがあります。
例えば日本で「NFT」というと、多くの企業はNFTマーケットプレイスの開発ばかりです。
web2企業が顧客の囲い込みのためや株価のためにやっているという感じですし、NFTの高額取引ばかりが注目されています。
諸外国では、
・web3の技術でどんなことができるのか?
・社会に求められているソリューションは?
・社会にどんな良いインパクトを与えられるか?
などに意識が向いていて、見えている世界や未来も違うのだと思います。
(この続きは、後編「web3思想への哲学的考察~熱狂に惑わされず今こそ冷静な判断基準を」でお届けします。)
出典:哲学的web3「思想や技術を理解していないから価格の乱高下に一喜一憂する」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。