盆栽×NFTで日本の伝統文化を守り、世界中にファンを増やす!

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NFT商品だからこそ生み出される価値

ーー盆栽×NFTによってどんな問題が解決するとお考えなのでしょう。

鈴木氏――NFTをやりたいと思った一番の理由は、たくさんの方に盆栽をやらない理由を聞いてまわったところ、「盆栽の価値基準はよくわからない」、「価格が不透明すぎて価値担保がなされていない」などの声を多く聞いたからです。
中には「だから盆栽業界は信用できない」という痛烈な意見もありました。

明確な価値基準がなく、購入者は盆栽職人だけが知る相場観での価格で購入し、売りたいと思っても二束三文にしかならない… 高額な盆栽の取引状況がこれではお客さんにはアンフェアですし、実際にマーケットはどんどん閉塞していっています。

その一方で、盆栽にはそれぞれに個性があって、全てが一点もの。
スタイルの違いなどに感じる価値観も人それぞれのため、明確な価値基準を定めろというのは一見不可能にも思えました。

ところが、よくよく考えると盆栽職人が知る盆栽の相場感というのも、オークションや顧客販売のたくさんの取引データの集合知による各個人の経験則に過ぎません。
そこで、盆栽の正確な小売取引のデータを集め誰でも見られる公開情報にすれば、全体との相対比較で価値判断ができる材料を提供できるのではと思ったのです。
それには、NFTがうってつけでした!

盆栽の価値を類推する2パターンを網羅

ーーNFTになると盆栽の価値が明確になるということでしょうか。

鈴木氏――盆栽の価値判断は、①全体との相対比較によるもの、②個別の盆栽の過去の履歴によるものの、2つの側面から類推されます。

判断材料となる要素は実に様々あるのですが、NFTにすることで、それらの要素一つ一つをブロックチェーンに刻み、誰にも改ざんされない信頼性の高い取引履歴のデータベースを作ることできます。

樹種・樹齢・樹形・天然ものor畑づくり・仕上がり具合など、盆栽を選ぶ際の判断属性によってデータを絞り込めば、購入検討している盆栽と属性の似た盆栽の過去取引をいくつも見ることができ、全体との相対比較のなかで、価値を類推できるようになります。

また、「この木は10年前の状態のときにはこの価格で取引されていたけど、今はさらにカッコよくなっているな。値上がりしてはいるけどお値打ちだな!」などと、過去の取引履歴からの相対比較による個々の盆栽の価値判断も可能になります。

今はまだこの仕組みは出来上がったばかりですが、信頼できるデータに基づけば、盆栽をあらゆる側面で見える化できると確信しています。
今後、世界中の人たちを巻き込んでデータを蓄積していき、エビデンスのある盆栽の取引データベースを作っていきます。

購入者のメリット

ーーなるほど!盆栽がNFT商品になることで過去の履歴がすべてブロックチェーンに刻まれると、信頼度は揺るぎないですね!高額な盆栽価値がしっかり見極められれば、購入者も安心だと思います!ほかに購入者のメリットはありますか?

鈴木氏――NFT化することによって、先ほどお話した要素のほかに、盆栽の受賞歴、誰が手入れしてきたか、所有履歴などすべての情報がブロックチェーンに刻まれ、不透明だった盆栽価格に一定の基準を設けられます!誰が所有していたものか、なども価値を上げる要素になってくるのですが、そこも人づての情報ではなく事実が裏付けされることになります。

さらに購入者のメリットとして、「BON voyage」の仕組みを使えば、今まで盆栽業者に頼るしかなかった現状から、ネットを介して誰でも購入でき、二次販売ができるようになることが挙げられます。
CtoCによる自己完結もしやすく、「売りたい時に売りやすい=買いやすい」状況になることで、今まで盆栽愛好家だけしかいなかったマーケットに、共感と面白味で新規参入者が増え、取引量も増える。
流動性の高まりにより、マーケットが活性化し拡大していけば、所有する盆栽の価値上昇で将来利益を得られる可能性も高まります。
盆栽のNFT商品を購入するとキャピタルゲインが得られるかもしれない!
そんな参入者が増えていくことが期待できます。

盆栽園のメリット

ーー購入者にとって、将来価値が上がっていくことは嬉しいですね!盆栽園側のメリットについてもお願いします。

鈴木氏ーー本来、盆栽園は、盆栽を購入してくださったお客様と持続的な関係を築くことで銘木を守る役割を果たしてきました。
お客様が豊かな盆栽ライフを過ごせるよう、お客様のお宅に直接手入れに伺ったり、盆栽教室を開いたりするのを継続してきたのです。
しかし昨今、海外や仲介者経由での販売が増え、購入者と顔を合わせる機会もないまま売って終わりになるケースがほとんどです。
その点、NFTにすることで、盆栽園には大きく以下の4つのメリットがあると考えています。

  1. 日本が誇る銘木を海外に流してしまうことなく継続管理できる
  2. 盆栽園の管理収入が入ることによって経済的に安定する
  3. 業界全体が活性化することにより盆栽の販売先も拡大する
  4. 盆栽園を受け継いで盛り上げてくれる次世代の担い手に安心して承継できる

ーー伝統文化と技術を受け継ぐ盆栽園にとっても、良いことばかりなのですね。

鈴木氏ーーそうなのです。BON voyage」で販売した盆栽は、認定された盆栽園でしっかり管理されます。
つまり、盆栽園にとっては盆栽を手元に残し適切な状況下で価値を損なうことなく管理することができ、さらに管理費という継続的な収益を見込むことができます。

ーー盆栽園は後継者問題も抱えていると、前回のインタビューで伺いましたが、この辺りも解決できそうでしょうか?

鈴木氏ーー盆栽職人にとっても未来は明るいと思います。
長い期間の修行を経て職人になっても業界自体がクローズドな環境でしたが、NFTになることで、盆栽の手入れを誰がどんな風に行ったかについての履歴も記録されるようになります。
職人は自身のポートフォリオが見える化されることにより、盆栽師としての評価も高まるでしょう。

大樹園でも、職人を育てるという見地から、日本人だけでなく海外からの研修生の受け入れも行っています。
海外に渡る盆栽のメンテナンスを現地の盆栽園や技術者ができるようになればとの想いがあり、今後も研究生を受け入れる構えがあります。
これからの若い世代にも盆栽職人は格好よく評価が得られる職業であると認識してもらい、次の担い手としてこの技術を引き受けようとする人が増えてくれたらいいと思います。
その伝承こそが盆栽という日本文化を守り、後世へ繋げていくことになるのですから。

▶業界のさまざまな問題を解決に導き、幅広い盆栽ファンを増やすことにNFTが貢献するのですね。次のページでは、この先に鈴木さんが描くビジョンについて伺います。業界・専門性を超えた方々とのコラボレーション企画も用意されているようです!

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鈴木卓也
盆栽 大樹園 4代目園主

投稿者プロフィール
1932年開園の老舗盆栽園「大樹園」の4代目。
大学で建築工学を学んだ後、地元の建築ディベロッパーでの営業職や、イタリアンレストランでの調理・接客、従業員管理等の職に従事。
2011年、妻の実家の大樹園に婿入り。結婚3年目に後を継ぐことを決意。大樹園の2番弟子である鳥栖昭緑園の久保田政充に師事した後、大樹園に戻り、義父である鈴木亨より盆栽を学ぶ。
国内外の盆栽展での受賞実績多数。盆栽業界への問題提起や企画立案、他業種とのコラボレーションなど、独自の視点で活動範囲を広げ、盆栽業界を引っ張る存在と目される。

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