web3思想への哲学的考察~熱狂に惑わされず今こそ冷静な判断基準を
- 2022/11/17
- インタビュー
FTT(&SOL)暴落とFTX取引所破産・破綻による騒動など、波乱の状況が止まない暗号資産市場。そんな現状を客観的な分析と考察でわかりやすく解説してくださるのが、20代の頃から暗号資産や海外不動産などに投資をし、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイスも行っている中島宏明氏と、ビットバンクの廣末紀之氏、Blockchain Tech Farmの籠原吉広氏です。価格の乱高下に一喜一憂する現状に警鐘を鳴らした前編に続き、後編では、NFTへの急速な盛り上がりや、分散型社会への移行とされるweb3への冷静な評価を3方に語っていただきます。
目次
NFTを単なる投資と捉えるべきではない!
中島氏――前編「暗号資産価格の乱高下に一喜一憂しない!web3思想への哲学的考察」でNFTの話題が出たので、NFTについても触れておきたいと思います。
個人的には多くのNFTアートはただのオーバープライシングだと感じるのですが、どう捉えていらっしゃいますか?
廣末氏――NFTに関しては、事業としても個人としても取り組んでいません。
特にNFTアートに関しては「価値を見出せない」というのが正直なところで、社内でも事業化する話にはなっていません。
ただ、NFTの技術をDID(分散型ID)やKYC(本人確認)などに利用していく可能性は今後十分に考えられると思います。
他人が絵を描いたら売れたから自分も絵を描いて売ってみようとか、日本のゲームやアニメなどのコンテンツは世界的に人気があるから所有したいなどというのは安直な流れだと感じています。
デジタルはまだ法律で所有権が認められていないわけですから、「なにを所有しているのか」もきちんと理解していない人が増えていくのは問題ではないかと思います。
中島氏――芸術作品や骨とう品の鑑定書がNFTに置き換わる可能性はありますが、NFTはデジタル証明書に過ぎないですし、ウォレットを紐づけているだけで個人の特定とはまた別ですものね。
NFTの高額取引は、ビットコインなどの価格の乱高下と同様にニュースでよく取り上げられるわけですが、「高額取引のその後」はあまり取り上げられません。
売れない資産は果たして資産なのか…と疑問です。
廣末氏――投資という観点においては、流動性のない資産は投資に値しないと思います。
また、NFTアートとカテゴライズされている作品群よりも、私はビットコインのストラクチャーの方に芸術性を感じます。
中島氏――本当にNFTアートが好きで…というよりも、NFTかどうかに関わらずその作品が好き、あるいはその作家・芸術家を応援したくて購入する分には否定しないのですが、単にNFTアートを投資として捉えるのは安直だと思います。
価値の捉え方は人それぞれですが、自分なりの基準やルールを持っておかないと、NFTバブル、web3バブルに飲み込まれるだけです。
暗号資産という新たな主観的価値の創出
廣末氏――ビットコインの価値については、私は独自の解釈をしています。
「インターネットに価値はあるか?」と問うたら、その答えは「ある」になるでしょう。
そこに法定通貨の裏付けは関係ないわけです。
ビットコインも、価値尺度、交換・流通手段、価値貯蔵手段という通貨・貨幣の機能を有していますから、法定通貨で裏付ける必要がないのです。
ビットコインは会社ではありませんが、企業として捉えるとしても、バリュエーション(企業価値評価)と同じ考え方をしなくて良い。
ビットコインの純資産を考えても、答えは出ないですから。
まったく新しいものなので、自分の頭で価値を考えれば良いと思います。
「ビットコインは、インターネット上にあるのでインターネットよりは価値が低い。しかしグローバルで使われているペイメントシステムなので、アップル社よりは価値が高い」といったように、既存の価値で算出するのではなく、主観的に判断するしかないと思います。
中島氏――よく「ビットコインの価格はどこまで上がるのか」という質問をされるのですが、「青天井」と答えています。
世界中のビットコイナーたちが取引所や決済システムを開発したり、メディアをつくったりしてビットコインを広めてきたわけで、「ホルダーが価値創造していく」のが暗号資産だと思います。
インターネットの価値も日々上がっているでしょうから、天井はないですね。
▶暗号資産の価値をどう捉えるか。web3の現状を分析して次のページでお届けします!