銀行もNo!町家再生の救世主は「支援者」と「私募債」での資金調達
- 2022/4/28
- 事業投資
目次
私募債を知る
2018年11月中旬。
竣工まであと2か月足らず、つまり1200万円以上の支払が迫る時点で、私には「政策金融公庫」くらいしか選択肢が残されていませんでした。
しかも、半年前に一度断られた後の再チャレンジ。
このまま年越しできるんだろうか?
気が重い日々が続く折、ちょうど友人から「資金調達方法の勉強会がある」と知らされ、少しでも参考になればと思い参加しました。
11月15日、インド出張が目前に迫る夜のことでした。
その勉強会の講師、「つながりバンク」齋藤氏から学んだのが、「私募債」という資金調達方法でした。
個人投資を後押しするのは事業への共感
私募債とは、証券会社を通じて広く一般に募集される公募債とは異なり、少数の投資家が直接引受ける社債のこと。
具体的には「公募はNG」、「呼びかける人数は最大49名まで」といった縛りがあります。
でも、私募債で資金調達した事例をいくつか聞くと、まさに目から鱗。
「これだ!私募債にチャレンジしてみよう」と決心するのに時間はかかりませんでした。
私が取り組むのは、営利事業ではありますが、同時に歴史的・文学的価値ある建物の再生、魅力ある観光地・金沢の景観創造という、社会的意義を持った事業。
だからこそ趣旨に賛同して資金を出してくれる友人が必ず現れるはずと思ったからです。
インド出張から帰った直後の11月20日、早速、「つながりバンク」を訪ね、私募債の具体的打合せに入りました。
事業の目論見書をつくり、社債の利回り(クーポンレート)や特典を決め、募集金額の目標を設定し、呼びかける対象となる49名のリストをつくり…急ピッチで進めました。
時すでに11月下旬、良い年越しにするためにも、この難局を乗り切らないと!との思いで一杯でした。
SNSを活用した情報発信
社債は、一口50万円に設定しました。
目標調達金額は、500万円…つまり、49名に呼びかけて、10口集まれば目標達成という計算です。
49名に呼びかける前に、私はアナウンス方法を考えました。
11月30日、金沢に飛んで、レンタル和服というインパクトある姿で、内装工事中の物件写真を撮ってFacebookで発信したのです。
これが、むちゃくちゃ目立って、249名が「いいね」を押してくれました。
東京へ帰る新幹線のなかで、早速、49名のリストへの呼びかけをはじめました。
メールやFacebookを使い、一人ひとり文面を変えて、心をこめて、呼びかけました。
やりとりに集中するため、呼びかける人数は1日3名程度にしました。
で、ふたを開けてみると…素晴らしい結果でした。
開始2週間で、目標額の500万円調達を達成!
12月末までに、700万円を調達!
なんと、リスト49名への呼びかけが終わる前に、14名の方が、50万円ずつ出資してくれたのです。
これにはサポートしてくださった「つながりバンク」さんもびっくり。
私募債での資金調達が、ここまで順調にいったケースは、後にも先にも皆無だそうです。
女性からの熱い支援が励みに
また、出資者に占める「女性比率」が36%に上ったことも驚かされたことの一つです。
嬉しいことに、女性支援者のひとりが、コラム「私募債に支えられてオープンした古都の民泊」を書いてくれました。
彼女がどのような気持ちで私や事業を支えてくれたのかがよく分かりますね。
本当に、良き友人に恵まれたことに感謝すると同時に、これはまぎれもない「借金」であり、3年後までに元本に利子をつけて返さなければなりません。
恩義に報いるためにも、必ずゲストハウス事業を成功させなくてはと、気分を新たにしました。
▶私募債による資金調達を地方再生に活かすことについて、次のページで鈴木さんが、不動産投資家の視点から語ってくださいます。