web3思想への哲学的考察~熱狂に惑わされず今こそ冷静な判断基準を
- 2022/11/17
- インタビュー
目次
web3は分散型構築の過渡期
中島氏――web3は「分散型インターネット(社会)」と仮定義されていますが、web3“時代”と表現されることもあります。
果たして“時代”なのか、という疑問もあるのですが、web2とweb3は共存するものなのでしょうか?
廣末氏――web3は定義がまだ曖昧で、人によって認識が異なると思います。
「NFTやメタバースがweb3である」とする人もいれば、「ビットコインがweb3である」という人もいます。
「ブロックチェーンをベースにした分散型(非中央集権)インターネットサービス」がweb3であると、今は仮定義されているような状況です。
web3という視座で見れば、ビットコインはグローバルペイメントサービスで、イーサリアムはワールドコンピューティングサービス。
ビットコインははじめから分散型ですが、イーサリアムはまだ完全な分散型ではありません。
他のweb3企業はほぼ中央集権型で、DAO(分散型自律組織)を目指している段階です。
「web3」は、今はまだただのマーケティングワードに過ぎないと思います。
籠原氏――今はまだ中途半端な分散型、web3がたくさんあります。
ビットコインは、ある意味でいきなり理想形だった。
その点も含めて衝撃的で、世界中の暗号技術者やイノベーターたちが賛同したのだと思います。
スタート時点やスタートから間もないうちは、だれかのリードが必要ですから致し方ないところもありますが、ゴールが分散型でなければweb3とはいえないでしょうね。
web2を中央集権型と呼ぶのであれば、web2からweb2.5に進むのか、web3に進むのか。
それともweb2のままなのか。
web3に見せておいて永久的に中央集権のままで利益追求するというweb3プロジェクトもたくさん存在していると思っています。
私自身もプロジェクトを進めていて迷うことがありますが、そういうときはビットコインのストラクチャーを見直します。
原点回帰させてくれる存在です。
中央集権型・分散型いずれにも功罪あり
廣末氏――「ケインズとハイエク※1」「中央集権型と分散型」と、2項対立で語られがちですが、組織が小さいうちは分散型だと意思決定が遅いため、中央集権型の方が良いという面もあります。
どちらが絶対的に良い悪いということではなく、一長一短があるわけです。
ですから、必ずしも中央集権型は悪ではありません。
その組織のフェーズや、目的によると思います。
中央集権型の方がコストが安価で安全なこともありますから、すべてがweb3にはならないでしょう。
※1 前編「暗号資産価格の乱高下に一喜一憂しない!web3思想への哲学的考察」を参照ください。
中島氏――web2とweb3は共存、あるいは混在していくのでしょうね。
今の自分や会社、組織にフィットするものやサービスを選べば良いですし、その判断は個々人による。
そのときどきによっては中央集権型が適していることもあれば、分散型が適していることもあるのでしょうし。
以前、「Web3がフラットでフェアな社会を実現する(前編」で使った、「いきなりDAO」と「だんだんDAO」という言葉がわかりやすいと勉強会などで好評なのですが、web3・分散型をマーケティングワードとして謳っているだけのプロジェクトも多いですから、そういう「なんちゃってDAO」には注意が必要ですね。
▶真に分散型といえるweb3への移行となるのか。次のページでは、未来予想について語っていただきます!