借入が多く債務超過の会社・事業でも買収することは可能か
- 2020/9/18
- M&A
借入過多の会社でも事業を買収できるのか。
事業再生や倒産、M&Aを得意とする堂野弁護士にお話を伺います!
「誰に相談すれば良いか分からない…」
「弁護士の先生に相談した方が良いと思うけど、少しハードルが高いな…」
という方は必見です!
目次
借入過多の会社でも事業を買収できる
会社の金融機関からの借入金が過大で、債務超過であったとしても、事業に収益力があるか、自社で買収すればシナジーで収益が上げられる可能性があれば、その事業には魅力があると言えます。
借入金が多いから買収ができないのか?そんなことはありません。
一定の手順を丁寧に踏んで、適正な対価を支払えば、買収することができます。
そのような会社の事業であれば、競合者も少ないことが多いでしょうから、むしろチャンスではないでしょうか。
金融機関の同意が得られるかどうかが分かれ道
買収するための手順としては、まず金融機関から債務を免除してもらう必要があります。
そのための手法としては、以下の二つが考えられます。
① 「第二会社方式」
新設法人を設立。そこへ事業を承継させ、元の会社を清算する方式
② 「債権譲渡方式」(DPO: Discount Pay Off)
金融機関が第三者であるサービサーに貸付債権を売却した後、サービサーに一定額を弁済して残債務を免除してもらう方式
②の「債権譲渡方式」は金融機関のスタンス次第になり、実際の現場では①の「第二会社方式」が主流になっています。
以下は①を前提にお話しします。
債務免除にあたっては、金融機関の同意が成立するか、しないかでやり方が大きく分かれます。
まずは、金融機関の理解を得て同意を得るように努めるのが常道です。
その場合は国の公的機関である「中小企業再生支援協議会」や裁判所が仲裁する「特定調停」といった、中立公正な第三者が関与する「準則型私的整理手続」を経る必要がありま
しかし、これらの手続きは通常時間がかかりますので(半年から1年間、あるいはそれ以上)、その間、対象会社が約定利息を支払いながら資金繰りを回していける必要があります。
また、金融機関は、譲渡先(スポンサー)に対して相当な譲渡対価を求めますし、競合先がいれば金額が上がってしまうので、金額が折り合わず譲渡先と合意に達しないリスクがあります。
対象会社が資金ショート間近で破綻寸前であったり、金融機関と対価等について合意に至らない場合は、対象会社に破産手続開始の申立てをしてもらう方法があります。
破産申立て前に事業譲渡をして、破産管財人と譲渡対価について協議をして合意をするケースと、破産開始決定後に破産管財人と合意をして事業譲渡を受けるケースがあります。
適正な譲渡対価をきちんと支払うことが大切
事業譲渡を受けるためには、金融機関や破産管財人との間で、譲渡対価について協議をして合意に達する必要があります。
この際に求められる譲渡対価とは、最低でも、会社が破産して対象事業の資産を換価したときに得られる価額(清算価値)となります。
対象事業が安定して黒字を出せるのであれば、営業利益の数年分が事業価値の目安となり、事業価値が清算価値を上回っていれば、事業価値を譲渡対価として支払わなければなりません。
金融機関や破産管財人と誠実に協議もせずに、譲渡対価を支払わないと、破産管財人による「否認権行使訴訟」や債権者より「詐害行為取消訴訟」などを提起されて、金銭請求されるリスクがあるので、十分に注意してください。
譲渡対価の算出に関しては、再生に通じた弁護士と相談し、必要に応じて公認会計士等の専門家の意見書を取得しておくべきでしょう。
誠実な協議が求められる
事業譲渡を受けるにあたっては、金融機関や破産管財人と誠実に交渉し、必要に応じて情報開示をすることが求められます。
その場合、再生に通じた弁護士に対象会社の代理人になってもらうことをお勧めします。
再生に通じた弁護士の助力を得るべきこと
金融機関や破産管財人との協議には、再生に通じた弁護士に相談して、再生会社の代理人を受任してもらうことをお勧めします。
いったん借りた債務の免除の折衝は、通常のビジネスの交渉とは性質が異なるため、法律と交渉の専門家である弁護士に任せるべきでしょう。
特に再生案件に慣れている弁護士が望ましいです。
金融機関の債務免除は一定のハードルがありますが、手順を踏んで交渉し、適正な対価を支払えば、まとめることができます。
借入過多の会社の事業買収も積極的に選択肢として入れてみるのはどうでしょうか。