web3思想への哲学的考察~熱狂に惑わされず今こそ冷静な判断基準を

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web3領域の現実と未来予想

中島氏――では最後に、暗号資産とともにweb3で括られている「DeFi※2」「NFT」「GameFi・ブロックチェーンゲーム※3」「xx to Earn※4」「メタバース」について、廣末さんと籠原さんが現状感じていることについて教えてください。

※2 従来の金融サービスのように、銀行や証券会社などの中央管理者が存在しない分散型金融のこと。ユーザー同士の取引によって構成される分散的なシステムであり、世界中どこからでも、誰でも利用が可能となる。
※3 ブロックチェーン上でNFTゲームをプレイすることで暗号資産を稼ぐこと
※4 仮想通貨やNFTを獲得するためにできる行為の総称。何か(X)をして(2/to)稼ぐ(E/Earn)ことを意味し、XにはPlayやMoveなどが入る。

廣末氏――DeFiについては、分散型を謳いながら中央集権型のものもあります。
責任が取れない、あるいは責任を取らないDeFiプロジェクトも多く存在します。
また、KYCなしでDeFiを利用し、マネーロンダリングの温床になっている面もあります。

まだまだ未整備で、負の面もたくさんありますが、社会実験としては面白いと考えています。
情報の塊である金融サービスを分散型で提供し、取引を自動執行するのは金融の究極の姿でもあります。
そういった意味では、根を絶ってはいけないと感じています。

NFTアートについては、チューリップバブル※5であると捉えています。
NFTはもっと別の使い方があり、例えば「NOT A HOTEL」がNFTで会員権を販売したように、実体経済とリンクするようなものと相性が良いと思います。

※5 その内在価値を超えて資産価値が評価され大規模なバブル経済を形成すること

GameFi・ブロックチェーンゲームについては、ユースケースとして注目しています。
やはり市場規模が大きいですし、今までになかったエンタメの形、表現ができると思います。
また、市場の大きさからビジネスとの両立も可能だと思います。

xx to Earnについては、Sleep to EarnやEat to Earnはどうかと思いますが、考えれば無限の可能性があります。
例えば、「良い行為に対して価値表現する」ということも可能になります。
社内などでよく「ありがとうに価値がついていたら…」というifの話をするのですが、「Thanks to Earn」というのも実現できたら面白いですよね。
社会を良くするためのxx to Earnなら良いと思いますし、意味も意義もあると思います。

メタバースについては、本来は他のweb3の要素とは文脈が異なると思います。
ゆくゆくはメタバース上で一日の大半を過ごすような時代が来るのかもしれませんが、相当遠いのではないでしょうか。

籠原氏――DeFiについては、今は「やりたい放題」な状況で、DeFiプロジェクトを立ち上げて詐欺に走るような人も多いですから、使うときは注意が必要です。
ただ、徐々にそういったプロジェクトは淘汰されて良い方向に進んでいくのではないでしょうか。

NFTについては、経営者コミュニティのNFT会員証や、飲食店のNFT会員証、エンタメのNFTチケットなどは海外でも事例があります。
本来はただの紙であるはずのビートルズのライブの半券が時代を経て価値が生まれたように、そういったNFT会員証やNFTチケットにも価値が生まれるかもしれません。
実体経済や思い出とリンクするNFTであれば、とても可能性を感じます。

GameFi・ブロックチェーンゲームについては、廣末さんが仰るとおり市場が大きいので有望だと思います。
GameFi・ブロックチェーンゲームの延長にメタバースがあるイメージを持っていて、メタバース≒トークンエコノミーとなり、そのメタバースコミュニティで暗号資産を決済手段として使うことになるのではないでしょうか。
コロナの後、東南アジアの国では外出禁止、ロックダウンが続いていた時期があり、GameFi・ブロックチェーンゲームで稼いで生活を守ったという話を現地の人から聞きます。
稼ぐ手段が多様化し、それが経済の底上げになるのであれば、とても良いことだと思います。

中島氏――今後も数多くのweb3プロジェクト・サービスが生まれると思いますが、web3の熱狂に惑わされることなく、冷静さを忘れずに自分なりの判断基準やルールを持っておきたいですね。
それは、どんな時代でも普遍だと思います。

出典:哲学的web3「ビットコインはチューリップバブルではない」
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

本編の前編となる「暗号資産価格の乱高下に一喜一憂しない!web3思想への哲学的考察」もご覧ください。

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中島 宏明

投稿者プロフィール
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立。一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

廣末 紀之
ビットバンク株式会社代表取締役CEO

投稿者プロフィール
野村証券株式会社を経て、GMOインターネット株式会社常務取締役、ガーラ代表取締役社長、コミューカ代表取締役社長など数多くのIT企業の設立、経営に従事。
2012年ビットコインに出会い、2014年にはビットバンク株式会社を設立、代表取締役CEOに就任。日本暗号資産取引業協会(JVCEA)理事、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)会長を務める。

籠原吉広
株式会社Blockchain Tech Farm CEO

投稿者プロフィール
「ブロックチェーンを活用した新たな価値を持ったビジネスモデルの創造」「ステークホルダー資本主義経済の実現」という理念を掲げる株式会社Blockchain Tech FarmのCEO。
2005年に営業コンサル会社・株式会社ANALOG WORKSを設立。同社を皮切りに保険の販売、広告代理店、飲食店経営などのさまざまな業種において営業や経営の実績を残す。
2014年、ビットコインとの出会いでブロックチェーン技術分野に参入。大きな可能性を感じ、同分野の先進諸外国を訪問し各国で先進的取り組みを経験した後、ブロックチェーン事業確立のため、2017年に株式会社Blockchain Tech Farmを設立。ブロックチェーン2.0と言われる非金融部門で事業を展開している。
直近では、SDGsや気候変動対策などの世界的な流れから、その先にあるべき実現社会であるサーキュラーエコノミー(循環経済)分野でビジネス展開するめたにcarbon eyes株式会社を設立し、同社でも代表を務めている。

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