第2回目/アドバイザリー報酬の仕組みの理解

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日本M&Aアドバイザー協会の大原達朗会長による解説、スモールM&A、個人M&Aの成功の鍵12のポイントのうち、前回は第1回目「M&Aに関わる人の役割を知る」をお届けしました。その続きとなる第2回目は、「アドバイザリー報酬の仕組みの理解」です。

※本記事は、大原氏がYouTubeで配信する「【1時間で学ぶ 】2020年 スモールM&A現実と成功のための12のポイント」を編集したものです。

アドバイザリー報酬とレーマン方式

~ポイント2~

レーマン方式とは何か?について、下の表で説明します。案件価格「5億円以下の部分」の項目は乗じる割合は5%。例えば、2億円で株式を売買しアドバイザーにコンサルティングをしてもらった場合の報酬は、2億円×5%=1,000万円となるわけです。アドバイザリー報酬において、レーマン方式以外を使用するケースは極めて少ないですが、その際にも、注意点がいくつかあります。

大原氏の資料を元にZ-EN編集部作成

最低報酬に注意

1つ目は、最低報酬を設けている会社が大半だということです。数百万円で売買するような個人のM&A、仮に200万円で会社を売却した場合に、この計算では報酬は200万円×5%=10万円。では実際に200万円の売却のアドバイスを10万円でやるかというと…お分かりですよね?アドバイザー業務の手間とコストを考えると採算が合わない。私はやりませんし、やりたくありません。このようなケースに対応するため、最低報酬を設けています。金額は、50万円だったり100万円だったり、場合によっては2,000万円を設定していることもあります。あらかじめきちんと知ったうえで契約しないと、売却額に見合わないアドバイザーフィーになることがありますので、くれぐれも注意してください。

最低報酬は、アドバイザー側からの皆さんへのメッセージでもあります。最低報酬を示すアドバイザーもしくはアドバイザリー企業が扱っている案件は、通常、提示した最低報酬以上の案件なんですよということです。例えば、最低報酬500万円となると、1億円以上の案件の売買を中心に扱っていますよということ。それ以下の金額の案件をやらないということではないですが、たとえ8千万円で売れても500万円の報酬をいただきますという考え方です。最低報酬からアドバイザー側がどんなお客さんを相手にしているのかが分かりますので、しっかりと見極めていただきたいと思います。

乗じる母数はさまざま

もう1点重要なことは、このパーセンテージを何にかけるのかということが、会社によって全然違うということです。先程の例で、2億円での売買報酬は5%の1,000万円とお話ししましたが、すべてが必ずしもそうではないのです。上表の下の部分にもあるように、移動純資産、移動総資産(株式価格+負債総額)などをベースに報酬金額が計算されることもあります。また、移動総資産であっても、簿価であったり時価であったりと変わってもきますし、売り手と買い手によっても異なります。

2020年現在では、買い手の方が報酬は高く、売り手の方は報酬が少なくなるというケースが多いです。

ここで先ほどの2億円で株式譲渡した一般的なケースで報酬額を考えてみましょう。

売り手側 : 売却額2億円がキャッシュイン
 アドバイザリー報酬5% 1,000万円の支払い

買い手側 : 負債総額が8億円あった場合
移動総資産(ベース)は、売買価格2億円+負債総額8億円=10億円
上記表では5億までが5%、5億~10億円までが4%のため、
5億円×5%=2,500万円+5億円×4%=2,000万円=4,500万円の支払い

このようなケースが非常に多くなっています。FA契約、アドバイザリー契約する時には契約書に明記されていますし、基本的に事前説明がなされるはずですが、その報酬額が妥当かどうかは、皆さん自身が十分に検証すべきだと思います。

納得のいかないものからは撤収を

ここで高すぎるんじゃない?ぼったくりなんじゃない?と感じたなら、辞めればいいんです。確かにいいものであっても、あまりにも金額が高いということであればやめればいい。ただ、そのような価格設定がされているということは、需要があるということです。単に金額だけで高いと判断すると、M&A取扱会社から厄介な客と扱われる可能性があります。高いというならば他の顧客と契約すればいいということになってしまうのです。

問題は、高い報酬を払うようなアドバイザーを、なぜ多くの人が使うのかという点です。私はぼったくりだとは思いませんが、自分だったら使わないだろうと思う時があります。移動総資産に乗じてFAフィーを払わないといけないとすれば、ちょっと高すぎるなという気がするからです。よほど買収金額を減額してくれるようなアドバイス・交渉をしてくれるのであれば話は別なのだけどと、個人的には考えています。

【著書】
この1冊でわかる!M&A実務のプロセスとポイント
サラリーマンが小さな会社の買収に挑んだ8カ月間

次回3回目は「まずは成功要因を知る」をお送りします。

出典:【1時間で学ぶ 】2020年 スモールM&A現実と成功のための12のポイント
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

シリーズ『スモールM&Aを成功させたいあなたに』はこちらからご覧ください。

大原達朗
日本M&Aアドバイザー協会代表理事
アルテパートナーズ㈱代表取締役
アルテ監査法人代表社員
公認会計士

投稿者プロフィール
青山監査法人プライスウオーターハウスに入社し、大手一部上場企業を含む国内街の会計監査、IPO支援コンサルティング、買収監査(デューデリジェンス)等を担当
2004年大原公認会計士事務所を開業独立
インドネシアPT.SAKURA MITRA PERDANAを立ち上げ、実業家として国際的に活躍。会計監査、M&A、IPO、PMI、DDなどファイナンス・アカウンティングの領域で23年の経験を持つ

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