世界再建を支えるディープテックは日本の眠れる技術で

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ディープテックは、ロボティクスや半導体技術、バイオテクノロジーなどのような、革新的で高度な技術で世界的な課題を解決しようとする取り組みのこと。
インターネットやスマートフォンの普及で私たちの生活が便利になった一方、日本をはじめ世界のいたるところで解決が難しい課題が山積している現状を踏まえ、確かな技術的進歩を前提としたビジネスモデルの構築を目指すものです。

そのひとつとして、眠れる日本の技術を用いたディープテックを提唱するのが、インドネシアのバリ島でデベロッパー事業を行い、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明さん。
中島さんに、ディープテックについて詳しく解説いただきます。

現代的課題を解決するディープテック

画像はamazonより引用

2019年9月に出版された『ディープテック 世界の未来を切り拓く「眠れる技術」』(丸幸弘・尾原和啓共著、日経BP)によると、以下のような側面を持つものをディープテックと呼んでいます。

  • 社会的インパクトが大きく
  • 根本的な研究開発が必要とされ
  • 相当な資本投入が必要で
  • 社会的、かつ地球環境的な課題解決の在り方を変えるもの

最近メディア等で取り上げられることの多いSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)などのキーワードとディープテックは、極めて近しい存在と言えるでしょう。

コンサルタントの佐藤隆之氏は、ディープテックを「科学的な発見や革新的な技術に基づいて、世界に大きな影響を与える問題を解決する取り組みのこと」と定義づけています。
科学や技術の力で世界の大きな課題を解決していくというのは、人類が常に辿ってきた道です。

古くて新しいディープテック

例えば狩猟生活時代では、確実に獲物を狩って食料を確保するために石器を作ったり、近現代では夜も明るく過ごせるように電気や照明器具を発明したり、遠くの人とも話せるように電話ができたり……etc。

「世界」や「社会」、「科学」、「技術」、「大きな課題」などの定義はそれぞれの時代によって異なりますが、「不便だなぁ」とか「もっとこうなれば良いのに」ということを解消・解決し続けて人類は発展してきたわけですから、ディープテックは決して新しいことというわけではないのです。

現代的ディープテック13分野

ディープテックにおける注目の13分野として、以下が挙げられています。

  1. 人工知能、機械学習、ロボット
  2. 3Dプリンター
  3. 自動運転、空飛ぶクルマ
  4. 宇宙飛行、月面探査
  5. クリーン電力、代替エネルギー
  6. ゲノム編集、寿命延長技術
  7. 埋め込み技術、人間拡張(ヒューマン・オーグメンテーション)
  8. IoT、センサー、ウェアラブル
  9. 精密医療(プレシジョン・メディシン)
  10. ニューラルネットワーク
  11. 量子コンピューティング
  12. ナノ・テクノロジー、合成生物学
  13. 没入技術、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)

いずれも今は最先端技術ですが、数十年後には「当たり前の技術」になっているでしょう。
最先端技術という宝、あるいは原石は、大学の研究室にも眠っていますし、中小企業・ベンチャー企業にも眠っています。
それらを発掘し、昇華させることで、日本や世界の再建は実現するのではないでしょうか。
しかし、大学の研究室と中小企業・ベンチャー企業が交流することは、残念ながら極めて稀です。

キャリアライズアップ・藤原塾」に見る
世界再建の道筋

ところが、「学会発表」や「博士号取得」を活用し、大学の研究室や学会と中小企業・ベンチャー企業の懸け橋となるノーブルな教職者・経営者養成機関があります。
それが、東京大学社会学博士の藤原吉恒博士が運営する「キャリアライズアップ・藤原塾」です。

キャリアライズアップ・藤原塾には、多くの中小企業・ベンチャー企業経営者が入塾しています。
藤原塾では、学会活動や博士号取得によってしか得られない人脈を形成することが可能ですので、最終的にそれを本業に活かすことができます。
また、キャリアライズアップ・藤原塾には各学問の博士が集まっていますから、まさに英知の結集。
複数の異なる学問領域を越境し、学際的なアプローチを実現できるでしょう。

そして学際的アプローチに、業界・業種を越えた「業際」、さらに国を越えた「国際」を掛け合わせることで、日本と世界の再建も可能になります。

世界再建を支える日本の眠れる技術

前述の『ディープテック 世界の未来を切り拓く「眠れる技術」』には、以下のような記述があります。

「いかに維持され、拡張していくのか」という”生命の本質”こそが今後の企業経営にも問われる。
そこに立ち返ることに今世紀以降の未来を切り開いていくカギがある。
そして”枯れた”と思われる日本にこそ大きなチャンスが訪れていることも実感できる。

「失われた20年(30年)」「日本は衰退先進国である」など、日本経済や日本の未来に対する悲観論が散見されますが、”枯れた”と思われる日本にこそ大きなチャンスが訪れているようです。
確かに、日本が抱えてきた(あるいは今も抱えている)課題は他の国や地域にも存在する課題ですから、日本が取り組んできた解決策を応用することができるでしょう。
日本が持つ科学や技術の力を世界で活かすことができそうです。

例えば東南アジアやアフリカには、今も無電力地域や、洪水や冠水の問題解決に悩みを抱えている地域があります。
また、障がい者の生活や雇用問題、少子高齢化、食糧生産、フードロスなど、新興国・先進国に関係なく共通の社会課題は存在します。

これらの課題に立ち向かう起業家は登場していますが、課題解決の具体的な技術や手法がなく苦戦している現地ベンチャー企業も多いでしょう。
そこに日本の「眠れる技術」「枯れた技術」が結びつきローカライズされることによって、課題解決へと向かう可能性もあります。

ここにも、「学際×業際×国際」の掛け算が必要とされているわけです。

知恵と技術の循環型ディープテック

「100分の1の才能を4つ掛け合わせることで一億人に一人の人材になれる。そして、5つ掛け合わせれば、世界人類で一人しかない人材になれる」という言葉がありますが、「才能」を「技術」に置き換えても同じことが言えるでしょう。
日本の枯れたと思われる技術も、視点を変えればまだまだ活かす余地はあります。

日本から海外へと視野を広げ、過去の知恵や技術を他の国や地域に向けるだけで、課題解決は可能ですし、ビジネス機会にもなり得ます。
そして海外で得た知恵や技術、資金は日本を立て直す資源となるでしょう。
知恵と技術のエコシステムができあがります。

ディープテックを引き出す思考力を養う

前述の「ディープテックにおける注目の13分野」に挙げられている分野に注力することが、日本が衰退先進国にならないための策と言えるかもしれません。

お金を稼げる順位は、
一番は「頭を使うこと」、
次に「コンピュータにやらせること」。
そして「機械を使うこと」、「体を動かすこと」「持っているものを売ること」と続きます。
頭を使うこと=思考に注力することは、どんな時代もやはり重要です。

日本の中核事業である車産業で言えば、ロボティクス産業へ応用・進化させることが可能でしょう。
車はコモディティですが、ロボティクスは付加価値品です。
「ロボットが活躍する社会」は、数十年後には当たり前になっているでしょう。
スマートフォンが普及したのと一緒ですね。

視点を変えてみれば、悲観的に思えた日本の未来も明るいのです。

出典:日本と世界再建のカギとなる”ディープテック”とは
この記事は著者に一部加筆修正の了承を得た上で掲載しております。

中島宏明さんの過去記事はこちら

中島 宏明

投稿者プロフィール
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立。一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から暗号資産投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。

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